特集 抗ウイルス・清潔・衛生(1)/ニーズ高まり加工充実
2024年11月26日 (火曜日)
新型コロナウイルス禍などを契機に、清潔や衛生に焦点を当てた機能加工や繊維製品への社会的ニーズは一段と高まった。社会のニーズに応えるため、繊維素材メーカーや加工剤メーカーも商品の拡充を進めている。また、性能を客観的に評価するための認証制度も役割が一段と大きくなった。清潔や衛生に関連する最新動向への関心はますます大きくなっていくだろう。
〈繊技協「SEK」マーク/「特定タンパク質低減」も登場〉
清潔や衛生に焦点を当てた機能加工繊維製品が一段と普及した。こうした中、機能の信頼性を担保するマークとして注目が高まっているのが、繊維評価技術協議会(繊技協)が認証する「SEKマーク」。「抗菌防臭」「制菌(一般用途)」「制菌(特定用途)」「光触媒抗菌」「抗かび」「抗ウイルス」「消臭」「防汚」「紫外線遮蔽」(しゃへい)に続いて、新たに花粉やダニ由来の「特定タンパク質低減」のマークを設定した。
花粉・ダニに由来する特定タンパク質の評価方法は、日本からの提案によって2022年に国際標準規格「ISO4333繊維製品上の花粉・ダニ由来タンパク質等の減少度測定方法」が発効している。繊技協ではこれに基づき、特定タンパク質低減加工マークは、繊維上の特定タンパク質の低減率70%以上でマーク認証する。試験対象タンパク質はスギ花粉由来、コナヒョウダニのふん由来と虫体由来の3種類。今後、要望に応じて対象タンパク質の拡大も検討する。
花粉・ダニ由来タンパク質は、アレルギーの原因物質のため低減加工への注目は高い。ただ、医薬品・医療機器以外で「アレルギー」「アレルゲン」「アレル物質」など具体的な疾病を明示もしくは暗示する文言を使用することは医薬品医療機器等法(薬機法)に抵触する。このため、マークの注意書きに「特定タンパク質低減加工は、病気の治療や予防を目的とするものではありません」の文言を入れることで、薬機法などに抵触しないように配慮した。
25年4月から認証申請を受け付ける予定。5月下旬に第1回認証判定委員会を予定している。織・編み物、不織布、糸、ひもなど幅広い繊維製品を対象としており、衣料用途だけでなくフィルターなど資材用途でもマークの活用が期待される。
〈「抗ウイルス」2種類に〉
繊技協は10月1日付でSEKマークの認証基準を改定し、「抗ウイルス加工」マークは「エクセレントエフェクト」と「グッドエフェクト」の2種類に分けて認証する。
SEK抗ウイルス加工マークは従来、評価基準値として抗ウイルス活性値3・0以上で認証していた。一方、試験方法・評価基準のベースとなる国際標準規格(ISO)や日本産業規格(JIS)は、抗ウイルス活性値3・0以上で「十分な効果あり」、同2・0以上で「効果あり」と規定している。このためISOやJIS基準では「効果あり」の性能がある抗ウイルス加工はマークを取得できないという問題があった。
一方、コロナ禍を契機に抗ウイルス加工への関心が急速に高まり、SEKマークは取得できないが、ISOやJISに準拠して機能性や安全性を担保している製品を何らかの形で認証してほしいという要望が寄せられていた。
これを受けて繊技協は認証基準を変更し、抗ウイルス活性値3・0以上を「エクセレントエフェクト」、同2・0以上を「グッドエフェクト」として認証し、マークもそれぞれ別に規定することにした。
マークを2種類に分けたことで性能差を明記するために表示に繊維上の特定ウイルス数を「99・9%減少させる」と「99%減少させる」をそれぞれ記載できるようになった。従来、減少率の明記は優良誤認を招くとして推奨されていなかったが、新マークで表示できるようになったことで消費者に分かりやすく機能を伝えることが期待できる。
〈大和紡績/三つのSEKに対応/「クリアフレッシュVO」発売〉
大和紡績は、繊維製品の機能性を示す「SEKマーク」認証の清潔・衛生向けの加工素材群を充実させている。その中でも昨年、新たに開発した「クリアフレッシュVO」は、安全な機能材を付与しながらも抗ウイルス加工、制菌加工、抗菌防臭加工の三つのSEKマークを取得。抗ウイルス加工の「クリアフレッシュV」を進化させた。
クリアフレッシュVOでは繊維と結合させた機能材に特定のウイルスや細菌が接触。繊維上の特定のウイルスが減少、また細菌の増殖を抑制させる仕組みとなる。洗濯10回後でも効果を発揮。パジャマやふとんといった用途から引き合いが増えている。
ほかにもSEKマークの抗菌防臭加工「ミラクルセット」、防汚加工「ミラクルリリースW」などでSEKマークの認証を取得する。
その中でも特に受注が増えているのがミラクルセット。皮膚常在菌で、汗や汚れを栄養源とする繊維上の黄色ブドウ球菌の増殖を抑制、臭気も抑えることから、ボクサーパンツなどのインナーで安定して採用がある。
天然志向への高まりから、SEKマークではないが、グレープフルーツ種子エキスを使用した抗菌防臭の「シトラスガード」にも関心が高まる。来年にはさらに違う天然成分を使った抗菌防臭加工を打ち出す予定。いずれ天然由来の成分を使った加工でもSEKマークの取得を目指す。
〈インタビュー/繊維評価技術協議会 理事 大阪支所長 勝圓 進 氏/認知度向上に努める〉
――新たなマークを設定しました。
時代によって機能加工にもトレンドがありますから、それに合わせたマーク制度を作ることになります。大阪支所の業務はマーク認証が中心。繊技協は会員企業あってこそですから、会員にメリットを還元できるようにしなければなりません。
――「SEKマーク」の課題は。
マークの認知度を消費者の間でもっと高めなければなりません。広報活動に力を入れており、文部科学省検定済教科書への掲載の働きかけを進めたことで、小学校家庭科や中学校技術家庭科、高等学校家庭科の教科書に掲載されるなど成果も上がっています。
また、運営体制の整備も進めなければなりません。まだまだアナログ的な部分がありますから、効率化を進め、働きやすさを高めながら業務のスピードも上げていきたいと思います。