備蓄型生地商社/直近業績伸び悩む/アパレル生産抑制の影響不可避

2024年10月09日 (水曜日)

 SDGs(持続可能な開発目標)の浸透などにより作り方、売り方が変化する中、各備蓄型生地商社の直近業績も伸び悩む。コスト高を受けた価格改定でなんとか売り上げを維持しているケースもあるが、生地出荷数量の減少はほぼ共通の傾向になっており、シェア拡大を除けば今後も数量面での伸びは期待できないという声が支配的だ。(吉田武史)

 昨年後半までは多くの生地商社が、新型コロナウイルス禍明けのリベンジ消費、アパレルによる作り込みを背景に業績を伸ばしたが、今年はこの市況は変化している。昨年冬の暖冬による市場ムードの低迷や、「作り過ぎは悪」という価値観の浸透が主な要因だ。加工場など国内モノ作りの納期遅れによる生地販売機会の損失という例も出ている。

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)の今期(2025年1月期)単体のここまでは、前年同期比増収増益で推移している。ただ、国内向け生地販売は減っており、海外市場向けの拡大で補完する格好。「作り過ぎを避ける傾向が強まり、調達の合理化が進んでいる」とみており、中国やベトナムなど縫製地で生地を調達する流れが強まっていると指摘する。

 柴屋(同中央区)の今期(25年1月期)2~8月単体売上高は前年同期比4%増えたが、ここ数年と比べると伸び率は鈍化。数量と利益面でも苦戦を強いられている。新規顧客開拓でなんとか増収を維持するが、発注ロットの小口化は顕著で、「アパレルが生地発注量を減らしていることを実感している」。

 宇仁繊維(同)の24年8月期単体は前期比1・5%の減収で、営業利益も減った。前の期に輸出が大きく拡大していたことの反動もあるが、「国内市況が悪すぎる」のが減収要因。価格改定を実施し、単価の高い生地が売れている傾向から、数量の減り幅はもっと大きいと言う。

 サンウェル(同)の上半期(24年2~7月)単体も前年同期比減収減益。減少幅は大きくはないが、数量の減りはより顕著という。

 北高(同)の上半期(24年2~7月)単体は前年同期比10%増収と、業界内では例外的な結果だった。レディース、メンズ、資材・切り売りのいずれも伸びた。「プリント市況が悪い中で販売面では奮闘できている」と総括するが、営業利益はコスト高などにより減っており、在庫も増えていると言う。

 今後については「国内では数量面での拡大は望めない」でほぼ一致しており、各社は成長戦略を海外市場の開拓・深耕で描いている。

 納期遅れが顕在化する国内生産を勘案し、より強固なサプライチェーンを構築していくとの声も上がるが、一方で生地生産地の海外シフトも進みそうだ。