秋季総合特集Ⅳ(13)/Topインタビュー/コスモテキスタイル 社長 岡田 泰紀 氏/全社一丸で中計策定/似て非なる事業を融合

2024年10月24日 (木曜日)

 コスモテキスタイル(大阪市中央区)には切り売り・資材向け、アパレル向けという2種類の生地販売事業がある。この融合を試みる作業が始まっている。今期(2025年3月期)からは同社初の中期経営計画も策定し、人への投資を中心に、人生に彩りをもたらすモノ・コトを提供する会社を目指す。就任2年を経た岡田泰紀社長に考えを聞いた。

――この数年で業界、あるいは会社が変化したこととは何でしょうか。

 まだ2年しか社長を務めていないので以前と比較することはできませんが、今回当社としては初めて中期経営計画を策定しました。期間は今期(2025年3月期)途中からの3カ年半です。タイトルは「世の中に新しい幕開けを提供できる会社へ」としました。人生に彩りをもたらすモノ・コトを提供する一段とステップアップした会社を目指します。

 策定に先立って全社員から「3年後のありたい姿」の思いを聴取したのですが、全社員から熱く建設的な提案、忖度(そんたく)のない貴重な意見を聞くことができました。

 これからの繊維業界は人への投資にかかっています。多層的な声が織りなす対話的関係、すなわちポリフォニーによって、より高みの段階へと向かっていく会社を実現すべく、社員たちの内に秘めた熱い思いを形にしていきたいと考えています。

――人への投資とはどのような意味でしょうか。

 当社としては、さまざまな経験を積んでもらい、業界や異業種を含めた他社と混じり合いながら、成長を促すというイメージを持っています。人が宝ですから、実践していきます。

――これから変えていくこととしては何が挙がりますか。

 当社には切り売り・資材市場向け生地販売と、アパレル市場向け生地販売という二つの事業があります。似て非なるものとして認識される両者ですが、とはいえ同じ繊維、しかも生地です。この相互関係を作っていきたい。市場の違いや商品の違いはあるのですが、視点を少し変えて融合を試みたいのです。それぞれの顧客も新しい何かを求めています。既に一部で部署異動も実施したのですが、早速成果を出してくれています。

 また、それぞれの事業の若手・中堅社員でバーチャルな組織も作りました。いずれも兼務ですし大変だと思うのですが、熱心にやり取りしてくれていますので、来期には何らかの形にできればと思っています。

――近年、展示会への出展にも積極的です。

 韓国の「プレビューインソウル」や中国の「インターテキスタイル上海」に出展し、私も出張しました。改めてアジアの勢いを感じましたし、生活やビジネスでもデジタル技術が想像以上に浸透しており、日本のデジタル化の遅れを痛感しました。これからはインバウンド需要含め、いかにアジアの中間層を取り込めるかが勝負の鍵。当社でも、システム面の整備による在庫の可視化などデジタル技術で企業を変革するDX化に力を入れていきます。今期からIT推進部を総務部から独立させたのもこの考えの一環です。

 インターテキスタイル上海では当社の生地が「ベストマーケットアプリケーション賞」に選出されました。当社は17年から同展のジャパンパビリオンに出展していますが受賞は初で励みになります。

 当社のアパレル向け生地は元々綿素材のボトム・アウター向けを得意としており、自社で企画し備蓄もしていましたが、ここ数年は合繊にも領域を広げています。受賞商品も当社の強みである綿強撚素材のバリエーションを増やしていく中で、合繊でも綿同様に強撚を軸とした商品開発を進めてきました。重要顧客からも喜びの声を直接聞くことができましたし、社員の奮闘を誇らしく感じました。

――上半期(24年4~9月)はいかがでしたか。

 前年同期比増収微増益です。切り売り・資材向け、アパレル向けともに計画を達成しました。物流などの諸経費を見直したのが増益要因です。ただし、コスト高に起因した価格改定はあまり進みませんでした。下半期への持ち越し課題です。

〈自身の変化を感じた時/ポリフォニー小説を理解〉

 ドストエフスキーの名著「カラマーゾフの兄弟」を半世紀ぶりに再読中という岡田さん。当時は全く理解できなかったポリフォニー小説(融合しない意識や声が高度な統一を実現していく構造)を、さまざまな人生経験を積んだことで理解できるようになった自身の変化を実感。と同時に、先の見えないVUCA(ブーカ)の時代だからこそ、勇気を持って前向きな目標を掲げ、「今を生き抜いていくことが何よりも大切だと気付かされた」と言う。

【略歴】

 おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年ロシア・モスクワ支店次長、94年繊維部製品室長、2009年関西支社業務部長、15年関西支社副支社長を経て16年に給食受託業、メフォス取締役、18年同社社長。22年6月20日付で退任し、7月1日からコスモテキスタイル社長