不織布新書24秋(1)/『お前もか』となる前に/未開の地に挑戦できるか

2024年09月25日 (水曜日)

 不織布業界が揺れている。国内需要の落ち込みから生産減が続く上、原燃料価格の上昇で収益力も低下する。その中で繊維素材メーカーを中心に不織布事業の構造改革が相次いで明らかになっている。不織布も衣料用繊維と同じく縮小均衡の道を歩み始めたのか。それとも反転する可能性はあるのか。反転するには何が必要なのか。今後を展望する。

〈繊維大手が構造改革/撤退や事業譲渡相次ぐ〉

 繊維素材メーカー大手を中心に構造改革が活発化する。東レは韓国、中国子会社のポリプロピレンスパンボンド不織布の生産規模適正化に着手。三井化学と旭化成は2023年10月に不織布事業の合弁会社、エム・エーライフマテリアルズ(東京都中央区)を設立した。

 24年7月には宇部エクシモ(東京都中央区)がオレフィン系複合繊維、ポリプロピレン短繊維を25年3月に生産終了し、チョップドファイバーに絞り込むことを明らかにしている。

 同月にはクラレが不織布製造子会社、クラレクラフレックス(大阪市北区)の乾式不織布(ケミカルボンド不織布、スパンレース不織布、水蒸気不織布)から撤退し、メルトブロー不織布生産能力の縮小を発表。8月には東洋紡エムシーが短繊維不織布製造子会社である呉羽テック(滋賀県栗東市)をニッケに売却した。

 繊維素材メーカーの不織布事業は採算性が悪化しているとみられ、今後もさまざまな構造改革が進む可能性があるとの見方は多い。

〈衣料用と似た構図/まだ間に合うはず〉

 国内需要が落ち込み、中国を中心とする輸入は不織布だけでなく、不織布製品にも広がる。この構図は衣料用繊維業界が歩んできた道そのもの。

 不織布は新商品を開発し、市場を開拓することで成長してきた。しかし、成長にあぐらをかき、あるいは既存用途での競争に忙殺され、商品開発、用途開拓がおろそかになっていなかっただろうか。業界関係者からは「事業の一つとして不織布を手掛ける企業は戦略の見直しを余儀なくされている。沈み始めてからでは手遅れ」と厳しく指摘する。

 中小の不織布関連企業も無関係ではない。資金的な問題もあり、設備更新が難しく、人手不足もあって事業継続が厳しくなる可能性があるとの見方がある。

 ただ、不織布は完全に沈んだわけではない。商品開発による用途開拓で、未開の地に挑戦することができれば、底打つ可能性はある。まだ間に合うはず。「不織布お前もか」と言われる前に、やるべきことはある。

〈余談〉

 「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」とは作家、井上靖氏の言葉。取材では同業他社、サプライヤー、ユーザーへの不満をよく聞く▼各段階への不満が業績低迷の要因という話で終わる企業もある。一方で「新しい商品を開発した。今までにない用途に売り込みたい。そのために展示会に出る」という前向きな話をする企業も少なくない▼前向きな話を語られた方が筆は進む。「世の中に不満があるなら自分を変えろ」と、あるアニメーションで主人公が語っていた。確かに希望を語るには自らを変えなければならない▼「忙しい」を言い訳にせず、変わる努力をする時間を作るにはどうすれば良いのか。日々、自問自答する。不織布関連企業はどうか。