別冊ユニフォーム総合(22)/素材を軸に高付加価値化/クラボウ/シキボウ/モリリン/ZERO―TEX

2024年11月15日 (金曜日)

〈クラボウ/織り構造と風合いにこだわり〉

 クラボウは独自性の高い機能素材に、織り構造と風合いにこだわり、通気性や軽量感、清涼感にストレッチ性のある「ジェットエアー」を組み合わせ、多彩な用途に向けて暑熱対策に有効な素材を充実させた。

 モダクリル・綿混を中心とした防炎性・静電気帯電防止性の「ブレバノ・プラス」との組み合わせでは、「難燃で通気性のある生地は意外に開発されていない」こともあり、電気設備といった特殊な用途に提案。電気・電子技術分野の国際規格であるIEC(国際電気標準会議)に対応する「エレアース」との組み合わせでは、半導体業界で設備投資が増えていることを受け需要拡大も捉える。

 カジュアル向けに、売れ筋の合繊素材「TAKUMI Opt」(タクミオプト)にユニフォーム対応の制電機能などを持たせた「テクラボ」として開発。テクラボでもジェットエアーを組み合わせた。ポリエステル100%の軽量感、速乾性、伸縮性はそのままに、徳島工場(徳島県阿南市)の加工技術を駆使しナチュラルな風合いを出した。

 他にもポリエステル繊維の周りに上質なピマコットンを配し、95%の合繊高混率でありながらも、上質な綿タッチでハリコシのある「レイピマ」を開発。後加工難燃「プロバン」に、摩耗・引き裂きに強い加工「タフコットン」、フッ素フリーの撥水(はっすい)加工「アクアマジック」をそれぞれ組み合わせた素材も打ち出した。従来のユニフォームの枠に捉われない、新しい視点での提案に力を入れながら、市場での存在感を発揮する。

〈シキボウ/「アゼック」安定の受注拡大〉

 シキボウのユニフォーム事業は、売上高に占める差別化素材を5割強にまで高めている。主力素材である校倉(あぜくら)造り構造織組織の高通気生地「アゼック」が年間を通じて受注が増加。SDGs(持続可能な開発目標)と組み合わせた素材開発も活発にする。

 アゼックは記録的な猛暑も追い風となり、「安定的に受注が増えている」。この上半期(4~9月)でも大手企業向けに別注のツナギ服の素材に採用された。顧客の要望に沿って、強撚糸やストレッチなどを組み合わせた生地のバリエーションも広がりつつある。

 トレーサビリティーや環境配慮への関心の高まりを受け、フェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)や生分解性ポリエステル「ビオグランデ」、リサイクルポリエステル、バイオポリエステルといったSDGs関連の素材との組み合わせも増加。ポリウレタンを使わない特殊技術のストレッチ加工生地「パワール」とともに、下半期も販売を伸ばす。

 ブランド戦略も強化している。ファッションブランド「アンリアレイジ」とのコラボレーションでTシャツプロジェクトを始動した。Tシャツはコットン∞を使い、バングラデシュでハイゲージに編み立てた。『EMP「」Y』(エンプティ)ブランドとしてBtoBを中心に展開する。無地の白と黒の2色を用意し、企業がロゴをプリントしてノベルティーで活用するといったニーズに対応する。

〈モリリン/サステ×機能素材で差別化〉

 モリリンは再生・循環型といった環境配慮型原料に機能性を付与した差別化素材の浸透度を深める。ユニフォーム向けの糸・生地だけでなく、製品のOEMも手掛ける。

 4種の環境配慮型素材ブランド「エバーサークル」はさらなる認知度の向上を目指す。ユニフォームで大事な要素となる、色の再現性と定着性が高い原着繊維由来素材「エバーナイス」はワーク、サービス、メディカル向けにも適する。

 エバーサークルは原料の出自が多岐にわたる。ユニフォームに環境配慮素材を使用したいという需要に幅広く応えられる。国内1600以上の回収ボックスに集まるペットボトルから高純度ペレットを再生した「ボトリウム」は純度と透明度が高い。資源回収・再生のトムラ・ジャパン(東京都中央区)と協業し、輸送から再生まで環境負荷の少ない方法で精製する。

 繊維製品の回収を手掛けるBPLab(ビーピーラボ、東京都港区)と協業し、循環プラットフォーム「ビオロジックループ」で回収した廃棄対象の衣料品を再生。綿は反毛し、ポリエステルはチップにする。「彩來溜(さいくる)」と名付けた。

 製鉄所で製造時に排出されるガスの炭素原子を含む物質をもとにポリエステル繊維にする「クークル」もそろえる。原着ポリエステル原料「モコフィーロ」とナイロン糸製造工程でチップに添加し、微生物による生分解性を促進する「シクロ」を合わせた「モコフィーロウィズシクロ」も打ち出す。

〈ZERO―TEX/快適性と持続可能性訴求〉

 機能素材製造卸のZERO―TEX(ゼロテックス、東京都目黒区)は、全天候型の耐久撥水(はっすい)素材を主力に拡販を進めるほか、服から服へ繊維製品を再生する「ムダゼロプロジェクト」で再生された糸と合わせた付加価値の向上も図る。

 ストレスゼロの快適性と環境負荷ゼロの持続可能性を目指す。糸や生地、製品、そして製品回収まで多岐にわたるアイテムとサービスの展開を計画する。現在は、ポリエステルと綿の混紡糸で織り上げた織物を中心に染色済みの生地13種を日本と中国で備蓄もする。

 現在の主力は、全天候型耐久撥水のポリエステル綿混生地。合繊特有の光沢感を抑えたマットな質感で、静電気が起きにくい。透湿性や防汚性、紫外線防止機能も備える。平織や綾織のほか、格子状に微細な通気口があり、撥水と通気の相反する機能を併せ持つ「ゼロテックスエア」も展開する。

 フルダルよりも高い次元の防透性を発揮する「ギガダル糸」を使用した超防透素材も打ち出す。撥水機能も付与し、白衣ユニフォームやゴルフウエアなど、さまざまな用途で活躍する。生産難易度が高い短繊維ポリエステル綿混織物を使った。

 素材開発のキーワードに位置付けるのが持続可能性だ。「エコテックスメードイングリーン」の認定を受ける東レマレーシア工場で生産することに加え、「ムダゼロプロジェクト」で再生した糸と合わせた付加価値の向上も図る。今後は、トリコットなどの編み地にも展開商品を拡大する。