ごえんぼう

2024年10月29日 (火曜日)

 京都市東山区の京都国立博物館で特別展「法然と極楽浄土」が開催中だ。浄土宗850年の歴史を、全国浄土宗諸寺院が所蔵する国宝や重要文化財でたどれる▼もう随分前に閉店したが、京都国立博物館の近くに昔ながらのうどん屋があり、昼時は観光客や修学旅行生でにぎわっていた。地元の人間にとっては至って“普通”の店で、子供の頃から慣れ親しんだうどんが食べられた▼京都のうどんはコシがなく、柔らかいのが特徴。店屋物だけでなく、家で出てくるのもそうだった。だいたいは味を付けていない刻んだ油揚げと九条ネギが入っていた。体調を崩している時は何も入っていない素うどんを出してくれた▼柔らかく優しいうどんはしばらく食べていない。当たり前だったものがいつの間にか遠くなった。〈月影の至らぬ里はなけれども/眺むる人の心にぞすむ〉(法然)。きちんと見ていないとありがたみは分からないものだ。