特集アパレル 高まる春夏アイテムの重要性(1)/三陽商会/ルック/イトキン/小泉アパレル

2024年11月22日 (金曜日)

 ここ数年、残暑や暖冬傾向が続き、春夏シーズンのMD施策に注目が集まっている。短期化する春物商戦の一方、長期化する夏物商戦という構図も一般化した。定番的な中軽衣料でどう差別化をするか、各企業で知恵を絞っている。主要アパレルのデザインや機能性、プライス戦略などを追った。

〈三陽商会「ポール・スチュアート」/ジャケット生産数アップ〉

 三陽商会が展開する婦人服「ポール・スチュアート」は、原点であるトラディショナルな商品群に現代性や機能面をプラスする。ビジネス向けのスーツに加え、より進んだ市場のカジュアル化に対応するセットアップ、ライトアウターを強化。前年の春夏シーズンと比較し、ジャケットの生産数は10%増、ブラウスは20%増となる。

 ブランドのベースとなるメンズライクなジャケットでは、軽量機能素材を採用。モダンなセットアップ企画は、昨春夏も好評だった中空糸を使ったフロータブル素材、ストレッチジャージーを使用した。さらに着心地を重視したシルク混梳毛セットアップを投入。

 同ブランドで婦人服を担当する多田清香課長は「ジャケットはマニッシュな見た目だが、柔らかく軽量な仕上がり。快適な機能性、着心地も重視している」と話す。パターンメークやシルエットも見直した。

 ワコールとの協業でカップインウェアカットソーを販売するほか、立体的なケミカルレース、オリジナルプリントのブラウス類も展開。華やかな柄や素材をインナーに合わせ、「エレガントな春夏シーズンを構成する。レース素材のセットアップもある」とした。

〈ルック「キース」/創設40周年で弾み〉

 ルックが展開する英国調の婦人服ブランド「キース」は、今春夏シーズンで成果が表れた気温対策のウエアを拡充する。キーワードは素材選定とデリバリーの早期化で、それぞれ店頭で特徴を明確にする。

 25春夏は麻素材のワンピース、ジャケットを2月中旬から打ち出すほか、3月には薄手の半袖ブラウスを投入する。天然素材に加え、東レの高通気素材「ドットエア」や蝶理の遮熱素材「シェードシー」を使った商品も投入する。

 キースが2月に麻素材を採用するのは初めて。以前から軽さやドライタッチの質感に支持が集まり「来年はデリバリーも早める。2月以降は軽さや機能性に焦点を当てる」(MD担当者)と説明する。ニットウエアは7~9ゲージが主力だったものの、来春は12ゲージを増やしていく。

 ブランド創設40周年を記念し、アーカイブ柄の復刻受注会を開催(11月30日~12月15日)。人気のあった柄を復刻し、ワンピースやスカートに仕立てる。店頭と公式ウェブサイトで注文を受け付ける予定。記念エンブレムを配したシャツ類も登場し、春夏商戦に弾みをつける。来年3月8日の国際女性デーには、ミモザをモチーフにしたブラウスを投入する。

〈イトキン「シビラ」/個性と品質に軸足〉

 イトキンが展開するスペイン発の婦人服ブランド「シビラ」は、色鮮やかなミックス柄や刺しゅう使いなど個性を強めた商材を投入する。花柄の刺しゅうを施したデニムコートやミディ丈スカートも特徴。刺しゅうはトルコで施し、立体的な仕上がりになった。イタリアのテキスタイルメーカー、ファブリカ社の再生ポリエステル繊維を使用した商材もある。

 25春夏シーズンは欧州のインポート素材や国内縫製で品質を高め、ドレス需要が回復した百貨店販路に攻勢を掛ける。個性と品質を両立させ森雅人シビラ事業部事業部長は「新規顧客を取り込む。店頭でも個性的なドレスが動いている」と話す。同シーズンは100型前後を展開する。

 インポート素材は円安傾向で価格は高くなるが、オリジナル性と品質を重視。スペインを想起させる原色使いのボリュームドレス、芸術性を意識したアートプリントの商材も一部店舗に並べる。

 平均価格は前年の春夏から5~10%アップするが素材でグレードを上げた。価値に見合う価格帯に設定。中心顧客は50代女性だが、直近では30~40代の購入が増えている。ピンクを軸にしたアウターなど春のムードを個性的に表現する。

〈小泉アパレル「エレメントオブシンプルライフ」/デニム調アイテムに商機〉

 小泉アパレル(大阪市中央区)が展開するGMS向けカジュアルブランド「エレメントオブシンプルライフ」は、婦人服のジーニングカジュアルを拡充する。ストレッチ混のデニム調パンツやジャケット、コンフォートなワンピースなどを幅広くそろえる。

 ジーニングカジュアルではロングセラー商材も多く、ゆったりとしたワイドパンツはここ3年ほど売れ筋の上位を維持。GMSの売り場ではジーニング商材で差別化も進み、25春夏は「ジーニング商材の構成比を前期比で10%程度高める」(企画担当者)と説明。デニム調インディゴブルーの差し色としてイエロー、セージで彩りを加える。

 大人女性のトレンドを意識したレース素材のトップスや透け感のある仕様、フラワープリントの商材も盛り込む。得意とするジャージー素材のアウターを随所に入れながら「主力購買層よりも若い40~50代女性を開拓する」とした。

 京王百貨店聖蹟桜ヶ丘店(東京都多摩市)といった都心部近郊エリアでの販売が好調。今後は地方の百貨店にも販路を広げる方針だ。地方百貨店の店舗構成比を全体の2割程度に引き上げる。デベロッパーからの出店要請も増加傾向にある。