特集 北陸ヤーンフェア2024(4)/出展者の見どころ/東洋紡せんい/新内外綿/蝶理/シキボウ

2024年11月07日 (木曜日)

〈再生ナイロンで0・5T/綿は独自紡績技術を訴求/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは御幸毛織と共同出展し、綿やナイロン、ウールの独自糸を紹介する。

 合繊ではリサイクルナイロン「ループロン」を出品する。今回展では特にケミカルリサイクルを訴求する考えで、超ハイマルチ糸(44デシテックス=T・96フィラメントなど)やモノフィラメントなど特殊糸を中心に展示する。衣料だけでなく非衣料用途への提案にも力を入れ、ブースでは0・5T以下のリサイクルナイロンを使ったワイピングクロスなどのサンプルも置く。

 経編み向けのビームサプライシステム「サイプス」の提案にも力を入れる。綿を中心に引き合いが増えており、北陸ヤーンフェアでも引き続き訴求する。

 綿糸は紡績技術の提案に力を入れる。特殊紡績技術で吸水速乾性や通気性、肌離れ性、清涼感などの機能性を付与した綿100%糸「爽快コット」などを展示する。庄川工場の紡績技術を生かしたOEM提案にも力を入れる。特殊原料を使って要望に応じたさまざまな紡績法で糸に仕上げるもので、日本の紡績スペースが減る中で素材メーカーなどとの取り組みが増えている。今後さらに取り組み先を広げていく考えで、今展でも訴求する。

 サステイナビリティーでは、リサイクル綿糸「さいくるこっと」を提案する。回収した繊維を反毛ではなく新たな開繊システムで処理するため、高品位、細番手化、リサイクル原料の高混率化を実現している。

 御幸毛織はウールの長短複合糸「マナード」の提案に力を入れる。ブースではウール×ポリエステルやウール×ナイロン糸で作った靴下のサンプルを用意して糸の特徴を伝える。

 マナードによる北陸へのウール提案は着実に進んでおり、特にトリコットで引き合いが出ている。現在は織物用の糸開発にも取り組んでおり、100番手(毛番手)より細いナイロン×ウールなどを開発中。昨年展でも紹介したトリアセテート×ウール糸への引き合いも増えている。

〈環境配慮の素材充実/シーウールやパイン糸も/新内外綿〉

 新内外綿は親会社のシキボウと出展する。トレーサビリティーのある綿糸や従来、廃棄されてきたものを原料とした紡績糸など環境に配慮した素材が充実する。シキボウとの製造、販売の両面での連携も見どころ。

 トルコから輸入するオーガニックコットン糸「エーゲ海オーガニック」、廃棄されるカキ殻に由来し、保温機能があるポリエステル繊維「シーウール」、パイナップルの葉脈繊維と綿の混紡糸(パイン糸)、さらに廃棄繊維のアップサイクルシステム「彩生」をアピールする。

 エーゲ海オーガニックは中長綿クラスの有機栽培綿花を使う。トルコの繊維企業、エーゲオーガニクス社から糸で輸入販売する。原料となる綿花は、遺伝子組み換えではなく、環境への影響を考えた栽培方法で育てられており、産地や生産者も詳細にトレースできる。

 シーウール糸は、「テンセル」リヨセル混、20、30、40番単糸で展開する。インナー、レッグウエアといった保温機能が求められる用途で需要を探る。シキボウも同じ原料で異なる展開をする。

 パイン糸は、これまで東南アジアの繊維加工場と1年がかりで開発し、今月販売を始める。まずは10番単糸(パイナップル繊維40%混)、20番単糸(同30%混)で販売を始める。今後、同15%混の30番単糸、同10%混の40番単糸も販売を予定する。

〈高伸縮糸で新ブランド/テックスブリッドのナイロンも/蝶理〉

 蝶理は独自のブランド糸をさらに拡充する。今回展では、STXとの共同ブースで機能紡績糸「スパンラボ」を訴求するほか、高伸縮糸「テックスブリッド」のナイロン版やポリエステル100%の高伸縮糸「MONOVII」(モノビー)などの新商品を紹介する。

 独自のブランド糸展開に注力する中、PBT/PETのテックスブリッドはけん引役の一つとなっている。近年はハイマルチやコットン調などのタイプも加え、ファッションやスポーツ・アウトドアなどさまざまな用途で伸びている。今回展ではさらに品ぞろえを広げ、伸縮性の高いナイロンを使った「テックスブリッド ナイロン」(仮称)も紹介する。

 高伸縮糸では、リサイクル原料を使ったサイドバイサイド構造のポリエステル糸「MONOVII」(モノビー)も新たに開発。経編みや丸編みで使うと糸が浮きにくいなどテックスブリッドとは違う表情を持たせることができ、モノマテリアル化の要望にも応える。

 外観での差別化では、天然繊維調の表情を持つシック&シン糸「NOTAN」(ノタン)を新たに展開する。再生ポリエステル「エコブルー」やテックスブリッドでのシック&シンも可能。

 スパンラボは機能性や感性をさらに高めたタイプや、差別化糸と組み合わせた長短複合などを紹介する。

 独自のブランド糸を拡充する中、4月からは素材イノベーションチーム(MIT)を設置して差別化糸を使った生地での開発を強化している。ブースではMITでの開発品も紹介する。

〈新素材開発の機運捉える/サイロコンパクト糸発信/シキボウ〉

 シキボウの原糸販売は、別注が拡大し富山工場(富山市)での試紡からバルク生産につながるケースが増えつつある。「新しい素材開発への機運を捉える」として、国内外で多彩な糸作りができる生産拠点を持つ強みを生かす。

 特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」や、連続シルケット糸「フィスコ」といった独自性の高い差別化糸の販売も増加。新内外綿と連携し出展する「第7回北陸ヤーンフェア2024」を通じて新たな販路開拓を進める。

 展示会で披露するのは、ベトナムの協力工場で生産した「フラッグシップのベトナム素材」とするサイロコンパクトの超強撚糸。協力工場へは富山工場の担当者が技術指導をしており、同工場と「同じレベルの品質の糸を供給できる」ことが強み。盛夏対策に適した素材への問い合わせが増える中、綿100%でありながら超強撚糸ならではの接触冷感やストレッチ、シャリ感を出せる。

 新内外綿とは、台湾の保温機能ポリエステル繊維「シーウール」やトルコ製オーガニック綿糸「エーゲ海オーガニック」を共同で開発。シーウールでは2層構造糸「ツーエース」タイプや、綿との混紡糸を打ち出す。暖冬傾向にある中、ポリエステル・綿混で「軽く、適度な保温性」を訴求ポイントに、靴下やインナー用途へ提案する。