不織布新書24秋(12)/ANEX2024/台湾初開催を振り返る―アジア最大の不織布展―

2024年09月25日 (水曜日)

 アジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2024」が5月22~24日、台湾・台北市の台北南港展示館1館で開催された。世界各国の不織布関連企業が集まるアジア最大の不織布展、ANEXに出展した日本企業を振り返る。

〈多種多彩な長短不織布〉

 東レは韓国子会社を主体に出展した。日系企業では最大スペースで、紙おむつなど衛生材料向けとポリエステルスパンボンド不織布(SB)を含めた産業資材向けを半々に展示する構成。衛材偏重からの脱却を図る方向性を示した。産業資材用では三角断面糸によるポリエステルSB、ポリエステル複合不織布による制電フィルター、ポリエチレンフィルムを貼り合わせた透湿性ポリプロピレンSBなどを提案。さらに再生ポリエステル短繊維を使用したニードルパンチ不織布(NP、GRS認証取得)も目を引いた。

 帝人フロンティアは不織布用の各種ポリエステル短繊維を中心に提案した。ウレタン代替としての繊維クッション材「エルク」や羽毛代替の八葉断面の中空わたが注目を集めた。エルクはモノマテリアル化の動きからカーシートのウレタン製ワディング材(カーシートの裏側に貼り合せた薄手のウレタンシート)代替として注目され始めたと言う。

 東洋紡エムシーは機能性不織布をそろえた。中でも短繊維不織布製造子会社のユウホウ(大阪市北区)が出品した熱可塑性炭素繊維NP「疾風―HAYATE(ハヤテ)―」と銅100%NPが関心を集めた。

 ユニチカは太繊度のドッグボーン十字断面を持つポリエステルSB「ディラ」、2成分の複合SB「エルベス」や綿100%スパンレース不織布(SL)の差別化品に絞り込んだ提案を行った。クラレは不織布ではなく、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」とハイグレード版「ハイブラー」製フィルムを紙おむつ用に提案した。原料販売だけだったが、フィルム販売を目指している。紙おむつのウエスト部分向け。

 ニッケの短繊維不織布製造子会社、エフアンドエイノンウーブンズ(大阪市中央区)はゲルと垂直型不織布複合の「ゲルウーブン」などを提案した。不織布密度1%未満でゲルが持つ衝撃緩衝性、防振性・制振性を維持しながら繊維が柱となり、つぶれにくく、ハンドリング性が良いため、スリットなど加工がしやすい。微振動に効果があることからドローンのカメラなどニッチを狙う。

 大和紡績はダイワボウレーヨンを含めたグループ出展。PLA(ポリ乳酸)とPBS(ポリブチレンサクシネート)からなる芯鞘複合繊維で生分解性を持つ「ミラクルファイバーKK―PL」、レーヨン短繊維製SL「アピタス」、海水中生分解性の国際認証を取得するレーヨン短繊維「エコロナ」を展示した。

〈専業は独自性を訴求〉

 日本バイリーンは静電気除去SL、サーマルボンド不織布(TB)による膜基材などを提案。金井重要工業(大阪市北区)はカード工程に不可欠なメタリックワイヤのほか、耐熱プレフィルターやプリント基板向け不織布研磨ホイール、ウエハ用研磨パッドなどを提案した。ダイニックは床の吸音・緩衝材「パネロン・スキップ」や加湿器のろ材を出品した。

 長短不織布製造のシンワ(愛媛県四国中央市)はブースを3等分し、国内生産する各種不織布、インドネシア子会社のSL、中国子会社で生産する各種フィルターを紹介した。国内生産品ではコラーゲンナノファイバー不織布、ポリプロピレン・ポリエステルの混繊メルトブロー不織布(MB)、フェースマスク用の極細レーヨン短繊維製SLやエアスルー不織布代替の紙おむつのトップシート用SLなど特殊品を提案した。

 湿式不織布製造の三木特種製紙(同四国中央市)は和紙テープ基材や伊予和紙製マスクなどを製品で紹介した。和紙テープ基材は建築塗装・車両塗装時に使用される養生テープで、世界的に需要が増加する。同じく湿式不織布製造の廣瀬製紙(高知県土佐市)はポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維使い、シリカゲルとポリエステル繊維複合などの耐熱紙やポリ乳酸繊維製機能紙、ナノファイバー技術を紹介した。

 再生ポリエステル短繊維、NP製造の髙安(同各務原市)は再生ナイロン、再生ポリエステルの樹脂・繊維を紹介するとともに、それを使ったNPを訴求した。再生ポリエステル短繊維、NP製造のオーツカ(同笠松町)は再生技術に絞って紹介。異素材が混合したものを、チップ化し、再生繊維を製造。それを不織布にして自動車資材向けなどに展開する仕組み。廃棄されれば再度、チップ化して再利用する循環型だ。

 MB製造専業のタピルス(東京都港区)は繊度太く、かさ高性のあるMBを提案した。通常、MBは細繊度で低目付品が多いが、その逆。MBの層に空隙があり、圧損を高め、中・高粘度の液体でも分離しやすいなどの特徴がある。

 エアレイド不織布製造の王子キノクロス(静岡県富士市)は育苗用・緩衝用シート「ハイビオス」や菌性鮮度保持シート「ぬれ鮮れ」、成形可能で縫製・溶着加工もできる「キナリト」、セルロースを補強繊維に使用した樹脂複合ペレットで、耐衝撃性を持つ「タフセル」などを提案した。

 短繊維不織布製造の金星製紙(高知市)は細繊度の複合繊維を使った「リモレイ」、不織布密度が均一な凸型「デコレイ」と日本製紙の金属イオン担持パルプ「シーユートップ」を配合したタイプなどのエアレイド不織布に絞って出品した。

〈ノズルから検査器まで〉

 化繊ノズル製作所(大阪市北区)は混繊MBノズルダイを新たに提案した。同一原料でも異なる繊度や粘度、さらに異種原料使いなどを製造できるもの。通常、MBは強度が低いが、単体で強度を高めたタイプを製造できるものもある。自社に置く試験設備で生産した約10種類のサンプルを展示した。

 産業資材などを製造する新江州(滋賀県長浜市)は、保有するスプレーラミネート機を紹介。抄紙網など製造の日本フイルコンはスパンレース不織布に凹凸がある模様付けができるカバーロール「スパンアート」と紙おむつ製造機用コンベアベルト「ダイアプロ」を出品した。紡糸ノズル製造の日本ノズル(神戸市)はパネルとパンフレットで自社製品を提案した。

 紙パルプ・プラスチックフィルム・不織布などの試験・測定機器や消耗品を取り扱う専門商社、野村商事(東京都千代田区)は、不織布や紙・板紙の地合測定器の最新機種「FMT―4」を訴求した。専門商社の岡村化成(高知市)は湿式不織布によるワイパーなどを出品した。