在ベトナム日系繊維企業/強まる付加価値化の流れ/糸・生地販売も熱気
2024年09月11日 (水曜日)
日本にとってベトナムは、衣料品縫製地として欠かすことのできない存在。2023年の日本のアパレル輸入統計では金額、重量ともに中国に次ぐ2位につけており、前年比でも増えている。今年もこの流れは続いているが、在ベトナム日系繊維企業からは、ベトナムの立ち位置に微妙な変化が見られるとの指摘が相次ぐ。変化とは、高付加価値化への流れのことを指す。(吉田武史)
複数の日系繊維企業によるとベトナム繊維産業全体は、二酸化炭素排出量やコストの削減を目的とした地産地消ニーズの高まりや脱・中国の流れの受け皿として存在感が増しており、欧米ブランドの生産調整にあえいだ昨年からの回復基調が見られる。ただし対日縫製品については、スポーツ関連が堅調なものの、ファッション衣料とユニフォームは円安や減産傾向の中で低調に推移する。とはいえ一部では回復基調に入ったとの報告もあり、取引相手や分野によって濃淡が出ている。
こうした状況の中、伊藤忠商事グループのベトナム繊維会社、プロミネント・ベトナムなどによると、周辺のミャンマーやカンボジアでより安く作ろうとする機運が高まっていると言う。生地や副資材の現地調達体制が整ってきているとはいえ、人件費など単純なコストの魅力ではミャンマーやカンボジア、バングラデシュに劣るためだ。欧米からのオーダーが戻ってきたため、ベトナム国内での縫製工場確保が困難になっていることも影響しているとみられる。
今年1月の法人開設以来、糸・生地の現地調達を拡大させているシキボウベトナムが「(現地で)日本品質、シキボウ品質の糸・生地を求める声はかなり多い」と言うように、ベトナムの立ち位置はより付加価値化されたものの生産地に変化していっているようだ。
「商品リクエストが多種多様になってきている」(豊島ベトナム)など多品種化も進む。
リスク分散の観点からも、小口・短納期・多品種をベトナムで生産し、コスト対応品をミャンマー、カンボジア、バングラデシュなどで生産するという構図がより明確になっていきそうだ。
一方、日本企業による同国縫製向け、あるいは同国市場向けの糸・生地販売は熱を帯びていきそう。2月にホーチミン市で初開催された「ベトナム国際アパレルファブリックス&繊維関連技術専門見本市」(VIATT2024)には生地商社を中心に日本企業19社が出展し、そのうちのほとんどが来年2月の同展にも引き続き出展する意向を示している。シキボウやスタイレム瀧定大阪など現地で糸や生地を備蓄販売する体制を整える企業も増える。
現地に駐在するある日系企業トップは、衣料品小売価格がまだまだ低いことを理由に、「少なくともローカルブランド向けの糸・生地販売は成功しない」と断言するが、果たして――。