不織布新書24秋(13)

2024年09月25日 (水曜日)

〈用途別の不織布生産/ピークに比べ21.5%減/24年1~6月は微減だが〉

 日本の不織布生産の減少が止まらない。経済産業省の生産動態統計によると、2024年1~6月の不織布生産量は前年同期比1・1%減の13万3334トン。乾式不織布は0・2%減の11万6515トン、湿式不織布が7・0%減の1万6819トンとなった。この水準で推移すると、年間では26万6000トン強にとどまり、4年連続の減産になる可能性がある。

 経済産業省の生産動態統計は24年から乾式、湿式の製法以外の発表を止めたため、製法別は分からなくなった。ただ、用途別は公表しており、そこから傾向を探る。用途別の不織布生産量は24年1~6月、医療・衛生用を除き全て前年同期を下回った。

 医療・衛生用は新型コロナウイルス禍でのマスク特需が一巡し、大きく落ち込んだ。紙おむつや生理用品などの国内需要減など厳しい局面にある。それだけに生産増に違和感はあるが、前年同期比10・0%増の3万3028トンとなった。

 逆に回復傾向にあった車両用は自動車メーカーの不正問題に伴う生産休止の影響などから減産に転じ、前年同期比7・1%減の1万9103トンだった。

 半年の短期的な変化よりも、重要なのがピークであった17年と23年の比較だ。各用途は大きく落ち込んでいる。特に最大用途であった医療・衛生用は実に40・8%減と6万トン台を割り込み、生活関連用に最大用途の座を譲り渡す結果となった。その生活関連用がピークに比べて14・4%減にもかかわらずだ。

 一方で、落ち込みが少ないのが産業用。ピークに比べて3・1%減にとどまっている。衛生材料の需要が減少し、生活関連用も製品輸入が増加するだけに、もしかすると、すそ野が広い産業用がこれからの不織布を量的に支える構図になるかもしれない。

〈不織布輸出/盛り上がり欠く展開/1~6月は1%増ながら〉

 国内需要が落ち込む中で、円安も追い風に輸出に活路を見いだそうとするのは不織布企業も同じ。しかし、思いとは裏腹にいまひとつ盛り上がりに欠ける。2022年、23年と2年連続で不織布輸出は前年を下回る。24年1~6月は1・0%増の3万4205トンと増加に転じたが、ピークの21年(7万1243トン)に届きそうにない。

 23年の不織布輸出量は前年比2・9%減の6万9164トンだったが、長繊維製は10・6%減の2万5786トン、短繊維製は2・3%増の4万3378トンと明暗を分けた。22年から続く傾向だ。24年1~6月は長繊維製が4・4%増の1万2871トン、短繊維製が0・9%減の2万1334トンとなっている。

〈不織布輸入/内需不振で減少続く/長繊維は4年連続減確実〉

 不織布輸入の減少が続いている。財務省通関統計によると、2021年から3年連続の前年比マイナスで24年1~6月も1・6%減。輸入の減少は国内需要の落ち込みを表す。なぜなら国内生産も減少が続いているからだ。ただ、不織布ごとに違いがある。

 24年1~6月の不織布輸入量は長繊維製が前年同期比4・4%減の6万9274トン、短繊維製は2・4%増の5万2165トンだった。長繊維製は21年来減少が続く。主因は大半を占めるポリプロピレン製の落ち込み。23年は5・9%減の12万4067トンで、24年1~6月は3・6%減の5万9651トンとなった。これはスパンボンド不織布(SB)を中心に、紙おむつなど衛生材料向けの需要減とみられる。

 衛生材料向けのポリプロピレンSBは国内生産で補えない部分を日系が海外拠点からの輸入で補ってきた。しかし、内需そのものが落ち込む。衛生材料向けとみられる1平方㍍当たり25㌘未満品を見ると、東レが拠点を置く韓国からの輸入は22・4%減、同じく中国は7・2%減だった。ただ、三井化学と旭化成の合弁会社であるエムエー・ライフマテリアルズが拠点を持つタイからの輸入は10・1%増だった。

 一方、短繊維不織布は24年1~6月、2・4%増の5万2165トン。最も多いレーヨン短繊維製が5・8%増となったことが寄与する。レーヨン短繊維製はスパンレース不織布が多いとみられるが、この水準で推移すると過去最高の6万トン超えになる可能性がある。

〈価格に見合った用途重視/フタムラ化学〉

 フィルム、セロハンなど製造のフタムラ化学(名古屋市中村区)は、環境配慮型不織布「ネイチャーレース」の認知度向上に取り組む。その一環で国内外の展示会にも出展する。ネイチャーレースはイオン溶液でパルプを溶解しセルロース繊維を製造、水流交絡で不織布化するまでの一貫生産(月産100トン)。カセイソーダや二硫化炭素を使用せず、排水、排ガスも少ないのが特徴で、価格に見合った用途、需要家の開拓を重視する。

 フェースマスクやウエットワイパー、包材、緩衝材など向けで環境や従来にはない不織布である点が評価されており、一部販売も始めた。

 同社は湿式セルローススパンボンド不織布「太閤TCF」が主力。今上半期はフェースマスクや制汗シート向けが好調だったという。

〈再生技術と付加価値を追求/髙木化学研究所〉

 再生ポリエステル短繊維製造の髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は、独自技術で付加価値を高めた機能わたなどに力を入れる。70年以上培った加工技術を生かし、販売先の求める形状で少量多品種生産を行うなど、小回りを利かせた機動力を強みにする。

 自動車や輸送機器向けを中心に、必要な機能を付与したわたや不織布などを供給する。色別の生産に加えて消音性や、難燃性、抗菌性も付与できる。生産は片寄工場(同)で行い、現在は9割強の稼働率で推移している。新型コロナウイルス感染拡大とともに手芸関連の受注が増えたが、現在は落ち着いている。

 高木優州社長は「顧客の需要に独自の生産技術で応える。リサイクルや資源循環のサイクルにも対応を図る」とする。