インドネシア日系繊維企業/現地で新たな価値を/“地産地消”や海外市場模索

2024年10月04日 (金曜日)

 インドネシアの日系繊維企業は、現地で新たな価値の創出を急いでいる。これまでも繊維メーカーの間で〝脱・汎用品市場〟を掲げ、高付加価値素材を開発する動きはあった。その流れが加速し、最近では素材から縫製品まで一貫で作り、現地で売る〝地産地消〟や海外グループ企業の連携を強め、日本以外の海外市場に売り先を求める動きも盛んになっている。(橋本 学)

 GDP成長率5%台が続くインドネシアだが、繊維業界を取り巻く環境は極めて厳しい。背景には日系繊維企業から“投げ売り”や“捨て売り”とも評される、安価な中国製繊維製品の流入がある。中国内で売り先を失ったわた、糸、生地、繊維製品が東南アジア市場へとなだれ込み、現地企業の業容を圧迫している。

 インドネシアの全国労働組合総連合によると、年初から6月までに少なくとも繊維メーカー10社が大規模なリストラを実施し、約1万3800人が解雇された。今夏には現地の大手繊維企業6社が受注減から相次いで工場閉鎖を決め、延べ2万人が失業するという衝撃的なニュースも報じられている。

 現地の日系繊維企業はこうした状況下で、安価な製品と明確な差異がある商材開発と日本以外の売り先開拓に力を入れている。現地で高付加価値素材を開発し、現地や海外に販路を求める動きが年々、加速している。

 東レインドネシアグループは合成繊維を主体とする糸、わた、生地の生産拠点と、協力関係にある縫製拠点を持つ。同社は現状について「安価品の流入で競合他社も含め厳しい状況で先行きは不透明」と評価し「地産地消のニーズは出てきている。ニッチな商材でASEAN域での拡販に取り組み、東レグループ全体で連携しグローバルに売り先を広げる」方針を示す。

 ユニチカトレーディングインドネシアは、現地と日本向けに、ユニフォームやスポーツ衣料向けの生地売りを主体とした事業を展開するが、今夏、インドネシア国内で素材から縫製品までを一貫して作るサプライチェーンを確立した。ユニフォーム、帽子、パンツ、Tシャツなどの製造、今後ユニチカ独自の多彩な機能糸を使いながら、インドネシア国内外で最終製品OEMの提案に力を入れる。

 シキボウグループの紡織加工会社、メルテックスは、親会社が主導するグローバル戦略の中で、日本、中国、台湾、ベトナム、タイにあるグループ会社との連携を強め、新たな売り先開拓に力を入れる。近年、リサイクル繊維やオーガニックコットン、フェアトレード綿糸といった国際認証も取得しており、欧米など海外企業への素材供給ができる体制が整いつつある。