シンガポールの 注目ブランド ~ASEANの新風~①「KERBSIDE&Co.」ブランドディレクター ファミー・イスマイル 氏
2024年11月26日 (火曜日)
アメカジと日本クラフト融合
シンガポールのファッション市場で、地場ブランドが存在感を示している。一部は海外進出などの動きを見せている(1面参照)。本連載では、各ブランドのトップにこれまでの歩みや今後の計画を聞く。第1回は、アメカジブランド「KERBSIDE&Co.」(カーブサイドアンドコー)のブランドディレクター、ファミー・イスマイル氏。(シンガポール=岩下祐一)
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――ご自身と「カーブサイド」の紹介を。
シンガポールでパキスタン人の父と、インドネシア人の母との間に生まれました。
以前、MTVアジアや、ソニー・ピクチャーズなどでオペレーション業務に携わっていました。その際、(米映画俳優)スティーブ・マックイーンのファッションに興味を持ち、「リーバイス501」やラルフローレンのビンテージライン「RRL」(ダブルアールエル)が好きになりました。米ネット競売大手イーベイのサイトなどを通じ、ビンテージデニムを買い集めました。
趣味が高じて2016年に始めたのが、カーブサイドです。ブランド名の意味は「路肩」。オルタナティブなスタイルや思想の持ち主に、自分のブランドを好きになってほしいと思い、この名前を付けました。
――ブランドのコンセプトは。
アメカジスタイルとジャパン・クラフトの融合です。アメカジと言っても、スマートカジュアルのスタイルです。ジャパン・クラフトとは、生地のことを指しています。使用している生地のほとんどが、カイハラやクラボウなどの日本メーカー製なんです。多くは、現地エージェントから買っています。
――販売チャネルは。
スタート時点は「インスタグラム」を通じた販売で、2年目に自社のネット通販サイトを立ち上げました。ただし、ネット通販サイトの顧客は、当時も現在もほとんどがインスタ経由で問い合わせてきた人たちです。
アイテムは最初、リーバイス501からインスピレーションを受けてデザインした製品のみでした。そのジーンズには、501が実際に使用していた米コーンミルズ社の生地を採用しました。
チノパンツ、ワークパンツと、次第にアイテムを増やしていきました。当時は資金に余裕はなく、製品が売れると、その金で発注するような自転車操業が続きました。
――20年には新型コロナウイルス禍が始まりました。
みんなが家から出なくなり、服の需要も減りました。運営コストを抑え、何とか乗り切りました。
22年に著名な観光地、サルタンモスクのそばで、20平方㍍超の店舗を開業しました。昨年9月には個人投資家2人に資金援助してもらい、そこからほど近い人通りが多い現在の場所に引っ越し、面積も倍増させました。