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バングラデシュの縫製企業/日本市場開拓に力/脱中国の受け皿めざす

2024年10月25日 (金曜日)

 バングラデシュの縫製企業が、日本市場の開拓に力を入れている。日本企業の中国生産離れの受け皿として、需要の取り込みを目指す。7月中旬~8月に起きた政変で縫製工場の稼働が一時停止するなど混乱したが、今はほぼ“平常運転”と言う。縫製品の主な輸出先である欧米以外との取引も増やし、リスク分散を進める狙いもある。(相模 活)

 チームマニュファクチャリングはバングラデシュに6工場を保有する。欧州のファストファッション向けアイテムを縫製。売上高の9割が欧州向けで、日本向けは1割に満たない。大阪に営業事務所を構え日本市場の拡大を狙っている。

 同社は生地の調達力で定評を得ている。また欧州企業との取引が多いため、環境や人権に配慮した生産をしていると証明する国際基準の認証を複数取得。環境配慮素材の調達にも即応できる。

 こうした強みを軸に日本市場での事業拡大を目指すが、「決して容易ではない」と担当者。「加工料金の低さや納期の厳守、生産現場における品質管理体制の確保など参入するには厳しいマーケット」と実感を語る。「欧州企業も要求は多いが、ある程度満足できる加工料金で取引ができているので不満は少ない」と言う。

 なぜ日本市場の開拓に挑むのか。担当者は「厳しい品質が要求される日本企業と取引することで会社の信用度が高まる」と話す。

 コモダガーメンツはカットソーやニット製品のほか、デニム製品、マウンテンパーカと幅広いアイテムを縫製する。バングラデシュに2工場を展開。取引先は半分が日本、もう半分が欧州だ。リスク分散の観点から取引先国が偏らないようにしている。日本向けはファストファッションが中心で、欧州向けはやや高価格帯のマウンテンパーカが多い。

 日本との取引について、担当者は「基本的に中国の縫製工場より安い加工料金でなければ受注できない」と指摘。それでもメリットは大きいと言う。「日本は人とのつながりを重視するので長く取引できる」。一方で、「欧州は大ロット受注が魅力だが、加工料金などの条件で折り合いが付かない場合、すぐに契約を切られる」と肩をすくめる。

 競合の中国企業については「職人の技術力は断然中国の方が高い」と認め、「高級品をバングラデシュで作るのはまだ難しい」と渋い表情。「今、中国に勝てるのは豊富な労働力と人件費の安さ」と続ける。

 アドロイトリンカーズもバングラデシュに生産拠点を持ちカットソーやニット製品のほか、デニムパンツなど幅広い製品の縫製を手掛ける。ドイツなど欧州企業と取引。日本企業との取引はないが、チャンスをうかがっている。

 今月中旬に東京で開催されたアパレル関連展示会に出展し、競争力のある加工料金と高い品質管理体制をアピールした。

 日本企業の脱中国依存の流れが進む中、モハンマド・サラウディンCEOは「その受け皿受注を取り込むチャンス」と意気込む。今後、日本に営業事務所を設ける計画もあり、日本市場に高い期待を寄せている。