特集 北陸ヤーンフェア2024(6)/出展者の見どころ/瀧定名古屋/豊田通商/増井/GSIクレオス/UTC

2024年11月07日 (木曜日)

〈独自の近赤外線吸収繊維使用/4種の異なる機能素材/瀧定名古屋〉

 初出展の瀧定名古屋は近赤外線吸収繊維「ナイロール」使いの4種の異なる機能素材を訴求する。

 ナイロールは住友金属鉱山と協業して開発した素材。再生ポリエステル原料と粉砕したレアメタル鉱石を練り込みペレットを生成後、紡績して糸に仕上げる。糸だけでなく、生地や製品の展開も可能だ。特徴として①色の展開が可能②サステイナブル③練り込みで組織が定着し、効果が持続④通常素材に比べて速乾性が高い――を兼ね備える。

 これらの機能性を生かしてアパレル、スポーツやインナー類、服飾雑貨向けの商材に提案する。機能は試験で実証済みで、データもホームページで公開している。

 ナイロール使いの4種の素材は機能が多岐にわたっている。太陽光を吸収して発熱し、通常品より10℃高い温度を保ち蓄熱保温効果を持つ「ウォームダール」はアパレル向けを主に採用実績を持つ。他にも遮熱性を持つ「サンベールショット」、赤外線の統制で防透け性を持つ「エヌシャット」もそろう。近赤外線と紫外線を同時に遮断し、肌の老化を防ぐ「トゥルーボーテ」も訴求を強める。

〈環境配慮型を中心に/各種再生繊維など提案/豊田通商〉

 豊田通商は初出展となる今回展で、繊維・ファッション分野のサーキュラーエコノミー推進プロジェクト「パッチワークス」に基づき原料から製品まで、同社が取り扱う商品を幅広く展示するとともに、プロジェクトに賛同する協業先の開拓を狙う。

 同プロジェクトではさまざまな環境配慮型繊維を開発販売するが、その一つが、廃漁網のケミカルリサイクルによる再生ナイロン6長繊維「ネットプラス」。原糸、チップで販売する。「Re:fiVer」は環境配慮と機能性を兼ね備えたポリエステル長繊維。断面が異なるペットボトル再生繊維に特殊仮撚り加工を施す。

 その他、中国・サイクロンのケミカルリサイクルによるポリエステル長繊維などもそろえる。

 今回展ではこれらの繊維を中心に提案する。

〈特殊なボリューム加工糸/横編み開拓への戦略素材/増井〉

 増井(大阪市中央区)は特殊なボリューム加工を施した再生ポリエステル先染め糸「ジ・インフィニティ」を初披露する。2025年から70色の備蓄販売を予定しており、これまで少なかった横編みセーターや「ホールガーメント」製品など向けを強化する戦略素材でもある。

 将来的には糸から製品までの一貫対応を視野に入れるなど、新ビジネスモデルの構築も目指す。その一環で今回展では衣料製品も披露する。

 ジ・インフィニティは特殊なボリューム加工によって、同社の先染糸「ミコルトーン」に比べて約5倍の膨らみ感が特徴。コスト競争力にも優れる。

 「デュオフレックス」も新素材。Q―MAX0・154の接触冷感性、ストレッチ性やUVカット性、吸汗速乾性などが特徴で、PTTとポリエステルの複合糸で、PTTはコベーションバイオマテリアルズの「ソロナ」を使用し、一部植物由来。PTT部分に天然鉱石を練り込んでいる。

 その他、得意とするレーヨン・ナイロン両長繊維混繊糸で接触冷感、UVカット性が特徴の「アイスインパクト」、インド・ビルラ製の次世代セルロース繊維「リバエコ」、「リバエコ モダール」(増井がFSC認証を取得)、さらに再生ポリエステルによる十字断面糸でUVカット性、吸水速乾性、透け防止などを持つ「ルークールUVネクスト」を提案する。

〈再生ナイロン拡充/茶の実レーヨンなど紹介/GSIクレオス〉

 GSIクレオスは、マテリアル部、ファイバーソリューション部、関係会社のGSIマルロンテックスが参加し、サステイナブル糸などを紹介する。

 販売が堅調に推移するリサイクル糸は、ポリエステルだけでなくナイロンの品ぞろえも拡充している。リサイクルナイロン糸ではナイロン66糸(台湾製)のほか、廃棄される漁網やタイヤからケミカルリサイクルするナイロン6糸(中国製)などを紹介する。サステイナブルウールも出品し、生地(28、52番手使い)を中心に提案する。

 茶の実を使ったレーヨン糸「カテキンファイバー」も出品する。茶の実から抽出するオイルを練り込んだレーヨンで、抗菌性などの機能を持つ。従来は廃棄されていた茶の実を再利用することからサステ素材としても注目され、インナーや靴下、タオルなどの分野で提案が進んでいる。紡績糸はレーヨン100%とレーヨン綿混糸をそろえる。

 GSIマルロンテックスの商品では、滑り止め機能を持つ糸や、極細で柔らかいラメ糸、生分解性のカバーリング糸などを出品する。

〈シルミードライの風合い訴求/紡績糸の提案にも注力/UTC〉

 ユニチカトレーディング(UTC)は、風合いや感性をベースに機能性を兼ね備えた独自糸を提案する。長繊維では「シルミードライ」を昨年に続いて訴求するほか、紡績糸の提案も充実させる。

 シルミードライは吸水性や遮熱などの機能を持つが、特に高級綿のような表情が好評を得ている。中国など海外向けで人気を高めており、インナーやTシャツなどのアイテムで採用が進む。今後は国内向けでの提案も強化する考えで、今回展で訴求する。

 持続撥水(はっすい)素材「タクティーム」で使う特殊複合糸の提案も行う。レディースやスポーツでの生地展開に加えて糸販売も始めるもので、ブースではエコタイプとストレッチタイプの糸を紹介する予定。足元では撥水性能だけでなく、毛羽感がある生地の表情に注目するアパレルも増えており、今回展でも風合いの訴求に力を入れる。

 短繊維では、ユニチカテキスタイルの常盤工場(岡山県総社市)、ユニチカスピニング(長崎県松浦市)、ユニテックス(インドネシア)というユニチカグループの紡績拠点を紹介しながら、熱融着紡績糸「コルネッタ」などを紹介する。コルネッタは芯鞘構造で芯部にバインダーポリエステルを使うポリエステル短繊維で、芯地で根強い人気を持つ。紡績糸にすると熱融着による固さや反発性で独特の風合いに仕上がるという。ポリエステルや綿などさまざまな素材に対応する精紡強撚糸や導電性紡績糸「メガーナSV」なども紹介する。