素材メーカー・商社の学販向け 開発力、環境配慮で打開策
2024年10月29日 (火曜日)
素材メーカー・商社の学販向けビジネスは昨年から一転し、苦境に立たされている。来年の入学商戦の制服モデルチェンジ(MC)は今年より若干少ない710校(ニッケ調べ)の見通しで依然高水準にあるものの、学生服メーカーの在庫調整で生地や製品の出荷は鈍い。値上げも進めなければならない中、開発力や環境配慮といったこれまでとは違う視点からの打開策を探る。
学生服メーカーの前倒し生産が活発だった昨年とは打って変わり、多くの素材メーカーや商社は減収基調に転じている。在庫調整が予想以上に深刻で「6月に入ってから生地の動きが鈍くなってきた」「生地も製品も受注が減っている」との声が聞かれる。
本来、学生服メーカーは生地の品番を集約しなければいけないところだが、高水準のMC校数によって柄物を中心に在庫過多になっていることに加え、少子化で学校単位での供給数量が減少。自治体が地域の制服を一括してMCする、いわゆる“エリア標準服”では、ブレザーだけでなく、既存から着用していた詰め襟服やセーラー服の着用を認める措置、いわゆる第3の制服が認められ、「在庫をどこまで持つか判断が難しい」(学生服メーカー関係者)状況になってきた。
学生服メーカーは来年、値上げを想定している。本来なら駆け込み需要を意識し、商品の作り込みが活発になるはずだが、今のところ静かな商戦。学生服メーカーの営業利益率の低下から「来年も在庫調整が続く可能性がある」との声も聞かれ、値上げを進めなくてはいけない環境下での在庫調整に、各社は渋い表情を見せる。
そういった状況で2026年入学商戦に向け、新たな需要を捉える動きを強めている。コストアップが続く中、ポリエステル100%使いの素材の採用が増加。合繊メーカーではストレッチや暑熱対策への対応、ニット化などで攻勢をかける。東レではインクジェット捺染による柄物生地の実用化を推進。東洋紡せんいはシャツ地向けに中東向け民族衣装用生地から着想した素材を打ち出す。「新しいものを生み出すことこそ生命線」として開発力で販売の底上げを目指す。
一方で毛紡績ではサステイナビリティーや環境問題に対する学校教育が活発になる中、ウールを軸に新たな切り口で需要の活性化につなげる取り組みが進む。ニッケは「服から服」への循環プロジェクト「WAONAS」(ワヲナス)を始動。東亜紡織は尾州の染色最大手、ソトーなどと連携する、持続可能な調達・製造工程のトレーサビリティーの達成に向けた「グリーンウールバリューチェーン」の提案を推進する。
また、少子化が進む中、チクマでは小学生服市場の開拓を模索。衣服を通じて心を育む「服育」を通じて、制服によってマナーや多様性、着こなしなど学べる点に対する理解を広げながら市場の深耕につなげる。