クラレの繊維資材事業
2024年09月12日 (木曜日)
クラレの繊維カンパニー繊維資材事業部は、欧州を中心に市況が低迷している主力のビニロン繊維に関して、ようやく回復傾向となっていることから、2025年には本格的に需要も回復するとの見方を示す。
欧州以外の市場での拡販を進めるほか、主力の建材とゴム資材分野に加え、難燃用途でグローバル提案することで新規需要の開拓を目指す。
繊維カンパニーの髙井庸善執行役員繊維資材事業部長によると、24年度上半期(1~6月)はビニロン繊維がやや苦戦した。主力のコンクリート補強材を中心とした建材用途は23年から欧州の市況がインフレや金利上昇を背景に低迷している。一方、自動車のブレーキホース向けなどゴム資材用途は24年に入ってから回復基調が続く。特にアジア市場が好調だった。
もう一つの主力商品である高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」は堅調に推移した。ロープやスリング用途が北米市場で安定している。このため上半期も高水準の稼働率を維持した。
下半期(7~12月)に入ってから、ビニロン繊維は既存用途の需要回復への期待が高まってきた。髙井執行役員は「欧州市場も徐々に回復傾向となっており、25年には市況も本格的に改善するだろう」との見通しを示す。こうした中、インドや東南アジアなど欧州以外の市場での拡販にも力を入れる。「新興国では依然として一部の建材にアスベストが使用されている。そこにアスベスト代替としてビニロンを提案する」ことで、これまでの欧州市場での落ち込みをカバーする戦略だ。
また、難燃ビニロンで海外の難燃製品市場への提案にも力を入れる。難燃ビニロンは、国内では自衛隊の戦闘服などで豊富な実績を持つが、海外ではほとんど使用されていない。このため親水性で染色も可能といった特徴を打ち出すことで新規性のある難燃素材として提案する考えだ。4月にドイツで開催された産業用繊維・不織布の国際見本市「テクテキスタイル」でも重点提案し、海外での認知度向上に努めた。
一方、ベクトランに関しては堅調な需要が続いており、25年からは生産能力を20%高める予定。このため既存用途に加えて新規用途の開拓が重要になる。太繊度糸は洋上風力発電施設で使用する係留索など新エネルギー関連需要をターゲットに開発と提案を進める。また、細繊度糸はアウトドアウエア・ザックなどで需要が高まっているリップストップ生地向けへの販売拡大を進める。