特集 北陸ヤーンフェア2024（８）／出展者の見どころ／シモムラ／タロダ／サンコロナ小田／ジャテック

2024年11月07日 （木曜日）

〈カバーリング糸の開発強化／生地の自社ブランドも／シモムラ〉

　シモムラ（石川県小松市）は今回展で、むつ工場（青森県むつ市）の開発品やフクイセイシ（福井県大野市）のピン仮撚り糸、糸染めの園田産業（石川県能美市）で染めたC0撥水（はっすい）糸などを紹介する。近年は製織のソフィーナ（新潟県長岡市）などを含めたグループ連携による開発も強化しており、今回展では生地の自社ブランド「ギネスト」（仮称）も出品する。

　むつ工場（青森県むつ市）では短繊維使いのカバーリング糸の開発を強化しており、今回展ではコアスパンヤーンや太繊度のスパンデックス使いなどの開発品を紹介する。むつ工場の主力商品の一つである高伸縮ストレッチ糸はデニム用などで展開してきたが、今後は糸売りだけでなく生地での展開にも力を入れる。ストレッチ生地の自社ブランド「ギネスト」として展開する考えで、その品ぞろえを紹介する。

　フクイセイシで生産するピン仮撚り糸は引き続き堅調に推移しており、ブースではそのラインアップを紹介する。足元では輸出も伸びており、来年夏にはＴＭＴマシナリー製の新台を入れて生産能力を増強する予定。

　先染め糸の見本帳展開は、再生ポリエステル「エコペット」使いで３２２色展開を実現するなど昨年から拡充しており、今回展でも訴求する。

　北陸ヤーンフェアに先立って開催された台湾展「ＴＩＴＡＳ」にも出展した。同展では日本ならではのピン仮撚り糸や短繊維使いのカバーリング糸、先染め糸などを紹介した。

〈サステベースに差別化／新たな切り口の見本帳へ／タロダ〉

　タロダ（石川県内灘町）は、リサイクルポリエステル糸などサステイナビリティーをベースに幅広くそろえる色糸見本帳とともに、加工で付加価値を高めた糸の紹介に力を入れる。

　サステ糸の見本帳ではマテリアルリサイクルの「エコッタ」、リサイクルをベースにストレッチ性を付与した「エコッタα」などをそろえるほか、伊藤忠商事の「レニュー」やＶ＆Ａジャパンの生分解性ポリエステル「クラフトエボリーテ」との協業品も展開する。

　近年は割繊糸や天然繊維調のタスラン糸など、機能性や感性を訴求する糸にも注力している。割繊糸の見本帳は適度なグリップ性が付与できるなどの機能が評価されて堅調に推移しており、新たな切り口の見本帳開発にも取り組む。

　今後に向けてはサステをベースに、新たな価値を加えた糸開発に注力する考えで、今回展では加工で差別化した糸の提案などに力を入れる。

　市場のニーズに沿って開発した差別化糸を軸にした小ロット・多品種展開を強化していく方針の中、ワインダーを中心に生産体制の整備にも注力する。

　近年は特に綛（かせ）染め用の巻き取りができるスペースが減っていることに対応し、今年は年内に自動ワインダーを1台増設する予定。

〈紙容器をアップサイクル／ビタミンＥ練り込み糸も／サンコロナ小田〉

　サンコロナ小田（大阪市中央区）は2回目となる今回展で、あえて糸に毛羽を施した独自加工糸「ピーチファズ」、霜降り調の「フロスティーナ」、ウーリー分繊糸「シルストロン」といった自販用の糸ブランドを打ち出すほか、アップサイクルした紙糸など協業商品も用意する。

　前回展で目玉商品に位置付けていたピーチファズは、織物にした際の風合いが柔らかくコットンライクになる。遮熱性、保温性、ＵＶカット、防透性に優れ、仮撚加工を施すことで遮熱、保温性はさらに物性値が良化し、新たに花粉キャッチ性能（塵〈じん〉捕集率）も得られた。同社によると、量産機で糸の段階で起毛を施す技術は業界初。

　フロスティーナは霜降り調の糸ブランドだが、今回はストレッチ性の付与に成功した新たな商品を打ち出す。業界初の独自の仮撚り技術で成功にこぎ着けたと言う。

　日本紙通商の使用済み紙容器をアップサイクルした紙糸を使い、クラボウと3社で「ｃｈｏｉｔｏ」（チョイト）ブランドとして開発中の商品も展示する。古紙入り紙糸をサンコロナ小田が再生ポリエステルでカバリングし、強度と扱いやすさを付与した。

　保湿など美肌効果が期待できるビタミンＥ練り込みセルロース繊維「セルソリューション」も展示する。

〈糸の幅広い品ぞろえ訴求／介護など製品での提案も／ジャテック〉

　ジャテック（金沢市）は、原糸販売部門が扱う幅広い糸の品ぞろえを紹介するほか、生分解性合繊「ＣｉＣＬＯ」（シクロ）や介護用商品などを紹介する。

　原糸販売では、従来の主力サプライヤーに加えて、中国やＡＳＥＡＮ企業との協業も強化している。今回展では扱う糸の豊富な品ぞろえを改めて紹介する考えで、「多彩な供給元により適切な原糸選択が可能となる。今後も開発から量産まで国内生地生産顧客をサポートしていく」方針を示す。

　ブースでは、国内外のサプライヤーを紹介する。日本では帝人フロンティア（インテリア用途）や山越、台湾では力麗や新光合繊、集盛などの老舗ＤＴＹメーカー品を紹介する。韓国では小ロットに対応するデグァンのタスラン加工糸、ベトナムでは華隆ベトナムや日本総代理店を務めるＶＮ　ＰＯＬＹなどの商品を扱う。中国品では小ロットで対応するカチオン糸や再生ポリエステル糸を展示するほか、インドネシアやインド、タイ、マレーシアなどの糸も紹介する。

　今回展では製品提案にも力を入れ、大照（愛知県一宮市）と共同特許を取得している介護・介助商品「ぞうさんしーと」を提案する。加えて介護向け漏水シートや高齢者向け漏水防止パンツなどを展示する予定。

　シクロは、マイクロファイバー汚染対策として提案を進めてきたが、着実に成約が進んでいる。今後も展示会などでの訴求を強め、さらなる拡大を狙う。