特集スクールユニフォーム(5)/学生服メーカー大手3社トップインタビュー/価格改定で収益改善へ/トンボ/菅公学生服/明石スクールユニフォームカンパニー

2024年10月31日 (木曜日)

 大手学生服メーカー3社は来春に向けても、中学校を中心に全国的に広がる制服のモデルチェンジ(MC)に対応しながら受注を獲得する。一方で、原材料価格や運送費など、あらゆるコストが上昇しており、利益圧迫の要因となっている。今後の重点施策として3社が共通してあげるのが価格の改定。顧客の理解を得ながら、値上げを進める。併せて、安定生産、納入も今春に引き続き求められてくる。大手3社トップに来入学商戦の進捗(しんちょく)などについて聞いた。

〈トンボ 社長 藤原 竜也 氏/設備投資と新規事業強化〉

――2024年6月期を振り返ると。

 今春の入学商戦では納品を順調に進めることができました。また、250校以上のMC校からの受注を獲得することもできました。

 一方で、在庫過多が課題として残りました。確実な納品につなげるために製品を多く作り込んだことが要因です。

――既に今期がスタートしていますが、注力ポイントは。

 まずは価格です。あらゆるコストが上昇する中、価格改定を進めなければビジネスモデルが成り立たなくなります。当社では3年計画で改定を進めています。9月末時点で、今期目標としている7割ほどの学校のご理解を得られています。

 営業面では、当面は当社のシェア率を高めながら、売り上げをキープしていく方針です。来春に向けても、確実に納品するために新規注文の締め切りを6月末で締め切りましたが、多くのMC校から受注を得ています。

――今期の設備投資の計画は。

 27年の稼働を目指し基幹システムのクラウド化に取り組んでいます。今は現行のシステムの機能で何が必要か、必要でないかを棚卸している最中です。

 グループ会社の瀧本(大阪府東大阪市)とはシステムを統合し、9月から動き始めました。来年7月をめどに、販売会社のシステムも統合する計画です。

 生産面では、紅葉台物流センター(岡山県玉野市)に隣接する土地建物を購入し、昇華転写の工場として7月から稼働を始めています。

――昨年から稼働する「東京物流センター」(茨城県笠間市)の状況は。

 東京本社の商圏全体を対象とした物流センターになり、東京で扱う商品は全てここに集約されます。商品管理や加工、アソート、返品などの業務も行っており、出荷個数は昨年の約2・3倍になりました。

――今年、紳士服製造の創作屋(同総社市)を子会社化しました。

 新規事業を強化していく中で、創作屋はその中心になります。このほど、紳士服を熟知した企画会社と契約しました。新企画や売り方、見せ方など、マーチャンダイジングを進めていきます。

 今後はODMの売り上げを増やしていきたいですね。また、自社ブランドの販売も進めていきます。今月には岡山市内にオーダースーツ専門店を開設しました。

 生産戦略にも取り組んでいます。創作屋では、商品によっては当社の玉野本社工場などを使ってもらったり、逆に繁忙期には学生服を縫ってもらったりしています。

 新規事業として、当社では犬用の歩行補助ハーネスの展開などにも取り組んでいますが、こちらもまだ売り上げを増やしていかなければなりませんし、この先、もう一つ、二つの新規事業も考えていく必要があります。

〈菅公学生服 社長 尾﨑 茂 氏/安定納品へ体制整備〉

――前期(2024年7月期)を振り返ると。

 売上高は前期比1・1%増の414億円と増収を確保しました。今春の入学商戦では、スクール、スポーツともにMC校からの受注を順調に獲得できました。また、エリアごとの地域密着の営業強化に加え、環境配慮に向けた取り組み、グループ会社のカンコーマナボネクト(岡山市)で取り組む非認知能力の育成やキャリア教育などで、学校と密接な関係を作ることにもつながりました。

 一方で、原材料価格など、モノ作りにかかるあらゆるコストの上昇の影響を受け、営業損失、経常損失、純損失を計上しました。24年7月期は厳しい1年だったとしか言いようがありません。

