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「和歌山ニットプロジェクト」 世界市場への浸透に注力

2024年10月29日 (火曜日)

 和歌山産地のブランド化を目指す「和歌山ニットプロジェクト」が世界に広がりそうだ。今年は、フランス・パリでの製品披露に始まり、米国と日本で期間限定販売を実施した。

いずれも高い評価を集め、参加企業は今後に手応えと期待を示す。12月には中国での期間限定販売を行う予定で、日・欧・米・中の4極での浸透を狙う。

 和歌山ニットプロジェクトは、「産地を持続するにはブランド化が不可欠」という考えの下、エイガールズが呼び掛けた。産地のオカザキニット、風神莫大小、紀南莫大小工場、コメチウ、阪和、フジボウテキスタイル、丸和ニット、美和繊維工業、ヤマヨジャージィ、豊染工の10社がその声に応えた。

 特徴的と言えるのが、ディレクションを務めるエイガールズの独自糸であるインド・スビン綿「ロータス」を各社が使ってモノ作りを行っていること。同じ糸でも編み機や染色・加工を含む得意技術が違うため、味わいの異なる生地が出来上がる。エイガールズの山下智広社長は「同じ食材で和洋中別の料理を作るイメージ」と話した。

 プロジェクトの成果は国内だけでなく、世界で紹介している。今年7月にエイガールズがパリで開いた個別展示会で和歌山ニットプロジェクトの生地とパーカやTシャツ、スエットなどの製品を紹介。プロジェクトメンバーの一部も帯同し、OEM・ODMビジネスなどでプレゼンテーションを行った。

 今月5~20日には米・ニューヨークのセレクトショップ「コルボ」と「シボネ」で期間限定販売を行った。コルボはマンハッタンに、シボネはブルックリンに位置し、客層が違うにもかかわらず、どちらも盛況だった。「ファッション性ではなく、風合いや着心地を訴求したことが良かった」(山下社長)と分析する。

 日本では、関西の京都高島屋と大阪高島屋に続いて、東京都渋谷区の生活提案型商業施設「T―SITE」でも期間限定店を開催した。今後は11月23~24日に和歌山市のエイガールズ本社で開催するイベントで紹介し、12月6~8日に中国・杭州で現地大手アパレルのオフィスの一画で期間限定店を開く。

 和歌山ニットプロジェクトでは、自社製品の販売よりもOEM・ODMビジネスの獲得に重きを置く。山下社長は「期間限定店での製品販売は順調だが、本当の成果獲得はこれから」とし、「来年は海島綿やスパイバーの構造タンパク素材を使ったモノ作りも行いたい」とした。