繊維ニュース

東レ 改善達成へ出口見えた

2024年10月17日 (木曜日)

 東レの沓澤徹専務執行役員繊維事業本部長は、全社で取り組む「特定事業・会社の収益改善プロジェクト」(通称ダーウィンプロジェクト)の対象であるポリエステル短繊維事業と、ポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)事業に関して「特にポリエステル短繊維は改善への出口が見えてきた」と改善が順調に進捗(しんちょく)しているとの認識を示す。

また、「高度化・高付加価値化競争を勝ち抜くしかない」と指摘し、独自の複合紡糸技術などを全面展開する考えを強調する。

 ポリエステル短繊維とPPSBは世界的な需給バランス失調や中国メーカーなどとの競争激化で採算悪化が続いている。このためダーウィンプロジェクトでは生産体制の再整備に着手し、収益改善に取り組む。

 現在、ポリエステル短繊維は愛媛工場(愛媛県松前町)、インドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)、韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、マレーシアのペンファイバー(PFR)で生産している。このうち単品大量生産型設備である連続重合・直接紡糸(連重)設備は愛媛工場とITSに各1系列、TAKに5系列あるが、既にTAKの1系列は停止した。さらに2025年度(26年3月期)に愛媛工場の連重設備も停止することを決めた。

 沓澤専務執行役員は「生産体制の再編で収益改善実現に向けた出口が見えている」と手応えを示す。連重停止後の愛媛工場はバッチ式紡糸による生産となるが「中国子会社の東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)がバッチ式紡糸による差別化わた生産に特化し、高収益体質を確立している。これが成功例」と指摘する。

 一方、PPSBは、もう少し時間がかかるとの見通しを示す。現在、韓国のTAK、中国の東麗高新聚化〈南通〉と東麗高新聚化〈佛山〉、インドネシアのトーレ・ポリテック・ジャカルタ、インドのトーレ・インダストリ―ズ〈インディア〉で生産しているが、このうちインドネシアとインドは現地需要の取り込みなどで改善が進んだ。中国も生産品種や仕向け先の組み合わせといった工夫で稼働も維持できるとする。このため「問題は韓国。需要全体のバランスを見ながら、止めるところは止めてリエンジニアリングを進める」方針だ。

 また、繊維事業は今後も高度化・高付加価値化競争が一段と激しくなるとみており、生き残りに向けて独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」の活用を進める。衣料用長繊維での活用が先行しているが、今後は短繊維や産業資材用途にも導入するなど全面展開を進める。