不織布新書24秋(6)/旭化成アドバンス/東洋紡せんい/小津産業/服部猛/レンチンググループ

2024年09月25日 (水曜日)

〈東洋紡せんい/特殊素材を不織布化/サーマルカレンダー方式に強み〉

 東洋紡せんいは、サーマルカレンダー方式で生産するサーマルボンド不織布(TB)の強みを生かし、特殊繊維の不織布化で用途開拓に取り組む。

 オレフィン系など熱融着繊維を含んだウェブに熱風を通して接合する方法とは異なり、東洋紡せんいが庄川工場(富山県射水市)に保有する設備は、熱ロールでウェブを接合するサーマルカレンダー方式を採用している。

 熱ロールの温度を200℃まで高めることが可能なため、オレフィン系だけでなく低融点ポリエステルもバインダー繊維として利用できる。これを生かしポリエステル100%TBで、強度が求められるフィルター関連などに販売する。1平方メートル当たり15~80グラムまでの目付に対応し、小ロット生産にも適している。

 こうした特徴を生かし、複数素材を複合したTBの生産も強みとなる。これまでも除菌機能繊維「アグリーザ」・ポリエステル複合TBをフィルター向けに開発した。アンモニア消臭機能もあるアクリレート系繊維「モイスファイン」や超吸水性繊維「ランシール」を使った開発も進む。ポリフェニレンファルサイド(PPS)繊維を使い、耐熱性、耐薬品性、絶縁性を生かした工業用フィルターやセパレーター分野の開拓にも取り組む。

 サーマルカレンダー方式は、他の製造方式の不織布との張り合わせやフィルムラミネートなど2次加工が可能なことも強みとなる。これら特徴を生かし、複合素材品や複層品を積極的に打ち出す考え。また、他社からの受託生産にも対応する考えだ。

 同社のTBは技術開発部新規事業開発グループとマテリアル事業部原糸販売グループが連携して提案・販売する。

〈小津産業/10年後見据え長期ビジョン/目標実現へ中計も始動〉

 小津産業は、10年後の2034年5月期を見据えた「長期ビジョン:OZU Innovation2034」を策定した。「自ら製品を企画・開発・生産する機能を備えた商社」に発展し、連結売上高を現状の100億円から150億円に拡大する。長期目標実現のための中期経営計画も始動した。

 同社は、24年5月期で前中期経営計画を終了した。新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻をはじめ、事業環境が変化する中、修正後の計画を達成するなど、一定の成果を上げた。不透明な経営環境が継続する状況下でグループが一丸となって企業価値向上の実現を目指すため長期ビジョンを策定した。

 10年をかけて50億円の増収を目指す。新規顧客の開拓と新用途・新機能の開発で30億円の拡大を、新規事業で20億円の拡大を見込む。新規事業による拡大では、農漁業や予防医療、在宅医療、防災、先端技術などに着目している。

 25年5月期が初年度の第一次中期経営計画2027では、27年5月期に売上高105億円、営業利益3億円を計画するなど、土台を固める。営業部門はクリーンサプライ営業部やウェルネスケア営業部など4営業部に再編し、新製品開発も加速する。

 海外は、中国の小津〈上海〉貿易を軸に機能を拡充し、ASEAN地域での拠点構築も検討する。

〈旭化成アドバンス/海外展開を加速/独自商材の拡販進める〉

 旭化成アドバンスの繊維資材事業部は、不織布を中心に海外展開を加速させている。独自商材を強みに海外での需要掘り起こしに取り組む。

 2024年度上半期(4~9月)は不織布の輸出がリードし、業績は堅調に推移した。特にスパンボンド不織布(SB)のコーヒーフィルター向けやブラインド向けが好調だった。欧州向けフィルター用途も堅調だ。

 一方、アジア向けは勢いがない。フィルター用途を中心とした中国向けや、使い捨てカイロ用が中心の韓国向けともに低調。キュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」もコスメティック用途が中韓両国向けともに市況が低迷している。こうした中、善戦しているのが立体編み物「フュージョン」。空調フィルター向けは需要調整局面だが、寝装向けが好調だ。

 下半期に向けて、米国、中国、タイ、ベトナムの拠点と連携しながら、引き続き海外販売の強化に取り組む。フュージョンで米国の家具用途への提案を進める。耐炎化繊維「ラスタン」不織布は欧州の鉄道車両部材として提案しており、採用に向けて欧州連合内の標準規格であるEN規格にも対応した。タイでも家電向けでワーク中だ。ベトナムでもベンリーゼやフュージョンによる市場開拓に取り組む。

 キュプラ繊維を使った環境配慮型油吸着材「B―スイーパー」と水面で使用できる「B―スイーパーアクア」など独自商材の拡販に取り組む。

〈不織布けん引し増収傾向/服部猛〉

 服部猛(名古屋市中区)は2024年11月期の売上高が前期比5%増ペースで推移する。けん引するのは不織布。フェースマスク向けの国内販売や輸入不織布販売で製品の生産管理までビジネスが変化したことも寄与する。コスト上昇分の価格転嫁も進んでおり、低調な自動車資材が回復すればさらに伸びが見込めると言う。

 来期についても特に悪い材料はないとして、開発品の本格化を目指す。また、不織布タオルや簡易トイレなど防災関連商品の強化にも取り組む。

 同社は1946年に綿布卸として創業したが、現在は産業資材や不織布の専門商社として知られる。トリコットなど生産の小松島工場(徳島県小松島市)とインドネシアの織物・丸編み地・縫製、バフ(研磨布)の製造子会社、ハットリ・インドネシアの自家工場も持つ。

〈不織布用繊維の採用増/レンチンググループ〉

 レンチンググループが製造・販売する「ヴェオセル」ブランド繊維の採用が増えてきた。不織布用のリヨセルとレーヨンで、大手スーパーマーケットチェーンが独自ブランドの製品に採用した。ヴェオセルの認知度は向上しており、市場浸透の加速を目指す。

 同社グループの不織布用のリヨセルとレーヨンは、「原料が木質由来」「クリーンで安全な方法で生産されている」「生分解性を持つ」ことが特徴。リヨセルは繊維の表面が平滑で、肌に優しく、滑らかな不織布に仕上がる。

 採用する企業が増えており、スーパーマーケットチェーンのライフが「BIO-RAL」ブランドのフローリングシートとフェイシャルタオルに採用した。店舗什器などを手掛ける英進が7月末に発売したフェースマスクにも使われている。