シリーズ事業戦略/日清紡テキスタイル/社長 村田 馨 氏/「機能と環境」軸に攻勢/インドネシアで一貫生産の強み訴求

2024年09月24日 (火曜日)

 日清紡ホールディングスの繊維事業は上半期(1~6月)、売上高が183億円(前年同期比1.0%減)とほぼ横ばいだったが、営業損失1億6300万円(前年同期3億1300万円の損失)と赤字幅は縮小した。日清紡テキスタイルの村田馨社長は、下半期に向け主力のシャツ、ユニフォームで「機能、環境を軸に伸ばす」と話す。インドネシアでの生産基盤をさらに強化しながら国内外の市場へ攻勢をかける。

――上半期を振り返ると。

 全体的にはまだ回復が遅く、セグメントでのアップダウンが激しいです。ユニフォーム事業は値上げの影響でワークウエア向け生地の受注が減少しましたが、価格改定の効果で利益は改善しました。

 東京シャツを含むシャツ事業は昨年、新型コロナウイルス禍からの市況回復を受けて活況でした。その反動を受け微減収となっています。

 不織布「オイコス」やスパンデックス「モビロン」、エラストマーといった開発素材事業は少しずつ戻りつつあります。

 ガラッと変わったのがブラジルです。前期は一番足を引っ張りましたが、好転しています。ブラジル国内では品質的にナンバーワンという評価を受けており、年内はフル稼働が続く見通しで、生産が追い付いていません。

――東京シャツは電子商取引(EC)の販売を強化していました。

 ECだけを見ると上半期は6%増収で、全体の21~22%を占めています。これを早く30%まで持っていきたい。実店舗とECで相乗効果を出しながらリピート率を高め、もっと東京シャツへのファンを増やしていければと考えています。

――下半期の方針は。

 シャツ、ユニフォームとも機能、環境を軸に伸ばしていこうと考えています。シャツでは売れ筋のノーアイロンシャツ「アポロコット」でもっと機能を追求していきます。生地にソフト感を出しながらも形態安定を保てるノンホルマリンタイプでは大きく(販売)数量を増やします。フッ素フリーの汚れ防止といった機能加工を付与したものや、綿100%の薄地でありながらも透けを防止できるものなど、機能でニーズをしっかり捉えていきます。

 ユニフォームではピリング・高耐久の特殊ポリエステル綿混糸を使った、ストレッチ性の高い織物「エアリーウェーブ」や、綿100%でありながら20%以上のストレッチ性を持つ織物「アスタリスク バイ ナチュレッシュ」の採用が増えています。エアリーウェーブでは素材の混率を変えるなどでバリエーションを広げ、別注対応も増えてきました。

 新たな商品開発に合わせ、インドネシアでの生産対応を強化しつつあります。昨年、紡織拠点のニカワテキスタイルに増設した渦流紡績機「ボルテックス」2台は順調に稼働しており、独自の糸作りで活用しています。これが軌道に乗ってくれば、さらなる増設も視野に入れます。

 織布・染色加工拠点の日清紡インドネシアへは昨年、吉野川事業所(徳島県吉野川市)から液流加工機を移設しました。これも順調に稼働しつつあり、新台の導入を来月に予定しています。

 インドネシアでは水使用量を60%の削減を目指していますが、排水を全て一緒に処理することが難しいため、漂白や染色、樹脂加工など工程別に処理することを検討しています。異業種の専門家の力を借りながら、どのような排水処理の方法が良いのか探っています。

――インドネシアから海外市場の開拓にも注力しています。

 インドネシアでのローカルを含めた海外向け売上高は3割を超えています。中東民族衣装向け生地輸出も前年に比べ1・5倍ほど増えています。

――昨年から青山商事と連携し、ノーアイロンシャツで商品やサービスのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算するカーボンフットプリント(CFP)への取り組みを始めています。

 インドネシアでは一貫生産の強みがあり、直接算出した高精度のCFPの1次データを活用することができます。これは日本だけでなく海外、特に欧州へ提案できる強みになります。SDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みや、CFPの義務化が進む中、強力な訴求ポイントになります。

――廃棄シャツから再生セルロース繊維を作る「シャツ再生プロジェクト」の進捗(しんちょく)は。

 再生繊維のフィラメント使いだけでなく、ステープルを紡績した糸を使って織物のサンプルを作成しています。最終的にはシャツにしたいので、そうなるとスパンによる風合いの方がシャツに適している。ネックになるのがセルロースの重合度であり、品質をいかに保つかになりますが、技術的にはクリアしつつあります。モノマテリアル化も意識し、芯地やボタンなどの副資材も再生セルロース繊維を使ったサンプルを作りつつあります。