不織布新書24秋(4)/東レ/東洋紡エムシー/ユニチカ/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン
2024年09月25日 (水曜日)
〈東レ/湿式不織布も本格化/紙・フィルム代替も狙う〉
東レは、ポリエステルスパンボンド不織布「アクスター」のバリエーションを拡大し、紙・フィルム代替の需要開拓を進めている。また、湿式不織布の販売も本格化させる。
2024年度上半期(4~9月)の不織布販売は売上高、利益ともに前年同期を上回るなど堅調に推移した。アクスターは主力のフィルター用途が好調。また、昨年まで市況が低迷していたポリフェニレンファルサイド(PPS)不織布も中国のバグフィルター向け需要が回復したことで復調した。
こうした中、同社は商品バリエーションを拡大することで、さらなる販売拡大を狙う。その一つが「アクスターPF」。特殊製法によってスパンボンド製法の特徴である接着点(エンボス柄)をなくすことで表面平滑性や目付均一性に優れ、印刷も可能だ。このため紙・フィルム代替を狙う。紙よりも強度に優れ、フィルムよりもプラスチック使用量削減に貢献できる点を打ち出す。
また、PPS繊維やフッ素繊維のショートカットファイバーによる湿式不織布の提案にも力を入れており、下半期からは膜関連で販売が本格的に始まる見通しだ。耐熱性や耐薬品性などの特徴を生かし、膜関連やシール材関連などで需要掘り起こしに取り組む。
一方、ポリプロピレンスパンボンド不織布は世界的な市況低迷が続いている。このため全社で取り組む「特定事業・会社の収益改善プロジェクト」(通称ダーウィンプロジェクト)の対象の一つに位置付け、抜本的な構造改革を検討する。
国内販売は主力の紙おむつ向けも含めて大きく悪化していないが、紙おむつ向けは少子化で将来の需要縮小が避けられないため、非衛材用途での開発・提案に力を入れる。
〈東洋紡エムシー/新商品開発・提案を強化/リニア新幹線関連も期待〉
東洋紡エムシーは、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)で新商品の開発・提案を強化する。また、リニア中央新幹線関連需要にも期待を寄せる。
2024年度上半期(4~9月)のSB販売は、主力の自動車用途が堅調に推移した。海外販売も米国市場が日系自動車メーカーの好調を受けて堅調。中国市場は日系自動車メーカーの販売が振るわないため低迷しているが、トノカバーなどは中国の自動車メーカーにも採用されているため好調だった。
その他、建材はアスファルトルーフィング材などが都市の再開発活発化で堅調だが、戸建て住宅向けは苦戦する。土木資材は大型案件が少なく、いまひとつ勢いがない。
下半期に向けて新商品の開発と提案を強化する。その一つとしてSB上にコケを養生するコケシートを開発した。造園会社などと連携して用途開拓を進める。
今後、リニア中央新幹線の工事進展による新規需要への期待も大きい。トンネル工事に使用する土木シートのほか、発生する残土の仮置き場から重金属の流出を防ぐ重金属イオン捕集材「コスモフレッシュナノ」など機能品の提案を進める。海面最終処分場でも採用に向けた商談が進むなど注目が高まる。
〈ユニチカ/新規案件の獲得へ/綿不織布は生分解など打ち出す〉
ユニチカは、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)で新規案件の獲得に力を入れている。また、綿スパンレース不織布(SL)「コットエース」は、生分解性などの特徴を改めて打ち出す。
2024年度上半期(4~9月)のポリエステルSB販売量は、前年同期比約10%増となるなど比較的堅調に推移した。農業資材向けなどは低調ながら、土木資材など他の用途の需要が回復している。タイ子会社のタスコも販売数量はまずまず堅調。ただ、カーペット基布向けで中国品との競争が激化しているため、低価格ゾーンの販売は縮小した。また、綿SLは好調だ。猛暑で制汗シート向けなどの荷動きが活発化した。
下半期に向けて、利益率の改善が課題。このため現在、値上げを進めている。ポリエステルSBは土木資材など好調な用途での拡販に加えて、新規案件の獲得を目指す。既に自動車関連や土木関連で具体的な商談が進む。
綿SLも制汗シートに加えて、積層タイプも用意し、フェースマスクなどコスメティック分野などで新規案件の獲得を目指す。また、綿100%を生かし、国際的な海洋生分解性認証「OKバイオディグレーダブルマリーン」を取得した。これを打ち出し、海外市場での販売拡大を狙う。
〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/建材などで新用途開拓/「ドリップストップ」本格販売〉
ドイツ・フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(大阪市中央区)は、建材用途で新規商材の拡販を進める。屋根防水材向けポリエステルニードルパンチ不織布「ドリップストップ」も販売を本格化させる。
2024年度上半期(1~6月)、主力のポリエステルスパンボンド不織布(SB)は自動車用途が低迷したもののカーペット基布用途はコントラクト向けが堅調。シューズ部材用途も順調に拡大した。ただ、同社は海外生産品を日本で輸入販売しているため、円安や物流費の上昇で利益が圧迫された。このため6月に値上げを発表した。
こうした中、新商材による用途開拓が重要になる。特に建材用途では、ドリップストップで建材としての各種認証取得が進んでおり、採用に向けた体制が整う。専任の営業担当も置いた。25年から販売を本格化させたい考えだ。
また、3次元構造体「エンカ」にも力を入れる。こちらも採用や用途開拓が徐々に進む。23年から中国での生産も始まったことで供給力が高まった。ドリップストップもエンカも認知度を高める必要があるため展示会などにも積極的に出展する計画だ。