別冊ユニフォーム総合(2)
2024年11月15日 (金曜日)
〈春夏商戦/猛暑で需要活性化〉
ユニフォームメーカーの24春夏商戦は、暑熱対策ウエアを取り扱うメーカーを中心に大きく伸長した。「増収」は30%、10%を超える「大幅増」は23・3%で半数近いメーカーが業績を伸ばした。前年並みも36・7%で、減収はわずか10%だった(グラフ5)。
好調の要因は、需要を活性化する猛暑。気象庁によると、2024年の夏の平均気温は、1946年の統計開始以降で西日本と沖縄・奄美では1位、東日本では1位タイの高温となった。全国に153ある気象台などのうち80地点で、平均気温が夏として歴代1位の高温となった。
ワーキングの業績伸長について、「空調風神服など夏物が好調だったため」(サンエス)と、電動ファン(EF)付きウエアを要因に数えるメーカーが少なくない。加えて、「商品全体の値上げによる平均単価増」(シンメン)と、値上げが業績を押し上げた。
サービスは、「新型コロナウイルス禍の収束による飲食店の回復とインバウンド需要の増加、内食や中食の需要増」(住商モンブラン)の影響を受けて、飲食を中心に好調なメーカーも見られた。ドライバーユニフォームについても「値上げしたため」(つちや産業)伸長した。
メディカルは、「大型病院の獲得が順調に推移したため」(明石スクールユニフォームカンパニー)増収とするメーカーがある一方で、市況は低迷している。「コロナ禍の支援金の終了と患者数の減少に加え、インフレ加速による支出増で市況が悪化。更新需要で期間の“ズレ”を起こした」メーカーもあり、全体的に低調に推移した。オフィスは、気温上昇による特需はなかった。
〈秋冬商戦/立ち上がり鈍く〉
好調な春夏商戦と打って変わって、秋冬商戦は鈍い立ち上がり。9月は残暑が厳しく秋冬商品は本格的には動かない。夏に売れた暑熱対策ウエアは9月にはほぼ完売して在庫がなく、売り逃した。「9月に納品を予定していた商品が10月にずれ込んだ」こともあったと言う。
ただし、24秋冬商戦の見通しを問うアンケートは、「増収」が44・8%、10%を越える「大幅増」が6・9%と秋冬に対する期待は大きい。減収を見込むメーカーはなく、前年並みは48・3%だった(グラフ6)。
「新商品のエアライトワークニットや昨年発売した防風パンツなどが販売数を伸ばしている」(CUC)、「新商品の長袖ブルゾンが好調」(サンエス)、「バイオエコ素材を使用したワークウエア、防水防寒ウエアが売れ筋」(ジーベック)など、秋冬商戦が本格化すれば、市場が活性化しそうだ。
《年間販売の平準化へ》
あるユニフォームメーカー社長は「夏に稼いだ貯金を秋冬で食いつぶすのではないか」と警戒心を示す。ここ数年間は暖冬が続き、その影響もあってこれまで稼ぎ頭だった防寒衣料が振るわないせいだ。
夏の売り上げの偏りを是正し、年間での売り上げを平準化するため、商品構成の改革を急ぐ。「25年は、残暑を想定した企画にかじを取る」(クロダルマ)、「EFウエアの端境期となる3、4月と9~11月で売れる商品を作る」(シンメン)など既に25年に向けた企画は始まっている。
寅壱(岡山県倉敷市)のフードパーカ「ワークフーディ」が、10~4月の長い期間販売できる点が支持されて売れ筋になるなど、秋冬商材には変化の兆しが表れている。特に、気候変動の影響を受けやすいショップでの販売では、ファッション衣料で導入が進む残暑MDの導入も求められそうだ。
《生地原産国は変化するか》
今回から新たに、生地の原産国を問う設問を設けた。「国内メーカーの国内生地」「国内メーカーの海外生地」「海外メーカーの生地」について割合を尋ね、各社で最も比率の高い原産国を数えた(グラフ7)。
「国内メーカーの国内生地」が最も多かったメーカーの割合は64・3%、「海外メーカーの生地」は35・7%だった。「国内メーカーの海外生地」も使われているが、他の原産国より少なかった。
ユニフォームは、主に企業納入向けで追加納品時の色や品質の整合性を問われるため、技術の高い国内メーカーの国内生地を使ってきた経緯がある。しかし、原燃料高騰などの影響を受けて海外生地への移行が少なからず進むと推測される。
〈在庫回転率は2・47〉
本紙がアンケートを基に平均の在庫(棚卸資産)回転率を割り出したところ2・47となった。前年の平均は2・71でやや悪化した。
在庫回転率とは在庫が1年にどれくらいの早さで販売されたかを知る指標。一般的に数値が高いほど商品の動きが活発で利益率も高いとされる。今回のアンケートでは今年(直近まで)と前期の数値を記入してもらい、個別では公表しないことを前提に12社から有効回答があった。
分野によって回転率が異なり、別注の割合が大きい企業や、近年売り上げを伸ばしている企業ほど回転率が高い。業界の適正は3~4といわれ、その範囲内には少し届かなかった。回転率が最も高い企業は10で、低い企業は1だった。