特集スクールユニフォーム(8)/商社/細かい対応力で市場支える/チクマ/ナカヒロ/牧村/イシトコテキスタイル/アカツキ商事
2024年10月31日 (木曜日)
来年の制服モデルチェンジ校は3年連続で700校を超える見通しだ。少子化で1校当たりの制服供給が減っていく中、それでも入学式までに家庭へ制服を届けられるのは商社の力が大きい。時代に沿った環境配慮型素材の提案とともに、細かい対応力によってスクールユニフォーム市場を支える。
〈「服育」から新たな視点発信/チクマ〉
チクマ(大阪市中央区)は、8月に大阪市内で「服育とできる20のこと」をテーマとしたイベントを開き、学校関係者を中心に約200人が集まった。「衣服を通じて心を育む」の意味を込めた概念「服育」を提唱してから20年目となる今回は、服育からできるさまざまなアイデアや視点を発信。「うちの学校でも取り組みたいという声がたくさんあった」として好評だった。
今後「夢キタ万博2024」や「エコプロ2024」に相次いで出展を予定する。服育を改めて発信するほか、再生ポリエステル糸といった環境配慮型素材を使う制服のSDGs(持続可能な開発目標)的要素や、衣料品リサイクルシステム「チクマノループ」などを紹介する。
来年の入学商戦は、学生服メーカーの在庫調整の影響によって生地販売が鈍化。新規のモデルチェンジ(MC)校数は200校を獲得する見通しだが、人口の多い都市部でのMCが少なく、少子化によって学校単位での供給量が小ロット化しつつある。
少子化が進む中、小学生服市場の開拓も模索している。制服があることでマナーや多様性、着こなしなど、服育を通じて市場の深耕につなげる。
〈チーム一丸で供給安定へ/ナカヒロ〉
ナカヒロ(大阪市中央区)のスクール部は来年の入学商戦に向け、ユーザー目線による営業力の強化に取り組んでいる。細かいニーズを捉えた供給力が問われる中、素材メーカーや学生服メーカー、販売店と「チーム一丸となって取り組む」姿勢を強める。
少子化による新入生の減少や、“第3の制服”による選択肢の多様化でモノ作りも難しくなってきた。そのため、取引先と連携しながらコンペや案件獲得に向けた対応力を強化。昨年、生産部を立ち上げ、ビジネスユニフォームで活用していた縫製工場を少しずつスクールでも活用できるようにするなど、スムーズに製品を供給できる体制を構築してきた。
環境配慮素材を求めるニーズを受け、ビジネス向けに展開する独自の環境配慮型素材「エコサス」を学販向けでも提案できるようにする。天然繊維として生分解性があり、機能性も高いウールの需要喚起にも注力。26年の入学商戦に向け提案できるように準備を進める。
〈新柄入れ替え採用率向上へ/牧村〉
牧村(大阪市中央区)のスクールユニフォーム事業は来年の入学商戦に向けて、前年と同等の販売量を確保している。性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れから、性差を感じさせないブレザー化への流れが進む中、スラックスやスカートなどボトムス向けの柄物を厳選した見本帳「ジュニア・パレット・プラス」の販売が増えてきた。
ジュニア・パレット・プラスでは自治体が地域一帯で統一した“エリア標準服”への提案をしやすいように、多彩なチェック柄をそろえている。ある程度の見本や色糸を備蓄しており、QRができるのも強みだ。決定率の高い柄など最近の傾向を踏まえながら、26年入学商戦に向けて新しい柄に入れ替え、より採用率を高める。
制服の多様化で横編みニット製品の需要が増えている。同社はテキスタイル販売が中心だが、ビジネスユニフォームやメンズなど他の事業部と連携し製品OEMによる供給体制も強化する。
〈SDGs、暑熱対策で捉える/イシトコテキスタイル〉
イシトコテキスタイル(大阪市中央区)は、SDGs(持続可能な開発目標)や暑熱対策など機能に沿った生地の提案に力を入れ、2026年の入学商戦に向けて採用を目指す。より紡績や学生服メーカーとの「連携を密にする」ことで生産や納期対応を強化する。
ショールームをこのほど更新。シキボウの国際フェアトレードラベル機構が認証したフェアトレードコットンを8%以上混綿した糸「コットン∞(エイト)」を訴求。生分解性ポリエステル使いも充実させ、シキボウの「ビオグランデ」や、東亜紡織のウールとポリエステルの生分解性素材「バイオハーモニー」も提案できる。
暑熱対策素材としてはシキボウの特殊高通気織物「S(エス)クール」や、ドット構造による高通気編み地「エアモーション」を打ち出す。エアモーションは吸水速乾機能で汗によるべたつきを低減、2重組織による透け防止と軽量感を兼ね備える。
〈縫製受託を強化/アカツキ商事〉
アカツキ商事(東京都墨田区)は、昨年立ち上げたアパレル開発部を中心に縫製受託業務を強化している。ニッケグループ内や新規得意先からの企業ユニフォームの縫製依頼にも応えていく。
今春販売した学生服の一部はベトナムと中国で縫製。国内縫製協力工場と連携し、さらに安定した生産体制の構築に取り組んでいる。関東地域の学生服アパレル企業とは共同縫製・仕入れ体制の構築を進めている。
千葉県内にあった物流拠点を茨城県内の物流センターに集約。アウトソーシングで運営することで首都圏向けダイレクトデリバリー体制の繁閑期対応の効率化とコスト削減を図る。さらに大阪、名古屋の物流拠点の見直しにも着手する。
2025年度入学商戦の価格改定交渉を精力的に推し進めている。他にデジタル技術で企業を変革するDXで総合的な学校サポート体制を展開。教職員の業務効率化に貢献する「スクノート」、生徒募集や多様性ある学び・交流の場を提供するメタバース、人工知能(AI)チャットをはじめ、今春150校で利用された電子商取引(EC)システム「ニッケメイト」のさらなる拡販を目指す。