特集 アジアの繊維産業(7)/―ボーケン品質評価機構―試験から品質支援サービスまで

2024年09月27日 (金曜日)

 ボーケン品質評価機構は、従来型の納品前検査を中心とした検査機関から、企業の品質、環境、人権などへの取り組みを共同で推進する“品質パートナー”への転換を進めている。海外での試験業務などを担う海外事業本部と海外法人・試験センターも役割を大きく拡大させており、対応試験の拡充に加えて企業のサプライチェーン全体をサポートする品質支援サービスまで担う。そのための組織戦略や人材育成にも力を入れてきた。

〈統括責任者を設置/連携でアジア全域カバー〉

 ボーケンは現在、中国に現地法人として上海愛麗紡織技術検験、常州紡検検験、青島紡検検験があり、現地や海外の検査機関との業務提携によって中国の広州と杭州、台湾、韓国、ベトナムのホーチミン、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタに試験センターを展開する。カンボジアのプノンペンには事務所もあり、アジア・ASEAN全域をカバーする体制となっている。

 充実した基盤を生かし、通常の納品前品質試験や化学分析だけでなく、品質支援事業本部と連携して工場での品質管理監査(工場QC監査)やCSR監査までサポートするなど業務内容を拡大している。また、対象アイテムも繊維だけでなく地域ごとのニーズに合わせて服飾雑貨や日用品、家具、靴、かばん、産業資材、食品衛生品関連にまで拡大した。

 環境関連ではペットボトル由来リサイクルポリエステルの鑑別や生分解性試験などへの対応を進めており、化学分析も世界的な規制強化を背景に有機フッ素加工物(PFAS)やビスフェノールA(BPA)などの検出ニーズが高まった。

 こうした中、「アジアの重要性が高まっている。これまで特に海外の試験センターは海外の検査機関との業務提携で運営してきたが、業務内容やアイテムが拡大する中で、ボーケン独自のサービスを海外で展開するために組織戦略を強化する」と吉岡陽一郎理事・海外事業本部長は強調する。その一環として中国統括責任者とアジア統括責任者を置いた。統括責任者の下で各拠点の情報を集約・共有し、企業のニーズに各拠点が横串連携して対応する体制を構築する。

 また、業務内容やアイテムの拡大に合わせて、提携先との契約内容の拡大も進め、さらなるサービスの拡充に取り組む。

〈ベトナム/対象アイテムが拡大〉

 ベトナムのホーチミン試験センターは開設から11年を経て順調に拡大している。新型コロナウイルス禍以降は、繊維だけでなく家具試験の成長が著しい。繊維以外の消費財の試験依頼が増加しているため、家具のほか、キッチン用品、玩具、靴、キャリーケースなどの試験への対応力を高める。

 繊維についても現地調達される素材が増えており、従来は日本企業が主導していた品質管理機能も現地企業に移管される傾向が強まった。このため生産現場からの幅広い品質管理の要望に応えるために検査項目の拡充や品質支援を強化する。

 また、国家認証を受けた現地機関と提携して繊維製品のベトナム内販のための認証・登録制度(CRマーク)への対応も実施している。

〈工場QC監査からコンサルも/中国・上海〉

 中国は上海を起点に現地企業がボーケンに工場QC(品質管理)監査を依頼するケースが増加した。監査結果だけでなく、改善指導や改善方法の提案・継続サポートなどコンサルティングまでの要望が多い。

 非繊維分野の工場QC監査の依頼も多く、既に傘、フライパン、スポンジ、マスク、樹脂製まな板、ジッパーバッグなどの実績がある。引き続き品質支援事業本部とも連携しながら、サポート体制を強化する。

 また、現地の大手抗菌業界団体である全国衛生産業企業管理協会・抗菌産業分会(CIAA)の推薦試験室として認定ラボとなっており2023年には「抗菌検測・優秀実験室」として表彰された。

 高級工程士の資格を持つ職員も在籍しており、中国の標準化にも参画している。24年は色泣き試験のGB標準化や、ボーケン法を基にした汗染み防止性試験のFZ標準(繊維製品の製品標準)の作成に取り組んでいる。

 機能性試験のニーズの高まりを受けて、中国の各拠点で対応を強化している。吸水速乾、保温性に加えて常州試験センターでは吸湿発熱、帯電性、高温高湿度環境処理(ジャングル試験)を導入し、青島試験センターでは防汚性試験の導入を進めた。

〈独自試験の評価高まる/台湾〉

 台湾試験センターは、高付加価値素材の開発が盛んな地域特性を生かし、最近では防ダニ性試験や微生物試験に加え、ボーケンが製品特性に合わせて独自開発した機能性試験に引き合いが増加し、高い評価を得ている。昨年開発した持続冷感性試験への要望も多い。

 また、コロナ禍をきっかけに抗菌や抗ウイルス性試験の認知度も向上し、台湾試験センターを通じた日本への検査依頼も増加している。台湾系企業のASEAN進出が拡大する中で、台湾試験センターの紹介によって進出先のボーケン拠点へ依頼するケースも増えている。

 日本企業の台湾進出も増加している。現地販売に関するサポート体制を強化し、現地語表示置き換えサービスや規制有害物質の試験も増加した。繊維製品だけでなく日用品の現地販売に対するサポート体制を強化する。

〈タイ、インドネシア/生産拠点の移動に対応〉

 タイのバンコク試験センターは、生産拠点がカンボジアに移る流れを受け、カンボジアのプノンペン事務所での依頼受け付け・サンプル受け入れを拡大している。近年は製品検査や工場の環境管理としてホルマリン試験の需要が多い。また、ミャンマーからの依頼も増加が続く。このため今後もタイ周辺国(カンボジア、ミャンマー、ラオス)に対するサービスを拡充する。

 インドネシアのジャカルタ試験センターも、同国での生産地がスマラン地区など中部ジャワに移る傾向が強まっていることから、提携するSGSのスマラン試験センターに事務所を設立することを検討する。スマラン近郊の工場からの依頼を集荷し、ジャカルタ試験センターで試験を実施する体制構築を進める。