別冊ユニフォーム総合(21)/素材を軸に高付加価値化
2024年11月15日 (金曜日)
ユニフォーム業界では、素材を軸にした高付加価値化が加速している。素材・副資材メーカーは、多様化する顧客ニーズに応える機能や性能を備えた生地の開発を進め、ユニフォームメーカーを素材から支援する。インフレ加速という逆風に抗して、新たなストーリー性を持った素材開発に挑む。
〈東レ/ワーキング売れ筋素材が進化〉
東レのユニフォーム地の販売を主力とする機能製品事業部は、猛暑で暑熱対策向けの素材に注目が高まる中、汗染み防止機能付き吸汗速乾「ソリテクト」、麻調高通気「シャミラン」、防透け「スプリンジー」の販売を伸ばしている。
労働安全から熱中症対策への意識も高まる中、使い切り防護服「リブモア」も、粉じん防護性や耐水性を実現しつつ、通気性を併せ持つタイプを用意しており、受注を拡大している。
ニット化の流れも顕著で、特にワーキングで売れ筋の独自の高捲縮(けんしゅく)糸を用いた高ストレッチ生地「ライトフィックス」では、オフィスや学校体育着など新たな用途開拓も推進。ライトフィックスを進化させ、ボリューム感や機能性を追加した「ライトフィックスD」を新たに開発した。ユニフォーム用途を中心に2027年度(28年3月期)、100万メートルの販売を目指す。
ライトフィックスDでは高捲縮糸と他の差別化糸との融合、重ね織りなど織り組織の工夫を組み合わることで凹凸のある多層構造を実現。ストレッチ性に加えてボリューム感、春夏素材で要望の強い肌離れ性の良さや吸汗速乾性、高通気性などさまざまな機能を付与することができる。
テキスタイル部門内での連携も進んでおり、婦人服やスポーツで従来採用されていた素材をユニフォーム用途に採用が増加。若い世代を中心に事業部間で連携してチームを立ち上げ、プロジェクトを進める動きも活発になってきた。それらの成果を出しながら市場開拓にまい進する。
〈東洋紡せんい/“数字の裏付け”でニット拡販〉
東洋紡せんいは、ニットのストレッチ性はそのままに洗濯耐久性といった織物に近い物性、風合いを実現した「コンフォネックス」の販売量が成約ベースで倍増になるなど、新素材を軸に拡販を進めている。
コンフォネックスは編み組織など「バリエーションをかなり増やしている」こともあり、ワーキング向けに販売を拡大。これまで編み地ではスナップやピリングなど弱点があったが、それらの弱点を克服した。試験データ的にも「数字の裏付けをもって提案できている」こともけん引した。
サービス向けではポロシャツ用途として高機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」の販売が拡大。高密度とストレッチ性を実現した編み地「スクラムテック」は、一部のワークウエアメーカーが採用し、今後の販売拡大を期待する。
売上高に占める編み地の割合は前期、10%前後となっていたが、今期(2025年3月期)は15%を超える見通し。一方でメディカルや介護ウエアの用途では、編み地に対し工業洗濯を不安視する声から「オールフレックス」の織物を選ぶケースが増えているという。
自社グループ内の縫製工場で発生する端材を協力工場でマテリアルリサイクルする「T2T」の活用も進む。大型設備を導入し、生産能力も高めている。マテリアルリサイクルでは再生の際の色が残ってしまうが、脱色によって「完全に白にできる」強みもある。
スクールやスポーツの事業部との連携も強めながら市場深耕に取り組む。
〈帝人フロンティア/ストレッチや暑熱対策で〉
帝人フロンティアはストレッチや暑熱対策、ウール代替、ニット化といったトレンドをうまく捉え、高い価格帯であっても市場へ価値を訴求できる機能素材を軸に攻勢を掛ける。
その中でも上半期(4~9月)は、原糸、糸加工、織組織構造の工夫で優れたストレッチ性のポリエステル長繊維織物「フレキシング」の販売を伸ばした。ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」や、高捲縮(けんしゅく)糸使いなど生地のバリエーションを拡大。植物由来原料を一部使用した「プラントペット」と組み合わせた素材提案も進む。
ウール代替として梳毛調ポリエステル生地「トリクシオン」も市場へ浸透。ブラックフォーマル市場で存在感を高める素材群でニーズを捉える。
夏の期間が長くなっていることを受け、特殊仮撚り糸と特殊織・編み構造を組み合わせ、防透性と高い紫外線遮蔽(しゃへい)率、遮熱性などの特徴を持つ「ウェーブロンUP」の受注も増加。ほかにも高通気とストレッチ性を両立させた「エアーインプレッション」や、汗処理機能に優れた「トリプルドライカラット」、汗染みを目立たなくする「デュアルファイン」といった素材で拡販に臨む。
ユニフォーム用途では織物の販売が多かったが、ウェーブロンUPをはじめとした素材ではニット化も推進。販売比率でニットは約5%と少ないが、今後は意識的に増やし、10%程度にまで高める。
〈インビスタジャパン/パフォーマンス性の高さ強みに〉
インビスタジャパンは、ユニフォーム用途へ高強力ナイロン「コーデュラ」の販売を伸ばしている。ここ数年でワークウエアのカジュアル化が進み、デニムブームの到来でコーデュラの採用が増加。そのブームはやや収まりつつあるが、定番商品に採用され定着してきた部分もあり、販売量で見ると前年比約10%伸びた。
ショップ向け商品の採用がまだまだ多いものの、企業納入向けにも少しずつ実績ができ始めている。コーデュラ使いウエアは「3年以内に破れることがない」というユーザーからの評価もあり、丈夫で長持ちするパフォーマンス性の高さを強みに販路を広げる。
さらに採用の機会を捉えるため、日本の紡績メーカーとも連携した素材開発を検討。原料のわたから使うことで既存素材の強度を高めたり、ポリエステル・綿混とは違った風合いを出せる。
ワーカーが使う周辺アイテムにもコーデュラの採用が広がっており、職人に人気の「ニックス」ブランドでは腰袋や工具ホルダー、シューズなどで採用。アソビナ(東京都千代田区)が展開する、エシカルウエアブランド「SLOTH」(スロス)ではTシャツに採用された。「丈夫なTシャツとして好評」のようだ。
昨年から販売に乗り出し、環境負荷低減の面から訴求する原着糸「コーデュラ トゥルーロック ファブリック」は、欧州でユニフォーム用途への採用実績があるが、日本ではまだこれから。レインフォースメント(補強材)などへ浸透を図る。