生地商社など/「リアルな出会い」重視の機運/多くの展示会が過去最大規模

2024年11月01日 (金曜日)

 デジタル技術の活用が進むのと同時に、人と人が直接対面するリアルな出会いの必要性を指摘する機運が高まっている。ここに来て総合展に出展する企業が増加し、新型コロナウイルス禍で休止、あるいは内見会に切り替えていた個展開催を大々的に復活させる繊維企業が数多いことがそれを裏付ける。(吉田武史)

 備蓄型生地商社、サンウェル(大阪市中央区)の今泉治朗社長は、「対面営業を求める声が増えている。当社も改めてその方針で営業活動を進めて商機をつかむ」と強調し、総合展と位置付ける入場フリーの個展を2年連続で開いた。

 ここに来て同様の方針を掲げる繊維企業トップが後を絶たない。サンウェルなど生地商社の多くも、デジタル技術の活用を進める一方、展示会への参加や開催頻度を上げている。

 生地はそもそも、視覚と触覚で良し悪しを判別する必要がある。画像データでは正確で精緻な色合いまでは確認できないし、風合いは手に取らなければ分からない。

 他方、繊維・ファッション業界では古くから、革新的な商品が生まれにくいことも背景に「人とのつながり」が良くも悪くも重視されてきた。「あの人から買いたい」「あなたが勧めてくれるなら買う」「この人に言われれば応じるしかない」といった具合だ。こうした業界特性も、デジタル時代の中でリアルな出会いの必要性が再認識されるベースになっていると考えられる。

 来年2月4~6日に開かれるイタリア・ミラノの服地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)に出展する日本企業が過去最多になる。日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)と日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催する日本パビリオン「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)とミニブースの「JOB Next by JETRO」(JOB Next)を合わせて55社が出展、前回から14社増える。また小松マテーレは日本企業として初めてJOB内ではなく単独でブースを設ける。

 今月6、7日に東京国際フォーラムでの開催を迎える「JFWジャパン・クリエーション(JC)2025」と「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)2025秋冬」も過去最多級の出展者を集めて開かれる。PTJの出展者数は84社(118・5小間)で、STX、大津毛織、小林繊維、近藤紡績所、瀧定名古屋、ビアン、御幸毛織、モリリン、ユメテックス、香港のTexhong International、中国のSHANGHAI BLACK HORSEなどが初出展だ。

 台湾企業による「パンテキスタイル大阪」も近年最大規模で開かれ、多くの日本人バイヤーを集めた。皆がリアルな対面営業で商機をつかもうと躍起だ。