LIVING-BIZ vol.110(7)/アイル/島忠/龍宮/イワタ/AQUA/良品計画/トップ

2024年09月18日 (水曜日)

〈アイル/M&A後の倒産から再出発/ショールームも開設〉

 寝具製造卸のアイル(京都市)は、M&A(合併・買収)による株式譲渡後半年で親会社が倒産、連鎖倒産したが、新生・アイルとしてこのほど再始動した。従来の卸売りをメインにしながら、ショールーム「アイル・スリープギャラリー」も7月23日に開設し、一般消費者が良質の寝具に触れながら気軽に相談できる機会を提供する。

 旧アイルは、京都の寝具メーカーの創業家一族の木田篤志氏と、同社員の早瀬晋也氏が共同出資して1997年に京都市内で開業。国内外の仕入れ先と連携しながらオリジナル商品を企画し、職域販売・訪問販売などの独自の販売ルートや地方問屋、小売り向けに販売してきた。

 堅実な経営を続けてきたが、後継者不足などから23年7月に、投資ファンド・経営コンサルタント業のANEW Holdings(東京都千代田区)に株式を譲渡。経営を続ける予定だったが、M&Aから約半年後の24年2月に親会社のANEW Holdingsが乱脈経営により経営破綻し、アイルも連鎖倒産した。

 木田氏らが中心となり、事業を継続するため、「多くの取引先さまにご支援・ご協力を頂きながら」(木田社長)、アイル系列のライフスペースクリエイツに商流を移管し、営業活動を再開。社名をアイルに変更し、同市の山科区に新事務所を開設した。ショールームも併設した。

 商品は羽毛や羊毛、ムートン、シルクなど天然素材を中心に企画する。羽毛ふとんは、綿80番手糸使いのサテンなどを“側”(中わたに入れる前の半製品)に、羽毛充填(じゅうてん)量も1・2~1・3キロをベースにするなど「良質の寝具」「ほんまもんの寝具」にこだわる。木田社長は「これからも良いふとんを啓蒙(けいもう)していきたい」としている。

〈島忠/寝姿勢測定アプリ導入/山形の寝具企業など開発〉

 ニトリグループの島忠は、寝姿勢測定アプリ「ねむり通」を使ったサービスを始めた。人工知能(AI)技術を活用し、簡単なアンケートと立ち姿勢を撮影するだけで適したマットレスが分かり、顧客の商品選びに役立てる。

 ねむり通は、3DアルゴリズムとAI身体分析テクノロジーを強みとする東京大学発のベンチャー企業、Sapeet(東京都港区、サピート)と、寝具製造卸のネムール(山形市)が共同開発。数万体以上の体形データを基にしながら、医療やヘルスケアの現場でも活用されているAI姿勢解析技術を用いている。同システムを島忠専用にカスタマイズした。

 手軽さが特徴で、性別や身長、体重などの質問に答えて、スマートフォンで体の正面と側面の写真を撮るだけでAIが瞬時に立ち姿勢を寝姿勢に変換。

 寝た時の理想の頭の高さや腰にかかる荷重を割り出し、適したマットレスを導き出す。

〈龍宮/台湾の展示会に出展/寝具「パシーマ」好評〉

 寝具製造卸の龍宮(福岡県うきは市)は、台湾の文化部(日本の文化庁に相当)が主催し、台南市で8月26日~9月1日に開かれたクリエーティブ産業の展示会「台湾文博会」に出展した。

 同展示会の中の日本館(ビジネスガイド社主催)に出展した。日本館には同社を含む25社が出展した。

 龍宮は、医療用純度のガーゼと脱脂綿使いの寝具「パシーマ」を中心に訴求。60万人以上の来場者があり、同社のブースも多くの人でにぎわった。パシーマに触れた来場者の評判は上々で、展示品を求める人も多く、ほとんどの展示品がなくなったと言う。「台湾での反響は良かった」(梯恒三社長)とし、越境EC(電子商取引)で実績のある台湾向けを強化する考えを示す。

〈イワタ/台湾に海外1号店/富裕層を狙う〉

 寝具製造卸・小売りのイワタ(京都市)は8月15日、台湾にフラッグシップストアを開店した。海外出店は初めて。

 新店舗は、世界のハイブランドがそろう台北SOGO復興館(台北市)に出店。イワタの総代理店である桑土達實業が運営する第1号店になる。

 同社の滋賀工場で製造した寝具を販売。マットレス「ラークオール」を8台設置するほか、キャメル敷パッド、羽毛ふとん、枕などと合わせて体験できるようにした。ラークオールは高級天然毛をぜいたくに使用した同社を代表するマットレス。キャメル毛、ヤク毛、ホースヘアーなどの獣毛を積層することで、優れた湿度調節と保温力、支持性を実現する。

 台湾の富裕層向けに開発した寝具も展開するとしている。

〈AQUA/羽毛代替掛けふとん 東レと中わた共同開発〉

 ニッケグループ企業で寝具・インテリアなどの製造卸・小売りを手掛けるAQUA(横浜市)は、羽毛の代替となるオリジナルの高機能素材「アクアダウン」を中わたに使用した掛けふとんを、クラウドファンディングサービス「マクアケ」で8月19日から先行販売している。

 アクアダウンは、東レと共同開発した。超極細マイクロファイバーと中空糸をブレンドしたダウンボールのような特殊粒わたで、「羽毛以上の機能」を目指した。

 ダウン80%・フェザー20%の羽毛よりもかさ高が上で、より多くの空気をため込め、羽毛と比較して保温性が6%アップしたと訴求する。肌沿いの良い立体キルトも採用し、温まった空気が逃げないように工夫している。

 防ダニ抗菌防臭加工と高密度のポリエステル100%“側”(中わたを入れる前の半製品)を採用して、ダニやほこりをため込みにくく、自宅で丸洗いできるなど清潔性も前面に打ち出す。

 秋冬用シングルサイズ(150×210センチ)の中わた量は1・6キロ。一般販売予定価格は1万2980円。マクアケでは先行割引で9900円から販売している。

〈良品計画/寝返りに着目した枕発売〉

 良品計画は8月初旬、「無印良品」から「寝返りを受け止めるまくら」を発売した。眠りに重要な体温調節や体圧分散などを促す寝返りに焦点を当て、一つの枕で仰向き/横向き寝に対応する。メッシュのインナーカバー付きで6990円。

 健康寿命への意識が高まり、睡眠関連市場が拡大する中、約2年をかけ開発。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構を母体とするベンチャー企業のS¥文字(C-8276)UIMIN(スイミン)と共同で睡眠への影響も検証した。

 中材はポリエチレン100%の網状立体構造体。仰向け時に頭部と首の角度が自然になるよう中央部分は低めで柔らかな感触、両サイドは横向き寝のとき肩が圧迫されないよう高めで硬めの感触にした。首を支える上下の部分に強度のあるサポートパーツを導入、各部位で繊維密度を変え一体成形している。

 通気性が高く、シャワーなどで丸洗いでき、へたってきたら42~50℃の温水をかけ復元可能。再生可能素材のため、将来的に回収・資源循環も検討する。

〈トップ/破産申請へ〉

 信用交換所によると、寝具ほか卸のトップ(福岡県柳川市、友添まゆみ代表)が自己破産申請の準備に入った。

 1974年8月創業。寝具を主体にインテリア用品も扱い、九州地区のスーパーやホームセンターを中心とした販路を形成し、2000年代には年商3億円台で推移していた。しかし、10年ごろから低調な推移が続き、今回の事態となったもよう。