新たな舞台へ JFW―JC、 PTJレビュー(4)
2024年11月19日 (火曜日)
海外、他産地との違い明確に
国内各産地のブースが並んだ「JFW―ジャパン・クリエーション(JC)2025」では、産地としての差別化がポイントの一つになった。人件費や原材料費をはじめとする製造コストの上昇、働き手不足といった逆風が吹く中、強みや優位性、個性を示すことで海外や他産地との違いを明確化した。
滋賀県長浜産地の「浜ちりめん」は、水を使って強い撚りをかける八丁撚糸が最大の特徴。1㍍で2千回から5千回撚りをかけ、それによってシャリ感やシボ感を生み出す。南久ちりめんは、この八丁撚糸を麻や綿に応用してデニムを作った。シボの揺らぎに沿った色落ちなどが特徴となる。
浜ちりめんの新たな強みとして産地を挙げて浸透に取り組んでいるのが、シルクを洗えるように加工する「ヤサシルク」(特許申請中)だ。家庭用洗濯機で60回洗っても湿摩擦によるスレが起きず、色落ちも少ない。「長浜産地の生地だけでなく、他産地からの受託加工も受ける」(浜縮緬工業協同組合)としている。
群馬県からは桐生織物協同組合と伊勢崎織物工業組合がブースを構えた。桐生織物協組ではテキスタイル部会の6社が出展したが、「桐生の強みは多様性にある」(織物会社)と強調。ブースには無地やカットジャカード、レース、北関東ではほとんど生産されないゴブラン織りなどが並び、その多様性を示した。
伊勢崎織物工組からは下城が出展した。同社はインテリア用生地が主力だが、今回は伊勢崎銘仙の特徴を生かした服地や和装用生地を打ち出した。評価が得られれば、備蓄販売も検討する。帝人フロンティア、オーダーカーテンのインテリアおおた(前橋市)と連携し、防災用カーテンやブランケットも製造する。
ネクタイ地の生産で強さを示してきた東京都八王子産地は、「独自の持ち味」という新しい強みを身に付けつつあり、立地という利点も生かす。成和ネクタイ研究所は、ネクタイ織機を使って独特の風合いに仕上げた生地を打ち出す。澤井織物工場は多色楊柳などシャトル織機を活用した織物を開発している。
新潟県の栃尾産地は、化合繊と天然繊維の複合を軸としている。織物では綿や麻を主体とする企業や細番手使いを得意とする企業など、持ち味はそれぞれで分かれる。昨年に染色・加工場が破産したことで産地内一貫生産という強みは崩れがが、「これから再構築していく」(栃尾織物工業協同組合)と話した。
東レ合繊クラスターは今回、「クラスター連携による新価値、新素材、新用途開拓」をコンセプトに、高感性素材や環境配慮型のサステイナブル素材を展示した。8デシテックスのリサイクルナイロンを使った超軽量ナイロン、100%バイオマス由来のナイロン510原糸を使った軽量素材などを打ち出した。