不織布新書24秋(7)/FANS/ダイニック/倉敷繊維加工/金井重要工業

2024年09月25日 (水曜日)

〈FANS/アジア販売を拡大/リサイクル事業も立ち上げ〉

 ニッケのフェルト・不織布製造卸子会社、エフアンドエイノンウーブンズ(FANS、大阪市中央区)は、発足初年度上半期(23年12月~24年5月)を終えた。市況悪化で当初計画を下回る業績となったことから、来期に向けてアジア市場での販売拡大などで巻き返しを狙う。

 上半期は、主力商品「ヒメロン」が、自動車メーカーの生産停滞の影響があり前半苦戦した。OA機器向けも流通在庫の調整局面が3月まで続き、4月以降に荷動きが正常化した。

 一方、楽器向け羊毛フェルトは需要低迷が続いている。特に中国は不動産市況低迷の影響でピアノの販売台数が大きく減少している影響を受けた。また、中国生産・販売の拡大を見込んでいたバグフィルターも現地の景況悪化から価格競争が激化し、計画通りではない。ただ、国内販売は新たにニッケグループに加わったカンキョーテクノ(大阪市中央区)との連携もあって順調だ。

 こうした状況下、来期に向けてアジア市場での拡販に取り組む。インドネシア子会社の増設を進めているほか、ベトナム子会社も加工工程を増強した。いずれもOA機器向けで需要の取り込みを進める。タイでヒメロンの備蓄販売もスタートした。こちらは自動車向けで販売が拡大している。ヒメロンはタイからインドへの販売も目指すほか、ニッケグループに加わった呉羽テックの米国拠点と連携し、北米市場への販売も目指す。

 使用済み繊維製品のリサイクル事業の立ち上げにも取り組む。石岡工場(茨城県石岡市)に導入した設備は12月ごろには試運転を開始する予定だ。

〈ダイニック/カーペットなど原動力に/製品力で優位に立つ〉

 ダイニックは、展示会・イベント用カーペットやフィルター分野での拡販を原動力に不織布事業の成長を図っていく。高いシェアを誇っているカーペットや家電用フィルター分野は製品力でさらに優位に立ち、ビルや施設などの空調フィルター分野はシェアアップを目指す。

 2023年度(24年3月期)を初年度とする3カ年の中期経営計画に取り組んでおり、24年9月に中間点を迎えた。上半期(24年4~9月)の業績は、展示会・イベント用カーペットが堅調に推移したほか、家電フィルター分野も回復基調に入った。一方で自動車関連分野は厳しく、不織布製品販売全体では若干の苦戦となった。

 下半期以降は、家電フィルター分野が引き続き期待できるとする。展示会・イベントの開催は復活しているものの、面積ベースでは新型コロナウイルス禍前の8~9割の水準にとどまっており、今後の回復に期待をかける。

 空調フィルター分野は、同社のシェアが大きくなく、その分伸び代が期待できるとする。働く人の健康に配慮した空間評価システム「WELL認証」を取得する建造物が増えており、高通気・高集じんや軽量などの高機能フィルターの提案で貢献する。そのほか、自動車関連分野の復調や価格の適正化がポイントになるとみている。

〈倉敷繊維加工/フィルターで新商品開発/「クラングラフト」本格化〉

 クラボウグループの短繊維不織布メーカーである倉敷繊維加工(大阪市中央区)は、来年度から始まる次期中期経営計画で新商品の開発に力を入れる。海外販売にも力を入れ、中長期ビジョンに掲げる売上高100億円の目標実現向けた基盤整備に取り組む。

 2024年度上半期(4~9月)の業績は、ほぼ計画通りに推移するなど堅調だった。自動車のキャビンフィルターに加えて、ビル空調や空気清浄機向けフィルターも工場や商業施設の稼働率が回復したことで需要も改善している。中国子会社の佛山倉敷繊維加工も電気自動車(EV)向けフィルターが拡大している。

 また、グラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」も半導体製造関連で採用が本格化してきた。今期からクラボウの熊本事業所(熊本県菊池市)でも一部工程を委託することで生産能力を高める。現在、試運転を実施中だ。

 来期から新しい中期経営計画がスタートする。利益に加えて生産・販売量を拡大することがテーマの一つ。そのために培ったフィルターの技術を生かした新商品の開発に力を入れる。海外販売の拡大も重視し、中国子会社を通じて欧米企業の中国法人への販売などを拡大させる戦略だ。

 これら取り組みで、中長期ビジョンに掲げる30年度売上高100億円の目標に向けた基盤整備に取り組む。

〈金井重要工業/絞り込みで生産性向上/利益追求、強い工場へ〉

 短繊維不織布、繊維機器製造の金井重要工業(大阪市北区)は不織布事業で、需要家と交渉しながら品番を絞り込み、生産効率の改善に取り組む。同社はケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布を製造するが、1系列が大きい一方でロットが小さくなっており、生産性が悪化していた。

 今期(2025年3月期)は新中期計画の初年度。不織布製造所(兵庫県宝塚市)を「強い工場に変え、利益を追求する」(源野佳郎取締役不織布事業部長)ことを課題とする。品番の絞り込みはその一環。並行してコスト上昇分の価格転嫁も進める。

 上半期の不織布事業は前期比増収で推移した。「コスト上昇分の価格転嫁に加え、販売量も増えた」ことが寄与する。ただ、コスト上昇は補い切れていない。

 不織布は自動車内装材、空調フィルター、研磨材、不織布タワシなどの生活資材が主力。天井材が中心の自動車内装材は、ダイハツの不正に伴う減産は終了し通常水準に戻ったが、不正問題の影響で次モデルの立ち上がりが遅れることを懸念する。

 空調フィルターは数量的に横ばい。研磨材は半導体産業の落ち込みもあり量的には減少した。タワシは新型コロナウイルス禍明けで外食需要が落ち込んだ影響を受けたが、上半期は回復傾向。円安による輸入価格の上昇が影響しているとみる。