特集スクールユニフォーム(3)/探訪 学生服の現場から/仏教の教え基づき人間性育む/学校法人愛知学院 愛知中学校・高等学校
2024年10月31日 (木曜日)
学校法人愛知学院 愛知中学・高等学校(名古屋市千種区)は150年近い歴史を誇る伝統校で、仏教精神に基づき生徒の人間性を育む教育を進めている。高校では文武両道の生徒が多く、全国の幅広い大学へ進学するなど毎年優れた人材を多数輩出してきた。4年前に制服の統一化を図ったほか、来春には生徒主体で考案した、新たなニット類制服の着用も始まる。
〈毎年100人ほど国公立大進学〉
1876年に曹洞宗専門学支校として開校した。改名や移転を経て、1925年に中学校令による愛知中学校を開設。戦後の47年に旧制から新制愛知中学校となり、翌年には新制愛知高校を開設した。67年に中学・高校共に現在地へ移転。開校以来長らく男子校だったが、中学校は2004年から、高校は05年から共学となった。
建学の精神として「行学一体」「報恩感謝」を掲げる。智慧(かしこさ)・慈悲(思いやりの心)・身心(豊かな心と健全な身体)を持った人格の形成を目指しており、自己を磨き、人のために尽くす深い慈しみの心をもった品位ある人を育てることに力を入れる。
コースは高校から入学の「3カ年コース」と中高一貫の「6カ年コース」に加えて、今春から「国際教養コース」を新設した。英語をベースとし、海外研修を含めた独自カリキュラムで、難関私立大学への進学を目指す。従来のコースでも生徒の希望に合わせた教育を進めており、毎年100人ほどが国公立大学へ進学する。
勉学だけでなくスポーツに励む生徒が多く、7~8割が部活に入る。中でもハンドボール部や水泳部、囲碁・将棋部は全国大会へ出場するなど実績も残している。生徒らは学校行事も懸命に取り組んでおり、9月に開催した文化祭では手作りジェットコースターやジップラインなど大掛かりな催しも登場した。
仏教系の学校であることから、宗教情操教育を実践。高校1年次には曹洞宗の大本山である永平寺で1泊2日の修行体験をする。ほかにも、毎週、釈迦仏を安置する講堂での礼拝や、毎日の昼食時には放送に合わせて生徒全員が食前の言葉を唱和する。
〈縫製仕様異なる制服を統一〉
同校は他校に先駆けて、30年ほど前の男子校だった時代に制服を詰め襟からブレザーに変更した。共学に伴い女子のブレザーも導入したが、当時は生徒数が多く、供給元が1社だけでは対応し切れないという判断から、複数社にわたっていた。各社によって縫製仕様が違うため同じ制服にも関わらず、サイズや柄の見え方などの品質が異なっていた。
そうした課題を解決し、制服の統一化を図ることとなり、制服メーカーのコンペを実施。各社の中から、制服のシルエットや、素材の触り心地などの提案が優れていた菅公学生服を選び、2018年から新制服となった。同社が特にこだわったのはスカートの柄出しだ。これまでは2社で製造していたためチェックの出方がそろっていなかった。同社は裁断の方法などに工夫を加えて柄が合うようにした。
ブレザーは着心地と耐久性にこだわった。日常生活で動作を妨げず、ストレスなく着用できる「ストレスフリーアクティブブレザー」を採用した。生地の素材はウール高混率であるが家庭洗濯にも対応し、耐久性を高めることで3年間以上の着用を実現する。男子のスラックスについても従来タイプに加えて、運動部に所属する生徒向けのスポーツマンタイプもそろえた。
〈生徒主導でニット類制服刷新〉
25年春からはセーターやベスト、サマーカーディガンといったニット類の制服も新しくなる。性的少数者(LGBTQ)への配慮が進む中で、同校は22年4月から女子のスラックス着用を認めた。そうした流れを受け、性別によってデザインが異なっていたニットも男女兼用で統一した方がよいという話が持ち上がった。
「自分たちが着るからこそ自分たちで考える」を目的に、デザインや素材などを含めて生徒が考案。中学・高校の生徒会有志が昨年6月から月1回のミーティングを開催し、名古屋菅公学生服の営業マンも加わり議論を重ねた。最終的には2グループに分かれて、他の生徒へのプレゼンテーションを行い、全校生徒による投票で決めた。
新しいニットは既存の男子のものをベースに男女問わず着用できるデザインとした。糸の番手にもこだわり、女子でも重すぎない適度な重量感が特徴だ。素材はウール・アクリル・ポリエステルで耐久性と毛玉防止も備える。