ジーンズ別冊24秋冬(10)/デニム素材や副資材、薬剤メーカーの提案

2024年09月30日 (月曜日)

 ジーンズなどデニム製品にオーガニックコットンやリサイクル素材を採用する動きが一段と広がっている。デニム加工時の水使用量の削減も進む。脱炭素の流れの中で、デニム業界も環境に配慮した取り組みが一層重要になる。こうしたニーズに応える素材や副資材、薬剤メーカーの動向を探った。

〈YKK/有害物質100%除去のめっき〉

 YKKが開発しためっき技術「アクロプレーティング」は、従来の電気めっきで使用していた薬品を一切扱わず、シアン、クロム、セレンなどの有害物質を100%除去した。

 環境負荷の低減と併せ、作業環境の改善も実現させた。YKKはそのブラス(真ちゅう)材向けの新しい表面処理技術で、日本にとどまらず複数の国・地域の特許を取得している。

 製造工程から有害物質を排除する以外にも、環境負荷低減の効果をもたらす。黒部事業所で生産するスライダー「NH3」を対象に従来のめっきと比較すると、排出される温室効果ガスを96%、水使用量を66%、消費電力を69%削減する。第三者機関のライフサイクルアセスメント調査においても、環境負荷低減への利点があるとの結果を得た。

 統合報告書「This is YKK2024」によると、23年度は、ブラス材スライダーのうちアクロプレーティング技術を使用した商品の販売数量割合が25%に達し、22年度から7ポイントの上昇となった。順調に導入実績を伸ばすことで、環境に配慮した技術の活用を広げている。

〈ユケンケミカル/環境配慮の薬剤を訴求〉

 加工薬剤製造卸のユケンケミカル(愛媛県今治市)は、軽石を使わずストーンウオッシュと同等のアタリ感を出せる薬剤「リアルストーンEW8」や還元系脱色剤「ブリーチカット」などの環境に配慮した加工薬剤を訴求する。

 リアルストーンEW8は、投入するだけでストーンウオッシュと同等の加工ができるため、残留軽石の除去や廃棄の必要がない。従来の薬剤で加工する時に必要だった燃料や水の削減にもつながる。

 硫化染料の代替として中白染めができる反応染料「リアクティブKR染料」や硫化染めに近い色落ちを表現できる現在開発中の「カラーブリーチ」と組み合わせた加工も可能だ。

 塩素系脱色剤と比べて、メリハリのある色落ちを表現できる還元系脱色剤「ブリーチカット」では、50~60℃の中温域で加工を可能にする開発を進めている。

 これまで80~90℃で加工する必要があった還元系脱色加工だが、開発が実現すれば二酸化炭素の排出量を減らし、電気や重油の消費量を削減できる。

〈レンチング/ブランドテーマ刷新〉

 レンチングはこのほど、再生セルロース繊維「テンセル」のブランドテーマを刷新した。新たなブランドテーマは「ネイチャー。フューチャー。アス。」(自然。未来。私たち。)。8月に中国・上海で開かれた世界最大級の服地見本市「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス2024秋冬」で発表した。

 新ブランドアイデンティティーは、共有される地球の未来を守るために繊維業界の変革を促す役割を担うことに重点を置き、イノベーションの推進とコラボレーションの強化を目指すテンセルの精神を体現する。環境に配慮した資源効率の良い繊維ソリューションを提供するという継続的な取り組みで、進化する繊維業界をリードする意欲を示した。

 同社はこれまでも木材パルプを原料とする通常のテンセル以外に、オレンジピールや廃棄綿布を原料とするタイプの開発に成功するなど、繊維の資源循環に力を入れてきた。また、テンセルの鑑別技術も実現し、トレーサビリティーが確立した繊維原料としての透明性も高く評価されている。

 同社は、デニムもテンセルの重要用途の一つに位置付けている。新たなブランドテーマの下、デニム分野でも引き続きテンセルによるイノベーションとコラボに力を入れる。

〈デニム使いの室内ドア/神谷コーポレーション湘南〉

 室内ドアの専門メーカー、神谷コーポレーション湘南(神奈川県伊勢原市)はこのほど、デニム製造国内最大手のカイハラ(広島県福山市)のデニム生地を採用した室内ドア「インディゴ」の販売を始めた。

 神谷コーポレーション湘南は今年1月に岡山市内に無人ショールームを開設した。インディゴはこれに併せて開発。当初は特別展示のみの予定だったが、来場客から想定以上に好評で、販売要望が多かったことから商品化を決めた。

 カイハラで50年以上も定番となっている、ざらつきの強い風合いが特徴の濃紺デニムを、高さが天井まであり枠が見えない同社独自のドアブランド「フルハイトドア」の前面に使用した。

 日常で擦れる部分はその家ごとに異なってくるため、その家特有のデニムの経年変化を自宅のドアで楽しむことができる。扉にはジーンズをイメージした本革製のパッチと赤タブに加え、ビンテージ調の真ちゅうハンドルが付く。

 扉幅は900ミリからで、高さは2700ミリまでとなる。価格は74万8千円から。