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スーパー繊維の用途開拓/アウトドアに注目/新エネルギー関連も期待

2024年09月18日 (水曜日)

 日本の合繊産業が世界でも有数の競争力を持つ素材にスーパー繊維(高性能繊維)がある。高強力など特性を生かし、主に産業資材分野で底堅い需要を確保し続けている。一方、素材特性を生かした用途開拓も重要。特に注目が高まっているのがアウトドアと新エネルギー関連だ。(宇治光洋)

 スーパー繊維は、高強力性などを生かして防護服防護シート、ロープや土木・建築資材などで活躍している。一方、高価な素材のため、幅広い用途に普及させるのが難しいという課題がある。スーパー繊維を製造販売する合繊メーカーにとって、用途開拓は永遠のテーマでスーパー繊維の用途として注目が高まっているのがアウトドア用のウエアやザックに使用するリップストップ生地だ。リップストップ生地は軽量極薄の合繊織物に高強力なリップストップ糸を格子状に織り込むことで生地が破れるのを防ぐものだが、リップストップ糸にスーパー繊維が採用されるケースが増えている。

 例えばアウトドア分野で豊富な実績を持つ帝人フロンティアは、東洋紡エムシーの高強力ポリエチレン繊維「イザナス」を使用した織物「テクノフォーススティール」を共同開発した。東洋紡エムシーは、もうひとつの高強力ポリエチレン繊維である「ツヌーガ」でもリップストップ生地向けに提案を強化している。

 クラレも高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」の細繊度糸を拡充し、リップストップ生地向けに重点提案する。芯にベクトラン、鞘にポリエステル系樹脂を配置した芯鞘構造タイプも開発した。鞘部分が染色可能なため、アウトドア向けに求められる意匠性にも対応する。

 一方、資材用途で期待が高まっているのがインフラ施設関連だ。元々、発電所など重要インフラ施設では防護材としてスーパー繊維が活躍する場面が多い。東レ・デュポン(東京都中央区)はパラ系アラミド繊維「ケブラー」で原子力発電所など重要施設を竜巻などで生じる飛来物の衝突・貫通から守る防護材として提案し、試験も始まっている。

 さらに注目は新エネルギー関連だろう。東洋紡エムシーは大林組が青森県の沖合で実施する浮体式洋上風力発電施設のテンション・レグ・プラットフォーム(TLP)型浮体設置実験に東京製綱繊維ロープ(愛知県蒲郡市)とともに参画し、イザナスによる係留索の共同開発を進める。

 クラレもベクトランの特徴である低吸湿性、低クリープ性(伸びない)を生かし、TLP型浮体式洋上風力発電施設の係留索に向けた開発と提案に力を入れる。帝人もパラ系アラミド繊維「トワロン」「テクノーラ」で洋上風力発電施設の係留索や、海底ケーブルなど新エネルギー関連需要の取り込みを目指している。

 アウトドアから新エネルギーまで、日本の合繊産業が誇るスーパー繊維の活躍の場が一段と広がりそうだ。