秋季総合特集Ⅴ(10)/Topインタビュー/カケンテストセンター 理事長 眞鍋 隆 氏/環境やサステなど取り組み深化/ベトナムに独自試験室開設
2024年10月25日 (金曜日)
カケンテストセンター(カケン)は、サステイナビリティーへの対応を意識する企業を積極的にサポートする。製品のライフサイクルを通じて環境への影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)の算定・支援や人権監査などのメニューを用意。眞鍋隆理事長は「繊維産業のサステ加速をリードする意気込みで取り組む」と話す。
――この数年間で変化したことは。
大きく四つの変化が起こったと考えています。一つ目は、地球環境問題やサステイナビリティーに対する企業、消費者の意識の高まりであり、二つ目は、あらゆるモノのコストが増大していること。三つ目は、繊維企業における海外展開のやり方です。最後が、人材の確保が難しくなったことです。
環境意識の変化を詳しく言うと、2020年10月の「カーボンニュートラル宣言」から4年しかたっていませんが、極めて当たり前になりました。変化のスピードが速くなる中、何がどのように変化するかを見極め、自身も変化していかなければ生き残ることはできないのではないでしょうか。
――これからどう変化しますか。
まずカケンとしても環境やサステの取り組みを深化しています。例えば、23年にサステ推進のために立ち上げた組織をサステナビリティ経営推進部へと発展しました。関連展示会への出展、サステナブル経営推進機構(SuMPO)と連携による共同セミナーの開催などを行っています。
展示会などで話を聞くと、「LCAや人権の重要性は理解できるが、どのように取り組むべきか分からない」といった声が多いです。カケンはLCAに関するコンサルティングや算定・支援を行い、人権に関する監査にも対応しています。業界や企業のサステ推進をリードするという気概を持って取り組みます。
――そのほかの変化への対応は。
コスト増に対しては、原価計算や採算性、効率化に関して従来以上に精緻に取り組んでいます。ITを駆使した業務改革、デジタル技術で企業を変革するDXを駆使した効率化などを進めます。また、繊維以外の業種とのビジネスなどで活動領域を拡大し、スケールメリットを発揮していきたいと考えています。
海外展開の変化では、繊維企業の動きをしっかりと注視し、追い掛けていきます。ASEAN地域の需要を取り込むほか、各国・地域の規格への対応も強化しています。人材確保への対応も不可欠です。個々の職員の力がカケンの強みですので、働きやすい、魅力のある職場を作ります。
採用面も強化しています。学生の数も少なくなっていますので、競争力を付ける必要もあります。その一環としてリクルートチームを発足し、大学に広報活動を行っています。われわれは検査機関ですが、繊維が魅力のある世界だと伝えていきたいと思っています。手応えはあります。
――事業に話を移すと、現在の経営環境は。
日本国内は厳しいといわれていますが、グローバルでは繊維産業は成長を続けています。特に海外は、人口ボーナスが続いている国があり、成長の余地がまだまだ残っています。そうした観点から見てもカケンの事業を取り巻く環境は決して悪くはありません。
24年度上半期(4~9月)の業績も順調で、前年同期の数字を上回る見通しです。中国の上海科懇検験服務がけん引しているほか、国内も順調です。遮熱性などの気候変動を反映した試験が増えているほか、有害物質の分析試験、有害物質に対する防護性試験なども注目を集めています。
海外の法規制を知りたいという要望も増えてきました。東南アジア諸国や欧米、インドなどの12カ国の細かい法規制に対応していますが、一人一人の職員が誠実に対応して信頼を得ている結果が要望増につながっていると認識しています。
――下半期以降の基本方針は。
四つの変化への対応を図ります。その中で海外ではベトナムに独自の試験室(子会社)「MTVカケンベトナム」を今月に開設しました。スタッフ40人規模でスタートを切りましたが、数カ月後に60人体制にしたいと考えています。
〈自身の変化を感じた時/野球大会での出来事に〉
眞鍋さんは「身体面で変化を感じた」と話す。先日開催されたニット健保の野球大会でのこと。カケンチームの応援に駆け付けた眞鍋さんは球拾いを買って出る。その際、ふとした瞬間に肉離れが起きたと言う。スポーツが好きで普段から体を動かすことが多く、「久しぶりにバスケットボールをプレーしようと思っていた矢先」の出来事に、「激しいスポーツではなく、散歩や低山登りに切り替えるべきかと考えさせられた」と語る。
【略歴】
まなべ・たかし 2003年経済産業省化学課長、05年NEDO総務部長、08年産業技術総合研究所理事、09年経済産業省大臣官房審議官、10年全国中小企業団体中央会専務理事、16年タクマ常務執行役員などを経て、23年10月カケンテストセンター理事長就任