東レのポリエステル短繊維 社内連携で高付加価値化

2024年11月05日 (火曜日)

 東レの短繊維事業部は、全社で取り組む「特定事業・会社の収益改善プロジェクト」(通称ダーウィンプロジェクト)の対象の一つとなっているポリエステル短繊維事業に関して、着実に改善が進んでいるとの認識を示す。

今後、衣料用途は差別化わたへの特化を進めえるために独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」を活用し、グループ連携で高付加価値化を推進する。

 現在、ポリエステル短繊維は愛媛工場(愛媛県松前町)、インドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)、韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、マレーシアのペンファイバー(PFR)で生産している。このうち、単品大量生産型製造ラインである連続重合・直接紡糸(連重)設備は愛媛工場とITS、TAKにある。

 ポリエステル短繊維は、ポリエステル・綿混シャツ地などの需要減退や原燃料・物流コスト増加、中国メーカーとの競争激化などで収益性が悪化しきた。このためダーウィンプロジェクトの一つとして現在の市場構造に合わせた生産体制の再構築と生産品種高付加価値化による収益改善と中長期的な成長に向けた構造改革を進めてきた。

 こうした取り組みの結果、徐々に改善効果が表れ始めた。既にTAKは連重設備を一部停止して生産の最適化を進めた結果、2024年度上半期(4~9月)はTAKのポリエステル短繊維事業も黒字浮上したもよう。また、愛媛工場も25年下半期(25年10月~26年3月)中に連重設備を停止し、バッチ式紡糸のみとする計画だ。

 中島健太郎短繊維事業部長は「今後、衣料用途はバッチ式紡糸を生かした差別化わたに特化する。そのために短繊維の開発にも『ナノデザイン』を積極的に導入する」と話す。複合ポリマーや特殊断面などナノデザインでしか実現できない原綿開発に取り組む。

 原綿の特徴を糸・生地の物性や機能に具体化させるためには紡績・織編・染色加工それぞれの技術を融合させることが不可欠。このため「グループ内のテキスタイル事業との連携を深め、原綿だけでなく糸・生地として高付加価値化を進める」との考えだ。