秋季総合特集Ⅴ(11)/Topインタビュー/ボーケン品質評価機構 理事長 吉田 泰教 氏/品質から環境、人権へ/「人財」を発展につなげる

2024年10月25日 (金曜日)

 ボーケン品質評価機構は近年、従来の品質試験だけでなく品質管理支援などへ事業を拡大している。吉田泰教理事長は「業界の要求が従来の品質に加え、環境や人権といった領域へと拡大している」と指摘する。こうした変化に対応するためには「基盤となる『人財』が重要。人財の成長がボーケンの発展につながる」と強調する。

――近年、繊維業界が大きく変化しました。

 社会が変化するのに合わせて、繊維業界や検査機関に求められるものも大きく変わりました。検査機関は元々、納品前品質検査からスタートし、繊維企業の海外進出が拡大するのに合わせて海外拠点も含めた品質試験を拡大してきたわけですが、近年はサステイナビリティーに関連する要望が急速に増えました。繊維業界のニーズが品質だけでなく、環境や人権といった領域に広がっています。こうした変化に当機構も対応し、業務領域を品質試験から環境や人権に関するサポートやコンサルティングにまで広げています。環境や人権に関する標準化も急速に進められており、第三者検査機関として情報をいち早く入手できる立場にあることも強みになります。

――変化に対応するための取り組みは。

 現在、繊維、生活産業資材、認証・分析、機能性、海外、品質支援の6事業本部制を敷き、高度な専門知識を持ったプロフェッショナル集団としての役割を果たすことを目指しています。ですから事業・サービスの基盤は「人財」。2023年10月に「人財宣言」を策定し、人的資本経営の基盤となる人財の成長が当機構の発展につながるという方針を明確にしました。これに基づき、24年度は部門やチーム別に人財への投資と育成に取り組んでいます。

 具体的な戦略として女性の管理職・幹部登用、キャリア採用者を積極登用することでプロパー人財との融合を進める。これらによってスキルとマインドの両面で組織風土を改革することに取り組みました。

――成果が上がっていると。

 私たちの成果は業績以外も定義付けており、無形資産である人財力へ展開しています。特にこの1年間に力を入れてきたのは、まず「組織、人財育成の仕組み化」。“教える側の責任”を重視し、個人の知見・ノウハウを教育に落とし込むことでキャリアパスを確立し、仕事へのやりがいを高めることに取り組みました。二つ目は「目的、目標の明確化」です。業務の手順を目的化するのではなく、目的とゴールを定め、お客さまのニーズにつながる行動に取り組みます。最後に「組織風土・文化の醸成」。コミュニケーションを大切にし、あいさつや5S、時間管理など基本的なことから大切に取り組みました。中途採用者と新卒採用者の融合が進み、新しい文化ができつつあります。

――今後の展望は。

 品質・環境・人権それぞれの取り組みにおいても、専門人財を多く抱えるプロフェッショナル集団としての役割に存在意義があると考えます。目の前の仕事だけに一喜一憂するのではなく、自前の人財を鍛え、成長させていくことで社会や業界の一員としての役割を果たす組織を構築することを目指します。基盤となる人的資本経営、サステ経営がデジタル技術で組織を変革するDXと並ぶ組織戦略の軸であり、これを研さんすることで事業戦略に掲げるサステ事業開発、ウェルビーイング事業開発、試験機関としての技術力・情報力・対応力の向上を実現します。

 業務・サービスの深化にも力を入れます。12月には恒例のボーケン展示会をリアルとオンライン両方で開催します。拡大したサービスに内容も含めて今回は過去最高のコンテンツをそろえました。また、展示会を補足する形で各種セミナーも開催中です。品質・環境・人権に関する情報は日々更新されていますから、これを整理し、有益な形で発信します。また、10月の「メッセナゴヤ2024」、11月の「ペットインテリア展」、12月の「エコプロ2024」など合同展にも積極的に参加します。こうした取り組みをボーケンの人財が担っています。組織力・人財力でナンバーワンと認知されることを目指して、今後も日々研さんしていく決意です。

〈自身の変化を感じた時/単身生活で気付いたのは〉

 現在、東京で単身赴任中の吉田さん。「初めての単身生活ですが、だんだんと炊事や洗濯といった家事も一人でできるようになってきた」。特に自炊するようになると食生活にも気を配るようになったとか。「外食が増えるとどうしても野菜が不足しがちなので、自炊するときは意識的に取るようにしている」と話す。そして何より、家事をするようになって「改めて妻の大変さ、ありがたさがよく分かるようになったのが最大の変化」だと笑う。

【略歴】

 よしだ・やすのり 1991年日本紡績検査協会(現・ボーケン品質評価機構)入所。2009年近畿事業所長、11年東部事業所長、19年6月から理事長兼最高経営責任者