特集 北陸ヤーンフェア2024(9)/出展者の見どころ/弘伸/泉工業/北洞/山甚撚糸

2024年11月07日 (木曜日)

〈糸加工で高付加価値化/ベンベルグ糸など訴求/弘伸〉

 繊維商社の弘伸(京都府長岡京市)は今回が初出展となる。ブースでは、キュプラ繊維「ベンベルグ」などセルロース系繊維を中心に幅広い素材を扱い、糸加工で付加価値を高めた商品群を展開していることを訴求する。

 同社はベンベルグを柱に、宣賓絲麗雅集団(中国)のレーヨン「グレース」やマデイラ(ドイツ)のリヨセル繊維・再生ポリエステルなど幅広い素材を扱う。2020年には京都府南丹市に撚糸・糸加工の新工場を建設するなど国内外で生産体制の整備を進めている。その生産背景を生かし、今回展では1、2次加工で付加価値を高めた開発糸を中心に訴求する。

 ベンベルグの先染め糸は160色と絣(かすり)10色をそろえて見本帳展開している。刺しゅう糸を中心に展開するが、今後は横編み用などにも用途を広げていく。

 グレースレーヨンは、サステイナブル素材としても訴求する。森林を守りながら生産していることを証明するFSC認証や安全性の「エコテックス スタンダード100」を取得するほか、生分解性の高さなども訴求する。レーヨン長繊維を中心にするが、短繊維にも対応する。マデイラの糸はリヨセルに加えてリサイクルポリエステルもそろえる。

 特徴ある素材を使い、1次加工や2次加工で付加価値を高めた糸を幅広くそろえる。20年に建設した新工場は、将来の事業継続を見据えて手を打ったもの。撚糸機6台のほか、自動ワインダーなどを導入しているが、足元も堅調な稼働を続ける。

〈放射冷却機能糸を披露/再帰反射ラメ糸で意匠性も/泉工業〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は、放射冷却現象(熱を光エネルギーとして放出することで入熱量より出熱量が多くなる現象)を応用した冷却機能糸「スペクル」を披露する。

 スペクルは、大阪ガス発ベンチャー企業のSPACECOOL(東京都港区)が開発した放射冷却素材「スペースクール」を原料とした糸。放射冷却機能を持つ特殊工学フィルムをスリットして糸にすることに成功した。他素材との撚糸も可能だ。

 既にフィルムや膜材では実用化が進められているが、フィルムや膜材には通気性がないため、衣料品などへの採用が難しかった。これに対して泉工業が糸化に成功したことで織・編み物にして放射冷却機能と通気性を両立することが期待できる。

 現在、試織した生地による冷却性能確認を進めており、今回の「北陸ヤーン・フェア」で結果を披露する予定。

 再帰反射ストレッチ糸にパール調ラメを撚糸したものも紹介する。一般的に再帰反射材は光が反射していない状態では無味乾燥なグレーのため意匠性に乏しいが、同社が開発した糸は、再帰反射材にパール調ラメが光る。このため光が反射していない状態でも意匠性が高い。再帰反射機能と意匠性を併せ持つ。

 そのほか、既存商品ラインアップも多彩に紹介する。ラメ糸に関する課題に応える“相談できるラメ糸メーカー”を改めて打ち出す。

〈光モノをメインに訴求/ラメ糸で生地を装飾/北洞〉

 糸商の北洞(京都市)は2年ぶりの出展となる。今回展は「希望の光」をテーマにし、光モノをメインに展示する。

 銅などの金属糸、ラメ糸、バサルト繊維、レーヨンの扁平(へんぺい)糸などさまざまな糸を展示する。銅線糸はさらなる細繊度化を実現し、薄地の衣料にも使うことができる。

 天然の玄武岩を溶かして紡糸するバサルト糸は光沢ある外観のほか、耐熱性や耐薬品性などの特徴を持つ。天然の玄武岩を使うサステイナビリティーの面も訴求。糸は440~1000デシテックスをそろえ、現在は建築用途などで提案を進める。

 ラメ糸は、新たな形で室内装飾などの用途に提案する。ラメ糸を生地の装飾として使うもので、ラメ糸を圧着で生地に付けて意匠性を持たせる。装飾した生地をアクリル樹脂で固めることも可能。織物、ニットとも加工でき、同社が扱うさまざまなラメ糸を付けることができる。加工は京都で行っており、ブースでは西陣織を京都のラメ糸で装飾したサンプルを展示する。ラメ糸だけでなく、金属糸や意匠糸なども付けることができる。販売は糸売り、加工受託、生地売りなどさまざまな形に対応する。

 ユニチカトレーディング(UTC)が生産する複層構造糸「パルパー」のカポック繊維・綿混糸も出品する。糸の芯部がカポック・綿混、鞘が綿の紡績糸で、混率は綿70%、カポック30%。綿の5分の1という軽量性などが特徴で、サステ面も訴求する。北洞はUTCとはバッティングしない分野に展開していく考えで、ブースではジャケットやスカートなど衣料品も制作して展示する予定。

〈生地でもアピール/異種ナイロンを複合化/山甚撚糸〉

 山甚撚糸(福井市)は今回展で「強みを明確に打ち出す」として、エア加工による混繊技術を糸だけでなく、生地でもアピールし、糸加工によってさまざまなことが可能になる点を、目で見て分かるように提案する。

 同社はエア加工機、ダブルツイスター、複合撚糸機、ダイレクトワーパー、整経機などを保有する福井産地の糸加工メーカーで、同展には継続出展している。

 今回展では異種の再生ナイロン長繊維のエア加工による混繊糸を新たに打ち出す。異なる特性を持つ再生ナイロン長繊維を複合化することで、コットンライクなどナイロンらしくない質感を表現できるという。カジュアルスポーツウエアなど汎用分野に向けて糸、生地で提案する。

 化合繊糸を、さまざまな糸加工を駆使することによって、質感を変え、機能性を付与することができるのが同社の強み。

 昨今は生地設計ができる従業員を採用し、糸加工をベースにしながら織布、染色加工などの川中企業と連携して一部生地も手掛けるなど、新たな商流開拓にも力を入れている。

 こうした技術力と取り組みを生かしながら、同展を含めた展示会など外部への発信を強化している。

 設備投資も継続的に行っており、今年は将来を見据えてダブルツイスターを8台増強した。