特集 抗ウイルス・清潔・衛生(2)/ボーケン/カケンテストセンター/QTEC/サンワード商会

2024年11月26日 (火曜日)

〈ボーケン/カスタマイズ試験が強み/特定タンパク質低減評価も開始〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)の機能性事業本部は、規格に基づく機能性試験に加え、依頼企業の要望に応える独自開発試験やカスタマイズ試験が強みだ。主観的な機能も数値化することで“見える化”を実現することに取り組む。

 需要が高まっている試験が花粉・ダニ由来の特定タンパク質の低減活性評価試験。2022年に国際標準規格(ISO)として発行した評価方法を活用した。ISOでは対象タンパク質をスギ花粉とダニ虫体・ふん由来のものと規定しているが、ボーケンはヒノキ花粉やイヌ・ネコ被毛、コウジカビとススカビ由来のタンパク質も対象に試験可能だ。

 また、23年にISO化されたプラスチックと非多孔質表面の抗バイオフィルム活性の測定法を使ったバイオフィルム(微生物によるぬめり)試験も実施している。規格に基づく付着抑制評価だけでなく、実際の使用環境(高温・高湿度)での評価にも対応する。対象カビ種の拡大を検討中だ。美容やフェムテック分野にも力を入れており、化粧品汚れに対する防汚性試験は実際の汚れ付着状況に近い状態を再現した新規試験方法を開発した。

 繊維評価技術協議会(繊技協)の会員・指定検査機関として「SEKマーク」の評価方法・基準開発でも大きな役割を果たしているが、加えて抗菌製品技術協議会(SIAA)にも積極的に参加。現在、SIAAが進めている非繊維製品の特定タンパク質の低減活性評価試験方法の開発に参画している。

〈カケンテストセンター/東西の拠点でニーズに対応/それぞれの特性生かす〉

 カケンテストセンターは、日本国内では大阪事業所生物ラボと東京事業所バイオラボの2拠点で清潔・衛生に対するニーズに応えている。特性や強みはそれぞれで異なるが、東西で対応することによって「キャパシティーが大きくなり、納期も短くなった。イレギュラーなモノへの相談にも応じられる」と話す。

 抗ウイルス、抗カビ試験などを行う生物ラボは、抗菌性試験が強みの一つで、介護用品やフェムケアでニーズが増えている尿吸水製品用吸水性樹脂の抗菌性試験(JIS S 0252)を今年10月から開始している。防蚊試験ができるのも特徴で、忌避性とノックダウン性の二つで体制を整えている。

 バイオラボも抗ウイルスや抗菌試験を行っているが、SARS(サーズ)コロナウイルス、夏風邪やプール熱の原因といわれるアデノウイルスなどの“変わった”ウイルスの試験ができる。抗菌性試験ではO157:H7やサルモネラ菌に対応。消毒剤の試験も始めている。

 新型コロナウイルス禍で注目を集めた清潔・衛生試験は、現在では落ち着きを見せるものの、一定の需要は維持している。ホームページでの情報発信などを通じて両拠点の機能を積極的に紹介し、清潔・衛生や抗菌・抗ウイルスの重要性を広める。繊維以外の分野・領域の需要も取り込んでいきたいとしている。

〈QTEC/微細構造の可視化可能に/清潔・衛生の啓発にも〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の西日本事業所神戸試験センターは、微生物関連試験を中心とする幅広い対応を強みとしている。同試験センターが新たに提案しているのが、微生物をはじめとする微細構造の可視化だ。通常では見えない物を見ることができ、清潔・衛生への啓発活動などに応用できる。

 電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)を導入したのは2022年。通常の電子顕微鏡では困難な高解像度の画像が撮影できる。ただ、「SEMがあれば誰でもどこでも撮影ができるというわけではない。対象物の前処理と撮影テクニックが必要」と強調する。

 対象物に水分が含まれていると機械の故障につながるケースがある。このため、微生物やウイルスなどの生物試料を設置する場合は、形を保持したまま水分を抜かなければならない。また、導電性を持たせることも不可欠になるが、同試験センターには専門家が在籍し、対応を可能にした。

 数十ナノメートルの微細構造を写すことができ、長さが10マイクロメートルの大腸菌や幅が100ナノメートルのインフルエンザウイルスはもちろん、30ナノメートル程度の大きさであるノロウイルスにも対応する。

 大阪大学と共同研究を行っており、同大学内の各電子顕微鏡にもアクセスが可能なため、多種多様な電子顕微鏡観察ができる。

〈サンワード商会/リカバリーウエア用など好調/練り込みでも効果発揮〉

 サンワード商会(大阪市中央区)のハイブリッド触媒「ティオティオ プレミアム」は、多機能性を生かして用途を広げている。足元ではマスクなど新型コロナウイルス禍での特需が沈静化した用途や、紳士服など暖冬の影響を受ける用途もあるが、その他の用途でカバーし、販売量を維持している。

 近年は特にリカバリーウエア用が好調で、ティオティオ プレミアムが持つ抗菌や消臭などの機能が評価されている。ユニフォームやフィルター、車輌シートなどの用途も引き続き堅調で、靴の中敷きなども安定している。抗菌や消臭機能が求められるカーテン用も伸びており、抗カビ性を生かしたシャワー用カーテンなどにも広がっている。今後は新たな切り口として、バイオフィルム対策が求められるアイテムでの開発にも取り組む。

 近年は従来の機能に吸水涼感や吸湿発熱、防ダニ、撥水(はっすい)などの機能を加えた新タイプも拡充している。足元では猛暑対策として、吸水涼感タイプなどへの注目が高いという。

 繊維以外では、化粧品で注目されている。化粧品を入れる容器に使う形で、樹脂への練り込みでも機能を発揮するよう開発した。今後は薬品用容器など化粧品以外での展開も視野に入れる。

 ティオティオ プレミアムは、大阪大学産業科学研究所と共同開発した「ハイブリッド触媒」で、抗ウイルス、抗菌、消臭、帯電防止、防汚・花粉対策などの機能を持つ。光がなくても機能を発揮し、安全性も確認済み。