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シリーズ事業戦略/シキボウ/上席執行役員繊維部門長 尾﨑 友寿 氏/グローバルと環境配慮で成長/判断力発揮できる組織へ

2024年09月12日 (木曜日)

 シキボウの繊維部門は第1四半期(4~6月)、売上高46億9500万円(前年同期比1.1%減)とほぼ横ばいながらも、営業損失900万円(前年同期は2億900万円の損失)と黒字化が見えてきた。来期から始まる中期経営計画では「グローバル展開と環境配慮を柱にしていきたい」と、6月から新たに繊維部門長に就任した尾﨑友寿上席執行役員は話す。人材育成にも力を入れ、さまざまな局面で「判断力を発揮できる体制」へと組織を進化させる。

――第1四半期(4~6月)は営業損益が大きく改善しました。

 ユニフォームは価格改定を進めてきた効果で利益が改善したことに加え、中東向け民族衣装用生地輸出が想定以上に伸びています。

 ニット製品は新型コロナウイルス禍からの回復を受けた昨年の反動で、メンズが苦戦していますが、GMS向けの婦人服が堅調です。今年1月に現地法人化したシキボウベトナムには製品OEMに精通した担当者を配置しており、納期や品質を含めた全体の提案ができる体制になってきたことが功を奏し始めています。

 生活資材事業は、リビング分野が店頭の在庫調整を受け低調でしたが、リネン資材分野がホテル向けのシーツなどリネン需要の拡大を受け、健闘しています。もともと病院向けが多かったのですが、インバウンド需要で活況に沸くホテルへ新規案件を増やしています。今春、中国の湖州敷島福紡織品に新しいインクジェット捺染機を導入し、小ロット対応やQRができる体制にした効果も出てきました。

 原糸販売はポリエステル・綿混糸といった定番糸の販売が苦戦していますが、特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」や連続シルケット糸「フィスコ」といった独自の高付加価値糸の販売拡大によって増収になっています。ポリエステル短繊維の周りを、綿で包みこんだ2層構造糸「ツーエース」の販売も好調です。

――中東向け輸出は今年に入ってから落ち着くのではという見通しもありました。

 リピートも取りこぼすことがなく受注できており、新たな開発で攻勢を掛けています。パリ五輪ではアラブ首長国連邦(UAE)選手団が着用する民族衣装に当社の素材が採用されました。民族衣装だけでなくユニフォームや寝装などでもシキボウブランドの浸透を図り、もっと輸出拡大につなげていければ。

 織布・染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)では増産体制も敷いています。整経機の導入やスチーマー、ベーキング機を更新し、下半期から本格稼働をさせていきます。物流センターを含め、省人化に向けた設備投資も検討します。

――ユニフォーム地では昨年から値上げを進めてきました。下半期から値上げの効果が薄まってきます。

 今年4、5月に大阪、東京だけでなくシキボウ江南、岡山、福山でも展示会を開きました。主力素材である校倉(あぜくら)造り構造織組織高通気生地「アゼック」で、環境配慮型素材やフェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)を使うなど、提案の幅を広げています。来春夏に向けてそれらの採用が増えています。

 コロナ禍で止まっていた別注ユニフォームの更新需要も活発になりつつあり、これらの需要を捉えていきます。シキボウ江南に起毛機を導入し、秋冬向けを意識した新たな素材開発にも取り組んでいます。中東向けでも起毛によって、これまでにない風合いを持った素材開発を進めています。

――外、外の販売も強化しています。

 シキボウベトナムではテキスタイル販売を増やしていきます。糸売りも日本向けだけでなくベトナム向けなど販売を拡大していきます。ニット製品部隊が糸販売の部隊と連携し、新たな連携によるビジネスの構築も進めています。

 海外戦略に取り組むグローバル事業推進室ではさまざまなテーマを決めながら、市場拡大に取り組んでいきます。

――環境配慮型では、綿素材を再利用した新素材バイオマスプラスチック「コットレジン」を開発しました。

 ポリプロピレン樹脂と混ぜることで物性が向上し、自動車部品や電化製品などプラスチックが使われる幅広い用途に提案できます。4月1日付で立ち上げた新事業開発室が中心となって、積極的に販促を進めていきます。

 原料は当社から出た裁断くずやC反などで、それらを有効利用するものです。製造技術では特許出願済みで、下半期にはシキボウ江南に廃棄された綿素材をミクロサイズまで細かくできる設備の設置も進めていきます。

 グローバル展開、環境配慮は来期から始まる次の中期経営計画でも柱にしていきたいと考えています。そして、人材育成にも力を入れていきます。さまざまな状況に応じて判断力が試される局面がこれからもっと増えてくる可能性があります。海外や新内外綿などグループ会社との人材交流も活性化させながら、判断力を発揮できる体制に変えていければと考えています。