特集 北陸ヤーンフェア2024(3)/出展者の見どころ/東レ/旭化成アドバンス/帝人フロンティア/三菱ガス化学

2024年11月07日 (木曜日)

〈ポリマーと紡糸技術で高度化/キュープをリブランディング/東レ〉

 東レはポリマー特品と紡糸技術に焦点を当てて展示する。糸からの差別化を求める声が増える中、ポリマーの特品と紡糸技術の複合で高度化した商品の開発を強化していく考え。

 ポリマー特品では超フルダルの原糸や吸放湿ナイロン「キュープ」などを紹介する。キュープは長く展開している商品だが、改めて脚光を浴びている。

 これまでパンスト用を柱に展開してきたが、近年はインナーやTシャツ、ジャケット・パンツなどでも伸びており、差別化を志向する中国アパレル向けなども拡大している。現在はキュープのリブランディングを進めており、今回展でキュープシリーズとして打ち出す。

 紡糸技術では、細さや形をナノレベルで制御する「ナノデザイン」などを紹介する。

 サステイナブルの切り口では、回収したペットボトルをリサイクルする「&+」(アンドプラス)を訴求する。今回展では、60周年を迎えた「シルック」とコラボレーションし、アンドプラスのシルックで作った浴衣も展示する。

 アンドプラスは、回収した漁網などを原料とするケミカルリサイクルのナイロン糸もラインアップに加わり、安定した量産に入っている。ナイロン糸もポリエステルと同様に幅広い糸種に対応し、10デシテックス以下の細繊度やブライト、セミダルなどもそろえる。アンドプラスによるキュープも試作中だと言う。

〈カバーリング糸を新用途に/ナイアの複合仮撚り糸を開発/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスはカバーリング糸の開発品を新たに提案するとともに、ジアセテート長繊維「ナイア」などを訴求する。

 今回は展示スペースを2小間に増やし、ファイバー課が展開するナイアやFTYマテリアル課のカバーリング糸などを紹介する。カバーリング糸はパンストやタイツ用を主力とするが、今後はアウターなどに展開を広げていく考え。今回展では短繊維使いのカバーリング糸や、ポリウレタンを使わない複合伸縮糸(PTT繊維とジアセテートの組み合わせなど)をファッションなどの用途に提案する。サステイナブル糸の提案も行い、PU8%・生分解性ナイロン24%・ジアセテート68%や、PU6%・生分解性ナイロン66%・ベンベルグ28%などの3者混カバーリング糸を紹介する。

 ジアセテートは長繊維「ナイア」のほか、紡績糸「セルン」や先染め糸のストック販売「アリア」など展開を広げて販売を堅調に伸ばしている。セルンはジアセテート100%糸を中心にファッション用途での採用が進んでおり、今後は寝装や肌着などにも展開を広げていく。

 今回はナイアの複合仮撚り糸を新たに紹介する考えで、ポリエステルやナイロンとの複合糸を出品する。強度が求められるニットでの展開をさらに広げる狙いで、会場での反応を見てストック展開も検討していく。

〈「シンクエコ」再確認/機能体験コーナーも/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、既存商品のラインアップを改めてそろえることで環境戦略「シンクエコ」を再確認する提案を進める。機能を体験できるコーナーを用意することで、糸の特性を分かりやすく訴求する。

 ベースにリサイクルポリエステル「エコペット」を使用した高付加価値糸を重点提案する。特に注目はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)・ポリエチレンテレフタレート(PET)複合繊維「ソロテックスエコハイブリッド」。ケミカルリサイクルPETを採用した。PTTも原料の一部が植物由来のため、原料ベースで環境に配慮した素材となる。そのほか、人気が高まる天然調合繊として高捲縮ポリエステル紡績糸「マーフィル」も提案。こちらも原料にはエコペットを使用する。

 機能を体験できるコーナーではフルダルポリエステルハイカウント糸による生地「涼しや」、四つ山扁平(へんぺい)断面ポリエチレン糸「クールセンサーEX」などで冷感性やUVカット機能を紹介する。また、アクリレート繊維「サンバーナー」も紹介し、豊富な実績のある保温性を紹介する。

 生産を担うタイ子会社、テイジン・ポリエステル〈タイランド〉でコンジュゲート長繊維の生産能力を増強したことも生かし、人気が高まる梳毛調コンジュゲートポリエステル糸「トリクシオン」も積極的に提案する。

〈エモクシー重点提案/協業で糸への要望も応える/三菱ガス化学〉

 三菱ガス化学は独自のナイロン樹脂「エモクシー」とバイオベースナイロン「レクスター」を出品する。今回は特にエモクシーの提案に力を入れる考えで、エモクシーの糸を展開するユニプラステックが隣にブースを構え、マルチフィラメントやモノフィラメントを展示する。

 エモクシーは、低吸水性、耐薬品性、高強力などが特徴のナイロン樹脂。三菱ガス化学は樹脂ペレットの販売で、会場での糸への要望に対してはユニテックプラスとの協業で応じる。マルチフィラメントは210D/24Fなど細繊度もそろえる。

 エモクシーの提案は、産業資材用途を中心に進んでおり、ブースではフィルター用織物などのサンプルを展示する。フィルターでは耐熱性や耐薬品性、高強度などが評価されており、ポリプロピレン製に比べて交換頻度を少なくできるなどの評価が出ていると言う。ブラシなども特徴が出せる用途に位置付ける。

 樹脂のベースは固まり、平塚研究所では各用途で求められる性能を引き出す開発段階に入っている。新潟工場では2度の量産機での試作を終え、量産化にめどを付けた。用途開発を加速し、2030年ごろの本格量産開始を目指す。

 繊維以外では、射出成形やフィルムなどで開発が進んでおり、国内外の展示会でも訴求している。繊維は擦り合わせによる開発が重要なため、まずは日本での取り組みに重点を置く考え。