LIVING-BIZ vol.110(1)/nishikawa睡眠白書2024/ライフステージ別/眠りの実態明らかに

2024年09月18日 (水曜日)

 nishikawaは、社内研究機関である日本睡眠科学研究所監修のもと、1万人の睡眠実態を追った「nishikawa睡眠白書2024」を9月3日・秋の睡眠の日に公開した。2018年から毎年1回行っているもので、24年版では、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の指針を基に、ライフステージごとの睡眠実態も掘り下げた。未就学児の睡眠にフォーカスした調査も行っている。

〈2割超が中~重度の不眠症か〉

 今回は睡眠の基本調査に加え、「昼寝・仮眠」「美容・健康と睡眠の関わり」「子育て世代と睡眠の関わり」について調査を実施した。その結果、睡眠時間の不足や睡眠時間満足度、不眠の度合い、睡眠の質が悪化した状態が続いていることが分かった。

 睡眠状態は一般的に加齢に伴って変化し、高齢者世代では睡眠の問題が増加傾向にあるが、20~40代の働き盛り世代や子育て世代にもその傾向は強く、全世代を通じて睡眠改善の必要性がうかがえた。子供の睡眠時間が不足していることも明らかになった。

 世界保健機構(WHO)が中心となって設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠判定方法「アテネ不眠尺度」の質問にのっとった1万人調査では、全体の47・2%が「不眠症の可能性がある」結果に。そのうち「中等度の不眠症の可能性」は15・0%、「重度の不眠症の可能性」は6・1%。合計20%超の人に中等度~重度の不眠症の可能性が見られた。

 年代別では、23年に引き続き、20~40代でも不眠症の可能性がある人が過半数を占めた。睡眠時間の不足が大きく影響していると考えられ、睡眠の時間と質の改善の必要性が高いことがうかがえる。

〈8割の高校生が平日に睡眠不足〉

 健康づくりのための睡眠ガイド2023の指針では、ライフステージ(成人・子供・高齢者)ごとに適正な睡眠時間の確保が推奨されている。高齢者は床上時間が8時間以上にならないこと、成人は6~8時間、小学生9~12時間、中学・高校生8~10時間を適正な睡眠時間の目安としている。

 そこで今回、平日と休日の睡眠時間を聴取し、ライフステージ別に比較した。その結果、高齢者・成人・子供(小中学生)では、約5~6割が平日と休日で適正な睡眠時間をとれている一方、平日の高校生は約8割が適正な睡眠時間をとれていないことが明らかとなった。

〈共働き世帯増など要因〉

 親から見た子供の睡眠満足度を調べると、「満足・計」(満足の合計)が52・9%で「不満足・計」(不満足の合計)を上回ったが、「十分に満足」している割合は16・6%にとどまった。

 学齢別に見ると、「満足・計」は小学校高学年が65・0%と最も高く、中学生以上は学齢が上がるほど満足度が低くなる傾向が見られた。

 子供の睡眠不足に関しては、共働き世帯の増加によって、生活時間が後ろ倒しになったり、スマートフォンの普及により夜更かしになったりする影響も見られる。平日に適正な睡眠時間を確保できていない割合は、高校生の約80%を筆頭に、中学生で約50%、小学生で約40%となっている。

〈子供の悩みトップは夜更かし〉

 子供の睡眠に関して「困っていることがあるか」を問うと、52・1%の親が「ある」と回答した。その困りごとのトップは「夜更かししている」で17・5%、次いで「寝る前まで電子機器を使っている」が15・8%、「寝相がひどい」が12・7%で続いた。学齢別で見ると、「夜更かししている」は高校生が31・7%と最も高く、他の学齢と比べて10¥文字(U+333D)以上高いことが分かった。

 子供の睡眠不足は成長の遅れだけでなく、注意力や集中力の低下にもつながる。今回の調査・分析を通し、厚労省の健康づくりのための睡眠ガイド2023で示されたように、睡眠時間をしっかり確保し、睡眠の質を上げることが重要と指摘した。

〇調査主体=nishikawa、日本睡眠科学研究所

〇調査対象=全国の18歳~79歳の男女1万人の基本調査、うち3千人に聴取の本調査

〇調査方法=ウェブパネル調査

〇調査期間=2024年7月5~7日

〈SIP/WG再編成し活動強化/社会に“睡眠で健康”の価値を〉

 国民の健康を睡眠の観点から支援する産学連携コンソーシアム「スリープイノベーションプラットフォーム」(SIP)は、2024年度、活動主体であるワーキンググループ(WG)体制を再編して取り組む。睡眠で健康を追求する方向性を強化。8月開催の第2回総会で確認した。

 SIPは2022年3月、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構WPI IIIS(IIIS)、アシックス、伊藤忠商事、S¥文字(C-8276)UIMIN(スイミン)、東京海上日動火災保険、nishikawa、日本生命保険、パラマウントベッドの8社・団体で発足し、総会開催時点で21社・団体に拡大した。

 柳沢正史理事長(IIIS機構長、スイミン社長)は、「このほど経済産業省の補助事業として『睡眠ソリューションの有効性評価に関するガイドライン』を策定したが、SIPの活動をより一層価値あるものにし社会に還元したい」と話した。

 今年度は、策定したガイドラインを実効性あるものにするための普及方法を検討する。WGのテーマに関しては厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に一部基づき、子供、女性、高齢者で異なる睡眠課題への対応、住宅環境の観点も入れた。新WG体制で、各WGの連携と推進力を高める。

 「睡眠サービスの品質向上」WGは、サブWGの「ガイドライン整備事業」「ガイドライン標準化活動(新設)」で推進。「様々な事業者間連携による高付加価値ビジネスモデルの検討・開発」WGは、「睡眠と運動の連携サービス事業」「健康経営サポートを目的としたサービス開発」「快眠ハウスモデル事業推進(同)」のサブWGと、「睡眠習慣による高齢者のライフスタイル再構築(同)」「女性の健康と睡眠課題解決」「子どもと若年世代の睡眠課題解決(同)」のライフステージ別サブWGで展開する。

 「睡眠データの利活用促進に向けた基盤整備」WGでは、サブWGの「PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)睡眠データ標準化推進」が中核。PHRサービス事業協会の標準化委員会に睡眠のサブWGができ、そのリード企業にnishikawaが登録されているが、SIPが法人化された際にはSIPがリード役を務める予定だ。