繊維ニュース

スタイレム瀧定大阪の糸事業 サステとトレーサビリティー重視

2024年09月12日 (木曜日)

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)で糸を取り扱うR&D部は、オーガニックコットン糸や梳毛糸でサステイナビリティーとトレーサビリティーにこだわった素材開発、販売を続けている。糸・生地の販売拡大対象である海外ブランドが認証含めその二つを重視していることが背景にある。

 以前、同社の原料ビジネスは梳毛糸の仕入れと販売がメインだった。暖冬や動物愛護機運の高まり、ポリエステルなど他素材の開発進展といった傾向を背景に「ウールだけでは厳しい」と考え、まずは綿やカポックなど天然繊維のラインアップから充実させていった。立ち上げから4年目を迎えるR&D部がその中心を担う。

 同部の立ち上げとほぼ同時期に社内外プロジェクトとして推進を始めたのが「オーガニックフィールド」だ。インドの小規模農家に有機栽培へのシフトを踏み切らせる支援を行うもので、インド最大の綿花種販売会社であるNSLグループと連携する。「GOTS認証」が取得できるまでの綿花をスタイレム瀧定大阪が全量買い上げる取り組みで、種、農家までさかのぼったトレーサビリティーが確保できる。NSLグループで紡績し、まずは社内生地部門への糸供給から始めた。

 「想定していたほどの広がりには至っていない」ものの、既に靴下やインナー、タオル、Tシャツなどへ同綿糸を使った生地の実売も始まっている。糸や生地を中国やインドネシアに輸出するケースも多い。その大半が対日縫製品向けだが、さらなる拡販に向けて欧米や中国のブランドへの提案を強化する。

 「プルミエール・ヴィジョン・パリ」など海外展の商談でも同綿糸使いの生地は好評を博したが、薄地を求めるバイヤーが多かった。これを受け、超長綿の栽培にも着手し、80単や100単など細番手化を進めていく(現在は60単まで)。また生地種は編み地から先行していたが、織物にもバリエーションも広げていく。

 梳毛糸でも「サステとトレーサビリティーの両方が重要」との考えの下、ニュージーランド産ウールの生産認証システム「ZQ」(ジーキュー)と、その上位版に位置付けられる「ZQRX」の取り扱いを増やす。

 同社生地部門では以前からZQ認証を受けた糸を購入していたが、R&D部が主導する事業としても、ZQ認証を受けた梳毛糸を日本の産地で生地にし、米国ブランドに販売した実績がある。

 動物愛護と明確なトレーサビリティーをうたいながら、主にコートやアウター地として国内外で拡販を狙う。