特集 アジアの繊維産業(6)/カケンテストセンター/アジアで高まる存在感/需要獲得へ新たな国・地域も

2024年09月27日 (金曜日)

 カケンテストセンターは、アジアでの存在感を高めている。新型コロナウイルス禍の影響から脱し、試験件数は全体として増加傾向を示す。2024年度後半(10月以降)は不透明感が漂うものの、試験・検査に、CSR監査や有害物質分析などを加え、着実に前進する。成長のための施策として、新たな国・地域の需要にも目を向ける。

 カケンテストセンターのアジア事業は、コロナ禍の影響がなくなり、おおむね堅調な推移を見せる。24年度上半期(24年4~9月)は試験件数が前年同期と比べてわずかながら増加した。「中国が順調」(国際部)であるほか、バングラデシュの政変の影響が小さかったことなども要因だ。

 中国には、上海科懇検験服務のほか、上海科懇南通分公司や青島試験室、大連試験室、寧波試験室などの拠点を持つ。この中でも良い動きを見せているのが無錫試験室で、23年度に拡充した靴試験が順調に推移している。

 また同試験室では短納期対応によって顧客を増やしており、納期短縮の取り組みは寧波など他の拠点にも広げる。

 ASEAN地域については、感染症拡大によるサプライチェーンの分断で一時期は中国からのシフトが進んだが、中国生産への再回帰の声もあって不透明感が強い。「どちらに動いていくのか、分からない部分はある」が、ベトナムなどは回復傾向にあり、着実に試験依頼は増えるとみる。

 そのベトナムでは、提携機関と連携して試験を行っていたが、ホーチミンに独自の試験室(子会社)「MTVカケンベトナム」を立ち上げる。人員は50人規模でスタートする予定。スタッフの教育は既に終えるなど、開所に向けて最終調整に入っている。

 タイは国内の試験依頼は増えていないが、ミャンマーの回復が見込める状況になってきた。グローバルに展開する企業は手を引いているが、日本向けを生産する企業はミャンマーでの生産を増やす流れにあり、需要を取り込む。

 インドは、問い合わせが増えているが、まだ試験依頼にはつながっていない。営業力を強化して、今後の成長に期待をかける。バングラデシュを含む南アジアは、継続強化を図っていく。

 24年度年間でも当初の計画数字の達成を目指す。海外での事業展開はカケンにとって欠かせない重要な取り組みとし、新たな国・地域の進出、需要を取り込んでいきたい考えだ。エチオピアやウズベキスタンなどに目を向けている顧客も存在するとし、カケンも中長期的な視点に立って調査・検討を進める。

〈上海科懇検験服務/顧客ニーズに応える〉

 上海科懇検験服務は、染色堅ろう度から物性、繊維鑑別、安全性、抗菌、各種機能性までさまざまな試験に対応できるのが大きな強みと言える。原田賢総経理は「ニーズがあれば分析などにも積極対応する」とし、PFAS(有機フッ素化合物)の分析試験などにも応じている。

 24年4~9月については、7月までは堅調な推移を見せ、9月は少しペースダウンしたが、上半期トータルの試験件数は前年を上回ることができると予想している。CSR監査も増加傾向にあり、中国拠点の中でも確かな存在感を示している。

 今後は対応力をさらに高める方針だ。GB規格(中国国家標準規格)やISO(国際標準化機構)への対応が可能な試験機も導入する。最近では摩耗試験機(GB規格対応)や酸化窒素ガス試験機などを導入した。

 地域も増やしている。新型コロナウイルス禍で一時途切れた杭州や紹興の企業への営業を復活しているほか、雲南省や重慶などにも足を運んでいる。雲南などはまだ調査・検討中としながらも需要の掘り起こしに期待をかける。

 上海科懇検験服務は、今年で30周年。設立当初のスタッフもベテランになり、新たな人材の確保・育成にも力を入れる。

〈バングラデシュ試験室/政変は成長に影響せず〉

 バングラデシュ試験室は、日本市場向けはもちろん、欧州向けや東アジア(韓国向け)など、さまざまな顧客、基準に対応できる柔軟性で数字を伸ばしている。ニヤズ・ラハマンマーケティングマネージャーは「毎月何らかの形で新たな取り組みを行っている」と話す。

 同試験室の2024年4~9月の状況は、試験件数は前年同期と比べて横ばいながら、売上高は伸びている。ラマダン明けのイード休暇の時期が年によって違うため、単純に比較はできないが、試験項目数や機能性試験の増加が売り上げ拡大につながっている。

 政変の影響もほとんどなかったようだ。反政府デモが激化した1週間ほどは休業を余儀なくされたが、鎮静化してからの回復は早かった。「7、8月の試験件数は減ることがなく、売上高は伸びた。現在はほぼ平時に戻っていると言える」とした。

 9月以降は同国への出張者が戻り、春夏向けの仕事も本格化する。新規の顧客も増えており、継続成長を図る。試験室はダッカだが、チッタゴンの需要も取りにいく。チッタゴンは、ダッカよりも賃金が安く、港に面しているため、繊維関連企業が増えている。

 今後は、人員や納期対応を強化し、「売上高や試験件数をさらに増やしたい」としている。