――来入学商戦に向けての進捗はいかがですか。

 引き続き、生産、納品を第一に進めています。

――今期に注力するのは。

 価格改定と在庫削減です。生産調整のほか、製品の値上げに関しても徐々に進めています。利益改善のためには価格改定しかありません。

 さまざまな業務改革にも取り組みます。営業から生産、物流までの情報の一元化も進めていきます。また、生産力の再構築によって、顧客に安定してモノをお届けできる体制を整備していきます。

――今期の設備投資の計画は。

 シャツの生産が主力の米子工場(鳥取県米子市)の隣接地に増設する形で、ブレザーやスラックスを生産する工場を建設中です。当初の計画では今月に竣工(しゅんこう)予定でしたが、完成が遅れています。

 このほか、倉敷工場(岡山県倉敷市)の生産本部の建屋の建て替えを進めています。今のところ来年5月末完成を予定していますが、こちらも計画通りにいくかは分かりません。

――JEPLAN(ジェプラン、旧日本環境設計)と進めている「制服・体操服の循環型プロジェクト(PJ)」の進捗は。

 同PJは不要になった制服、体操服を学校で回収し、服から服へと循環させる取り組みです。回収まで進んでいるのが5拠点で、197㌔の制服、体操服を回収しました。現在は32校と連携して取り組んでいます。

 子供たちに循環経済(サーキュラーエコノミー)への関心を高める機会を提供するとともに、将来的には再生ポリエステル原料「ブリングマテリアル」を使った制服や体操服の開発を目指していきます。

――カンコーマナボネクトで取り組んでいる教育ソリューション事業の取り組み状況は。

 全国各地で学校から探求プログラムの授業をいただいているほか、インターシップや合同の就職セミナーなどにも取り組みながら、学校との関係を構築しています。

〈明石スクールユニフォームカンパニー 社長 河合 秀文 氏/来春も順調に受注獲得〉

――今春の入学商戦、上半期(2024年1~6月)の結果について教えてください。

 今春の入学商戦では納品など含めて順調に終えることができました。新規MC校からの受注も中学校を中心に計画通り獲得が進みました。

 一方で、少子化による生徒減の影響がこの春から数字に出てきており、特に都市部の私学の生徒減が想定以上でした。また、制服のリユースも増加しており、これを扱う事業者も増えています。新規MC校からの受注はそれなりにありましたが、想定以上には伸びませんでした。

――来入学商戦に向けての進捗(しんちょく)は。

 新規MC校からの受注はほぼ前年並みの数になっています。新規注文の締め切りを意識的に早めており、学生服は1学期まで、体育着は9月までとしました。

 来春に向けても、引き続き中学校を中心にMCが多いです。来春は高校のMCも内容的には出てくるのではとみており、こちらにもしっかり対応していきます。

 生産の順調さもありますが、今年は計画以上に在庫が増え、ここは苦戦しています。

――さまざまなコストが高騰する中、価格改定の進捗はいかがですか。

 当社では先頭を切って価格改定に動きました。イメージしている金額の7~8割は改定ができています。原材料価格など、あらゆるコストが上がる中、顧客にはこの状況についてご理解をいただいています。

――下半期の強化ポイントは。

 営業的には来年以降の物件の獲得に動いていきます。10~11月に東京、大阪、名古屋で展示会を開きながら、本格的に提案をスタートしていきます。

――人工知能(AI)を使った採寸の広がりについて。

 AI採寸の採用校は今年も100校ほど増え、累計で500校以上に採用してもらっています。学校に出向くことなく、自宅で採寸できるという利便性が評価されています。採寸時のQ&Aも開示しているので、問い合わせ件数も相当減ってきました。

 学校側も、採寸のために職員を休日出勤させることに抵抗があるほか、この先人材も減少していきます。子供の親御世代もインターネットを使うのが普通になってきた中、AI採寸の提案は今後も進めていきます。併せて、採寸におけるノウハウも一つ一つ積み上げていきます。

――24年12月期の見通しは。

 増収予定ではありますが、利益面は厳しいですね。社内の改善で利益が残るような仕組みにしていかなければなりません。販売、生産両方でまだ効率を上げられる余地はあるとみています。