繊維ニュース

綿紡績大手3社/通期での黒字化、下半期が勝負/鍵握るユニフォーム事業

2024年09月10日 (火曜日)

 綿紡績大手の繊維事業は、今期に入ってから業績が回復基調にある。特にクラボウやシキボウ、日清紡テキスタイルの3社のユニフォーム事業は販売減に苦戦するものの、値上げ効果で営業損益の改善が進む。通期での黒字化を目指す上で、下半期が勝負の分かれ目であり、ユニフォーム地の販売拡大が鍵を握る。(於保佑輔)

 クラボウの第1四半期(4~6月)は、2期ぶりに営業損益が黒字となり、計画を上回るペースで推移する。「依然として環境は厳しい」(北畠篤取締役)ものの、「ブレバノ」「プロバン」といった難燃関連の販売量は前期比5~10%増のペースで拡大するなど、一部の商材で勢いが出てきた。

 シキボウの第1四半期(同)も、ユニフォーム地の価格改定と中東向け生地輸出の「想定以上」(尾﨑友寿上席執行役員)の成果で営業損益が大きく改善。日清紡テキスタイルの上半期(1~6月)もユニフォーム地の「価格改定の効果が出ている」(村田馨社長)として赤字幅が縮小した。

 24秋冬ではユニフォームメーカーの新商品の投入が例年より多く、特に市場規模が大きいワークウエアで在庫調整が解消されつつある。下半期は販売数量の減少から増加へと転じる絶好の機会となってくる。

 ただ、懸念材料も少なくない。一つは為替。現状は1ドル=140円台で推移するが、7月前半に一度160円台を突破した。各社は既に値上げを実施していただけに「これでは値上げをしても追い付かない」(紡績関係者)と嘆く。本来であれば「もう一段の値上げをお願いしたい」と本音を漏らすが、それ以上に販売数量の減少によって、せっかく上向きかけた業績に水を差す可能性がある。

 2022年から相次ぐ値上げで日本メーカー製の生地離れも深刻。あるワークウエアメーカーは、企業納入向けカタログ定番商品で04年から日本メーカー製生地を採用してきたが、採算が合わず海外メーカー製生地に切り替えた。

 そのような状況下で反転攻勢をかけていくために注力するのが企業納入向けの別注対応だ。新型コロナウイルス禍で受注が止まっていたが、昨年後半から引き合いが急増。人材確保や企業ブランディングへの意識の高まりもあるようで、ユニフォームメーカーや販売代理店、商社と連携しながら市場開拓が進む。

 シキボウでは「これを特に捉えていきたい」(尾﨑氏)として、春夏向けで売れ筋の高通気生地「アゼック」をベースに、SDGs(持続可能な開発目標)につながる環境配慮型素材を組み合わせるなど提案力を高める。

 日清紡テキスタイルはピリング・高耐久の特殊ポリエステル綿混糸使いのストレッチ織物「エアリーウェーブ」などを拡販。別注向けも増えており、インドネシアでの紡織から染色・整理加工、縫製までの「一貫生産の強み」(村田氏)を生かし、カーボンフットプリントといった、これから業界での関心が高まりそうな取り組みで需要を捉える。

 クラボウも別注対応が増加傾向にある。それに加え、サポーター一体型タイプのアシストスーツ「CBW」や暑熱リスク管理・体調管理システム「スマートフィット・フォー・ワーク」の販売が増加。スマートフィットは約80社が採用しており、試験的に導入していた企業が全社的に導入を決めるなど「1社当たりの採用実績も増えている」(北畠氏)として拡販を加速させる。