ごえんぼう

2024年10月16日 (水曜日)

 25年ほど前に、9時間27分の長編ドキュメンタリーを映画館で見たことがある。ナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺をテーマにした『ショア』(クロード・ランズマン監督)▼感傷的な音楽や、当時の映像・写真、ナレーションを用いず、ナチスの収容所から生還したユダヤ人や元ナチス親衛隊員へのインタビューによる証言のみで構成。インタビューに答える人の沈黙や表情からも、約600万人のユダヤ人が犠牲となった大虐殺が浮かび上がる▼そのユダヤ人の国家、イスラエルが、パレスチナ自治区ガザ地区を攻撃し、死者が4万人を超えた。イスラエルによる集団虐殺との非難も出ている▼「戦争は畢竟(ひっきょう)、偏狭で独善的な民主主義から発する。自分の国と民族さえ居心地よく暮らせれば他の国などどうなってもいいという発想である」(森村誠一著『新版悪魔の飽食』)。自らが受けた悲劇を自ら繰り返していないだろうか。