特集 商社原料・素材ビジネス(2)/東洋紡せんい/帝人フロンティア/モリリン/スタイレム瀧定大阪

2024年09月13日 (金曜日)

〈メーカー+商社の開発力/〝他社にない素材〟訴求/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、自家生産拠点を持つ強みを生かし、“メーカー+商社”の開発力を打ち出す。原糸販売など原料ビジネスを担うマテリアル事業部は2024年度(25年3月期)に入って“攻めの営業”に転じており、展示会などへも積極的に出展する。

 同社は国内外の自家工場で培われた開発力を生かし新規開発に力を入れてきた。原糸分野では綿など天然素材を改質することで機能性を付与した糸で各アイテムのトップゾーンに向けて提案する。

 また、商社として調達先やパートナー企業の技術、商品を活用した取り組みも強み。協力関係にあるインドの大手紡績と連携して開発したリサイクル綿糸「さいくるこっと」はその典型だ。従来の反毛使いリサイクル綿糸とは全く異なる開繊システムを採用したことで、高品位と細番手糸やリサイクル原料100%の紡績を実現した。

 メーカーの開発力を生かし、“他社にない素材”をテーマに社外の展示会にも積極的に出展することで新規取引の開拓を進める。利益を重視しながらも、量的な拡大も目指す。

〈輸出が成長の原動力に/開発品投入で織物底上げ/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの衣料素材本部は、輸出拡大を重点施策の一つに掲げる。2024年4~6月の生地輸出は、過去最高だった22年度には届かないものの、前年同期を上回る数字を確保した。主力のニットに加え、織物の拡大を図りたいとし、新開発品などを投入する。

 同本部の生地輸出は、スポーツ・アウトドア分野を中心に北米向けで新規顧客が増え、欧州向けも復調。24年4~6月は前年同期比増収増益を達成し、本部全体の増収増益にも貢献した。本部は上半期、年間も増収増益を計画し、輸出がポイントの一つになるとみる。

 輸出では、タコ足型断面ポリエステル繊維「オクタ」シリーズやコットン調ポリエステル「アスティ」、スパン調の「ポリリズム」などが好評を博す。ただ、「ニットに偏重している」とし、ポリエステルとナイロンの質感や機能を融合した「ミクセルNP」などを訴求し、織物の強化を図る。

 輸出拡大は、原料でも力を入れ、インドやASEAN地域向けの糸輸出をターゲットとする。

 国内では、一部を除いてユニフォームが苦戦している。輸出とは逆に織物で強さを発揮し、ニットの底上げが課題。取捨選択を行いながら、学販を含めて再構築する。

〈ソフトで多機能な再生ポリ糸/肌着から軽衣料向け提案強化/モリリン〉

 モリリンは綿のようなソフトな風合いで、防透け性や紫外線防止などの機能を持ち合わせた再生ポリエステル糸「m+」(エムプラス)の打ち出しを強める。肌着から軽衣料を中心に幅広い品種に対応できる。暑さが続く気候の影響で夏物から盛夏、初秋物と続けて薄手の生地で商品計画が組まれることが多いため、提案の幅を広げたいと考えている。

 繊度が細かいポリエステル短繊維を原料に独自の紡績技術でコンパクト糸に仕上げるため、綿など天然繊維のようなソフトな風合いを持つ。通常のポリエステル糸に比べて毛羽が少ないため、抗ピル性も持ち合わせる。

 機能も複数備える。光沢感を抑えたフルダル加工を施すため、通常のポリエステル糸に比べて透けにくい。紫外線遮蔽(しゃへい)率も通常糸に比べて30%ほど高く、光を照射して25分後の温度は1・4℃ほど低いというデータを持つ。他の原料や素材との複合で、機能や効果がさらに増すこともあると言う。

 特に婦人向けのブラウスやセットアップなどの軽衣料から肌着などに向く。肌着向けの供給が主体だが、さまざまな衣料品向けの採用に向けた案件を進めている。綿糸に変わる機能系素材としての訴求も高める。

〈有機栽培綿で細番手糸を/羊毛もトレサビ重視で/スタイレム瀧定大阪〉

 羊毛原料を主力にしていたスタイレム瀧定大阪の原料部門は近年、オーガニック綿糸の取り扱いを増やしている。

 オーガニック綿糸販売は独自のプロジェクト「オーガニックフィールド」を推進して取り組む。同プロジェクトは、小規模農家に有機栽培へのシフトを踏み切らせる支援を行うもので、インド最大の綿花種販売会社であるNSLグループと連携する。「GOTS認証」が取得できるまでの綿花をスタイレム瀧定大阪が全量買い上げる。

 既に同綿糸を使った生地の実売も始まっているが、さらなる拡販に向けて海外市場向けへの提案を強化するほか、超長綿の栽培にも着手し80単や100単など細番手化を進めていく。生地は編み地から先行したが、織物にも広げる。

 羊毛でも「サステイナビリティーとトレーサビリティーの両方が重要」との考えの下、ニュージーランド産ウールの生産認証システム「ZQ」(ジーキュー)と、その上位版に位置付けられる「ZQRX」の取り扱いを増やす。既にZQの糸を国内で生地にし、米国ブランドに販売した実績がある。

 動物愛護と明確なトレーサビリティーを強みにコートやアウター地として国内外で拡販を狙う。