不織布新書24秋(5)/旭化成/ダイワボウレーヨン/帝人フロンティア/宇部エクシモ

2024年09月25日 (水曜日)

〈旭化成/「ベンリーゼ」を糸に/スリットヤーンで衣料へ〉

 旭化成はキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」のスリットヤーンを開発した。「スリットや撚糸の技術確立にほぼめどが付いた」(森嶋誠ベンリーゼ営業部長)ことから、今後は織布、編み立てのパートナーを募集し、織・編み物段階で生じた課題をクリアしながら、2025年度(26年3月期)からの本格販売を目指す。その一環として国内外の展示会にも出展する。

 ベンリーゼは同社のオンリーワン不織布。キュプラ繊維「ベンベルグ」と同じく、コットンリンター(綿花の種の周りの産毛)を原料とし、自己接着するため不純物が少ない。長繊維のためリント発生もスパンレース不織布のような短繊維不織布に比べて少ない。フェースマスクや工業用ワイパー、医療ガーゼなどに販売する。

 中でも吸液性・保液性、密着性、透明性などの特徴を生かしたのがフェースマスク用途。国内販売は好調ながら中国、韓国向けが一昨年から急激に落ち込んだ。このため、新規用途の開拓を強化。その中でスリットヤーンのテーマが浮上し、開発に着手していた。

 スリットヤーンとして使われるスパンボンド不織布に比べると強度が劣り、低目付であるためスリット、撚糸の技術難度は高く「誰もまねができない商品」であることから、ニッチながら成長が見込めると判断した。

 海洋、淡水・土壌、コンポスト、都市型ゴミ処理場など各種生分解性の認証も取得しており、脱プラの動きが強まる欧州はじめ、国内外に向けてサステイナブル素材として打ち出す。

 紙糸に近いゾーンを想定しており、試作した生地を一部紹介したところ、紙糸よりも軽く、柔らかく、新しい触感が面白いとの評価があったと言う。

〈ダイワボウレーヨン/短カットわた販売強化/生分解性なども打ち出す〉

 ダイワボウレ―ヨンは、乾式不織布向けレーヨン短繊維だけでなく、湿式不織布向けのレーヨンショートカットファイバー(短カットわた)の販売を強化する。

 2024年度上半期(4~9月)のレーヨン短繊維販売は、市況に勢いがない中で原燃料価格が高止まりしていることや物流費の上昇もあって利益が圧迫された。このため10月出荷分から現行価格の5~10%の値上げに踏み切る。

 不織布向けは差別化わたの販売比率を一段と高める戦略だ。吸液性に優れる極細繊度わた「ソフレイ」や備長炭練り込みレーヨン、椿など天然オイル成分配合のボタニカルレーヨンなどでフェースマスクなどコスメティック用途などでの拡販を進める。また、湿式不織布用ショートカットファイバーの販売も強化する。フィルター関連や包材用途の開拓に取り組む。

 環境配慮素材としてのレーヨンの特性も改めて打ち出す。海水中生分解性も確認し、国際認証も取得している「エコロナ」や、廃棄綿布を原料としたリサイクルレーヨン「リコビス」を商品化しており、不織布向けとしても供給が可能。特に生分解性に関しては水解紙などの用途でも強みを発揮できる。

〈帝人フロンティア/量的拡大も狙う/自動車、寝装用途などで〉

 帝人フロンティアの産業資材部門短繊維素材本部は、ポリエステル短繊維・不織布に関して高付加価値品による利益重視の姿勢に加え、量的拡大も重視する。

 2024年度上半期(4~9月)は、前半に自動車メーカーの生産停滞の影響で車両向けポリエステル短繊維と不織布原反ともに振るわなかった。衛材向けも市況低迷で勢いがないが、生活資材向けは安定している。膜支持体向けが主力の短カットわたは中国での販売が堅調だが、北米は流通在庫の調整で7月ごろまでは低調だった。

 高付加価値品への特化を進めたことで販売数量減少が続いていることが課題だ。今後は自動車や寝装用途などで量的拡大も重視する。競合他社が国内の生産能力を縮小する動きを見せており、供給過剰も緩和される可能性があることからタイ子会社のテイジン・ポリエステル・タイランド(TPL)や協力関係にあるインドネシアのティフィコの生産品でシェア拡大を目指す。

 短カットわたも25年末までにTPLの生産能力増強が完了し、生産量が約10%増加する。中国や北米市場を中心に膜支持体向けなどで拡販を進める。

 ポリエステルエラストマー繊維「エルク」など繊維構造体は自動車向け不織布部材のドイツ子会社であるジーグラーと連携し、カーシートのワディングといった用途での拡販を狙う。リサイクル性を高めるために“モノマテリアル”(単一素材)化の動きが強まっており、ウレタン代替としての需要開拓に取り組む。

〈宇部エクシモ/機能や付加価値で勝負/利益面で再成長図る〉

 宇部エクシモは、チョップドファイバーを軸に利益成長を図る。ステープルファイバー製品は2025年3月に製造を、同年6月に出荷を終了する予定で、以降は芯鞘構造で細繊度を実現した「エアリモ」とポリプロピレン(PP)の「シムテックス」に絞り、機能や付加価値で存在を示す。

 エアリモは、芯鞘構造では最細クラスという0・2デシテックスを実現した。繊維径にばらつきが少ないといった特徴などが評価され、民生用セパレーターやフィルター関連分野で販売が着実に増えてきた。販売拡大のスピードを加速したい考えで、0・4デシテックスタイプの販売も始める。ラインアップは顧客の要望に応じて増やす。

 シムテックスは、新規延伸プロセスの採用によって高度に配向結晶化したPPわたで、高強度や高弾性、熱収縮率、耐薬品性などに優れる。2次電池材料用途を中心に販売し、24年度上半期(4~9月)は計画通りの推移を示す。シムテックスよりも繊度が太く、同社が「一般チョップドファイバー」と呼ぶタイプも堅調な動きを見せる。

 撤退するステープルファイバー製品の「UEXC UCファイバー」「UEXCポリプロ」は、紙おむつなどの衛生材料をはじめ、各種産業分野に販売してきた。近年は主力製品需要の減少、海外の安価原綿の流入などから赤字が続いていた。