ジーンズ別冊24秋冬(3)/デニムブーム再燃、こだわりの製品続々

2024年09月30日 (月曜日)

 デニム商品の人気が続いている。各社はセルビッヂデニムやはき心地を高めた生地、リサイクル素材を採用した製品を打ち出すなどして差別化を図る。デニムジャケットなどジーンズ以外のデニム商材も人気が上昇しており、品番数を増やして需要取り込みにつなげる。さらにインバウンド消費も旺盛で追い風が吹く。リーバイス、エドウイン、アダストリアの商品展開や戦略を紹介する。

〈リーバイス/欧米市場で日本製に支持〉

 米ブランド「リーバイス」は、プレミアムライン「リーバイス・メイド&クラフテッド(LMC)」で投入した日本製ジーンズ、デニムジャケットなどを定番化する。24秋冬シーズンは品番数を増やすほか、カラーや加工アイテムも拡充。既に欧米などグローバルで販売したジーンズも好評で、日本国内ではインバウンド客を軸に支持を集めている。

 売上高や売り上げ本数は非公表としたが「日本製は国内外で好調だ。品質と価値の両面で厚い信頼がある」(リーバイ・ストラウスジャパン広報担当)と説明する。カイハラ(広島県福山市)が生産した高品質デニム生地を採用したほか、洗い加工はサーブ(神奈川県平塚市)が担当。デニム生地はビンテージのシャトル織機で織られたセルビッヂデニムを使っている。価格はジーンズ2万円台後半~5万円台、デニムジャケット3万円台後半。

 リーバイスのレッドタブ(通常ライン)では、デニム商材で固めた「デニム・オン・デニム」のスタイルを提案する。婦人用ではデニム生地のセットアップに加え、同素材のトレンチコート、ブラウス、ロングスカートなど「ブルーを重ねて楽しんでほしい」(広報担当)とする。

 昨年からデニム商材のセットアップが好調に推移し、婦人用ではボヘミアンやワークテイストを盛り込む。1990年と70年代のモチーフをミックスしながら都会的なデニムスタイルを訴求する。ルーズフィットも豊富にそろえる。

 紳士用ジーンズでは、90年代のビンテージフィットが主流だ。ワイドやルーズフィットなどゆったりとしたシルエットで構成。紳士用でもワークウエアのテーマを取り込んだコーデュロイ素材のセットアップ、オーバーオールを打ち出す。婦人、紳士ともにリラックスしたシルエットに仕上げた。

〈エドウイン/刷新した「503」が好調〉

 エドウインが展開する国産ジーンズ「503」の販売が好調だ。2022年9月にシルエットやデニム生地の生産方法などを刷新し、以降は計画比20%増の売上高となった。人気のストレッチ素材を混紡したタイプに加え、今秋にはコットン100%の本格派ジーンズを投入した。

 当初からストレッチ素材の混紡ジーンズが好評だった一方、取引先では本物志向のジーンズが求められているとの意見を受け、コットン100%のジーンズを新たに開発。デニム生地は、カイハラ(広島県福山市)と共同開発した。緯糸は裁断片をベースとした反毛綿を混紡した糸を使用。経糸は2種類のむら糸をランダムに配列した。再生デニム生地だが、独特の粗野感が特徴。染色もカイハラの水使用量、化学薬品の使用量を削減したインディゴ100%のロープ染色を採用した。

 今年5月からトライアル販売を実施し、売り上げも好調なことから本格展開に至った。洗い加工を駆使した表面感はラギッド(無骨)なもので、定番のストレートシルエットが中心になる。価格は1万4300円。洗い加工は、エドウイン最大規模の自社工場「ジーンズM.C.D」(秋田市)で行った。

 ストレッチ素材を混紡したデニム生地は、クラボウが展開する裁断片などを開繊、反毛技術で再資源化する「ループラス」を採用。はかなくなったジーンズを消費者から回収し、リサイクルしている。継続することでループラスの習熟度も向上し、生地も安定供給されている。一昨年から続くジーンズの古着ブームも追い風になっている。東京・原宿エリアにあるエドウインの路面店(渋谷区)では、欧米やアジアの訪日客が国産ジーンズを求めて多数来店している。売り上げの約8割がインバウンド客で占められる日も多いと言う。

〈アダストリア「アパートバイローリーズ」/再生コットン100%を訴求〉

 アダストリアが展開する婦人服ブランド「アパートバイローリーズ」は、ジーンズブランドのプロデューサーとして活躍するドクターデニムホンザワの本澤裕治代表と協業したデニム商品の販売を始めた。米国のデニム生地大手、コーンデニム社のリサイクルコットン100%の12.5オンスデニムを採用しているのが特徴。環境意識の高まりに対応する。

 一般的なコットンは、原料となる綿花の栽培時や紡績時に多くの二酸化炭素(CO2)を排出する。紡績や製造の工程で発生する裁断くずや落ちわたを再利用したリサイクルコットンを使えば、生産工程で発生するCO2排出量を減らせるほか、水資源の節約にもつながる。

 回収や仕分けなど手間をかけて再生させたデニム生地の証として、商品タグや織りネームにコーンデニム社の認証マークを付けている。同社製のリサイクルコットン100%の12.5オンスデニムを用いた商品は、世界初と言う。

 ストレートレッグのジーンズ(1万1500円)は内側のラインをカーブさせ、足がすっきり見えるように工夫。バックポケットは高めの位置に付けて、ヒップラインも奇麗に見えるようにした。ジャンパースカート(1万6500円)はウエストを程よく絞り、Iラインの女性らしいシルエットに仕上げた。コクーンシルエットのジーンズやデニムジャケットもそろえる。

 いずれの商品も、ブルーとブラックの2色を用意。全国のアパートバイローリーズの店舗や公式オンラインストアで取り扱う。

 協業した本澤氏は「今回開発したリサイクルコットン100%のデニム商品は強度や耐久性も確保できている」と指摘し、「環境負荷低減への対応は必須だ」と強調する。